↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
177/180

第177話:突入

お待たせしました〜

東京各地で続いていた戦闘が、ようやく終わりを迎えた。


夜の街には、まだ戦闘の痕跡が残っている。

崩れた道路。

損傷した建物。


魔力の余波によって破壊された魔導設備。

だが、先ほどまで街中を駆け回っていた改人達の姿は、もうどこにもなかった。


青真は瓦礫の上から東京の街を見渡す。

「……静かになったな。」


隣ではカレンが剣を鞘へ収めていた。

「はい。」

「これで、改人による襲撃は終わったようです。」


闇風は周囲を確認しながら短く答える。

「反応も消えた。」


メグも通信端末を確認する。

「こっちも全部消えたわ。」


少し離れた場所では、レイジが他の隊員達と共に戦闘区域の確認を行っていた。


「こちら東地区。」

「改人反応、完全に消失しています。」


通信を終えたレイジが、青真達のもとへ戻ってくる。

「全区域、制圧完了です。」


「ご苦労。」

青真が短く答える。


レイジは頷いた。

「ただ、妙なんです。」


「妙?」

メグが聞き返す。


「はい。」

レイジは端末へ表示されたデータを見せる。

「改人達の行動記録を確認していたんですが、戦闘中に複数の施設へ立ち寄っています。」


画面へいくつもの地点が表示された。

「魔力研究施設。」

「通信中継所。」

「物流拠点。」

「それから魔導設備の保管施設です。」


青真が眉をひそめる。

「襲撃だけが目的じゃなかったってことか。」


「そう考えるのが自然です。」

レイジが頷く。

「各地点から、何らかの物資やデータが回収されています。」


闇風が画面を見る。

「回収した物はどこへ運ばれた?」

「それを追跡しています。」


その時だった。

複数の車両が道路の向こうから近付いてきた。

先頭の車両が停止すると、扉が開く。


降りてきたのは蓮だった。

「全員、無事か。」


「大丈夫です。」

カレンが答える。


蓮は周囲を一度見渡した。

「改人部隊は?」


「全区域で制圧完了しています。」

レイジが報告する。

「被害状況も現在まとめています。」


「そうか。」

蓮は頷いた。

だが、その表情は険しい。


「しかし。」

「今回の騒動は、まだ終わっていない。」


青真が蓮を見る。

「やっぱりですか。」


「ああ。」

蓮は端末を操作する。


東京全域の地図が空中へ展開された。

複数の施設が赤く表示される。


「今回、改人達が襲撃した場所をすべて繋げてみた。」

「すると、回収物の移動経路が一ヶ所へ集中していることが分かった。」


赤い線が次々と一本の場所へ集まっていく。


東京湾岸。

そして、その地下。


「……ここだ。」

青真が呟く。


蓮が頷く。

「地下施設。」

「ネメシスの本拠地と思われる場所だ。」


メグが画面を覗き込む。

「地下にこんな規模の施設があるの?」


「表向きの施設情報には存在しない。」

「だからこそ、見つけにくかった。」

蓮が地図を拡大する。

「今回の襲撃で、奴らが隠していた移動経路が露出した。」


「そこから逆算して、この場所を割り出した。」


闇風が静かに言う。

「つまり、今回の騒動そのものが本拠地へ繋がる手掛かりだった。」


「そういうことだ。」


青真は銀河の柄へ手を添えた。

「なら、今度はこっちから行く番だな。」


蓮は頷いた。

「ああ。」


「だが、正面から全員で突入するわけにはいかない。」

その言葉と同時に、蓮は少し離れた場所へ視線を向ける。


そこにはレイジと共に、三人の隊員が立っていた。


一人目。

サブマシンガン型の魔導銃を持つ青年。

軽装の戦闘服を身に着け、身軽そうな身体つきをしている。


二人目。

巨大な盾を背負った大柄な男。

腰には長剣。

背中には小銃を装備している。


三人目。

落ち着いた表情の女性。

その周囲には、淡い魔力の輪がいくつも浮かんでいた。


蓮が青真達へ向き直る。

「紹介しておこう。」

「今回、外部制圧を担当するA級隊員だ。」


先頭の青年が一歩前へ出る。

「黒瀬隼人。」

「A級。」


続いて、大柄な男が前へ出る。

「御堂剛志。」

「A級。」

短い自己紹介。

御堂は巨大な盾へ手を添える。

「防御と前衛は任せてください。」


そして最後。

女性が一歩前へ出た。

「桐生美咲。」

「A級です。」

周囲の魔法陣が静かに回転する。

「拘束、防御、攻撃魔法を担当します。」


青真は三人を順番に見た。

「よろしく。」


黒瀬が笑う。

「こちらこそ。」


カレンも頭を下げる。

「よろしくお願いします。」


「よろしくお願いします。」

御堂が答える。


桐生も静かに頷いた。

「こちらこそ。」


レイジはその横で端末を確認している。


青真がレイジへ目を向ける。

「レイジも外側か。」


「はい。」

レイジが頷く。

「今回は外部部隊の通信と索敵、それから戦闘後の処理を担当します。」


「了解。」

蓮は再び地図を表示した。

「作戦は二方向から行う。」

地下施設の外周が赤く染まる。

「外部部隊は、本拠地を包囲する。」


「黒瀬、御堂、桐生、神代。」

「そして一般隊員達で外周の敵戦力を引き付ける。」


御堂が頷く。

「正面は俺が抑えます。」


黒瀬が魔導銃を構える。

「俺は左右を回っときますわ。」


桐生は静かに魔力を集中させる。

「敵の進路を塞ぎます。」


レイジは端末を確認した。

「外周の敵反応は、こちらで把握します。」


蓮は次に青真達へ視線を向ける。

「そして。」

「内部へ侵入するのは、お前達四人だ。」


「青真。」

「闇風。」

「メグ。」

「カレン。」


青真は地図の奥を見つめる。

「俺達は中枢を目指す。」


「ああ。」

蓮が答える。

「改人Ωに関する資料。」


「改人研究の全容。」

「今回、各施設から回収していた物資の目的。」

「すべてを突き止めてくれ。」


メグが腕を組む。

「本拠地なら、何か残ってるでしょうね。」


「だからこそ危険だ。」

蓮の声が低くなる。

「中に何がいるかは分からない。」

「改人が待ち構えている可能性もある。」


闇風が答える。

「それなら、見つけた敵を排除しながら進むだけだ。」


カレンも静かに頷く。

「問題ありません。」


青真は銀河を握り直した。

「外は任せた。」


蓮は頷く。

「任せろ。」


「こちらも外から道を作る。」


「お前達は、その隙に内部へ入れ。」


夜の東京。

ネメシスの本拠地は、ついにその場所を突き止められた。


そして。

これまで追い続けてきた敵の本拠地へ。

百華繚乱は、初めて自分達から踏み込もうとしていた。


蓮が時計を見る。

「出発する。」



蓮の言葉と共に、周囲の空気が変わった。

先ほどまで戦闘の余韻が残っていた東京。

しかし今、全員の視線は空中に投影された一枚の地図へ集中している。


東京湾岸。

その地下深く。

複数の施設から伸びた魔力反応が、一ヶ所へ集まっていた。


「ここが……ネメシスの本拠地か。」

青真が地図を見つめる。


「確定ではない。」

蓮が答える。

「だが、ほぼ間違いない。」


地図がさらに拡大される。

地下へ続く巨大な空間。

複数の区画。


そして、中心部に異常なほど濃い魔力反応。


「この反応は?」

メグが尋ねる。

「改人の研究設備だと思われる。」


蓮が答える。

「今回、奴らが各地から回収していた魔力データや設備も、最終的にはここへ運ばれている。」


闇風が腕を組む。

「なら、敵はここで何かを準備している。」

「そう考えている。」


カレンが地図を見ながら口を開く。

「正面から全員で突入するのは危険ですね。」


「ああ。」

蓮は頷いた。


「そこで二方向から攻める。」

その言葉と同時に、地図が二つに分かれた。


「外部部隊は、本拠地周辺を包囲する。」

「敵の注意を外へ向ける。」

「その隙に――」


蓮の視線が青真達へ向く。

「お前達四人が内部へ侵入する。」


青真が頷く。

「了解。」

「中枢まで行けばいいんだな。」


「ああ。」

「改人Ωに関する情報も、そこにある可能性が高い。」


メグが小さく息を吐く。

「やっと本丸ってわけね。」


闇風は静かに答える。

「油断するな。」

「ここまで隠していた施設だ。」

「何が待っているか分からない。」


カレンが剣の柄へ手を添える。

「それでも行きましょう。」


青真は三人を見る。

「そうだな。」

「ここまで来たんだ。」


その時。


蓮が外部部隊へ視線を向けた。

「お前達も準備してくれ。」

「敵の主力が外へ出てきたら、そこで食い止める。」


黒瀬が魔導銃を取り出す。

「了解。」

「外を騒がしくすれば良いんですよね。」


「そうだ。」

御堂が巨大な盾を背負い直す。

「正面は任せろ。」


桐生は周囲へ小さな魔法陣を展開する。

「退路を確保しておきます。」


レイジは通信端末を確認した。

「周囲の敵反応を監視します。」

「内部へ侵入したPRIMEとも通信を繋ぎます。」


蓮が頷く。

「頼む。」


そして蓮は四人を見渡した。

「無理に戦う必要はない。」

「目的は本拠地の中枢へ到達することだ。」

「敵を見つけても、必要なら回避しろ。」


青真が笑う。

「分かってる。」

「俺達は中へ入る。」

「そして、全部調べる。」


蓮はそれ以上何も言わなかった。

やがて。

作戦開始時刻が近付く。


夜の東京湾岸。

ネメシス本拠地周辺へ、各部隊が静かに展開していく。


一般隊員達は複数の地点へ分散。

魔導銃を装備した黒瀬は西側。

巨大な盾を持つ御堂は正面。

桐生は東側。

レイジは後方で通信と索敵を担当する。


そして、その中心。

全隊員を指揮する位置に蓮が立っていた。


「全員、配置完了。」

レイジから通信が入る。


「敵の外周警備を確認。」

「B級相当の戦闘員が複数。」

「監視塔も稼働しています。」


黒瀬が笑う。

「結構いますね。」


御堂は盾を構えた。

「問題ない。」


桐生も魔力を整える。

「いつでも動けます。」


蓮は時計を見る。

「……あと一分。」


一方。

本拠地の裏側。

青真達四人は、建物の影へ身を潜めていた。


目の前には巨大な外壁。

通常の入口とは別に、地下へ続く搬入口が存在している。


闇風が周囲を確認する。

「警備は少ない。」

「ただし、結界がある。」


メグが壁へ手を触れた。

「かなり複雑ね。」

「外側の結界を破壊したら、すぐに警報が鳴る。」


青真が銀河へ手を添える。

「じゃあ、壊さずに入る方法を探すか。」


「そういうことです。」

カレンが答える。


メグが魔力を集中させる。

淡い光が指先へ集まっていく。


「少し待って。」

魔力の流れを読み取る。

「……見つけた。」


「ここ。」

扉の横。

小さな魔力錠が淡く光っている。

「解除できる。」


カチッ。

小さな音と共に、魔力錠が沈黙した。


しかし。

扉は開かない。


闇風が眉をひそめる。

「二重か。」


「みたいね。」

メグがもう一度魔力を流す。


今度は扉の奥から低い音が響いた。

ゴゴゴゴゴ……。

「開く。」

青真が一歩前へ出る。


だが、その瞬間。

通信機から蓮の声が入った。


『青真さん。』


「ん?」


『開始します。』

『外は俺達が抑えます。』

『内部は任せます。』


青真は短く答えた。

「了解。」


通信が切れる。

静寂。

誰も口を開かない。


やがて。

遠くから轟音が響いた。

ドォォォン!!

続いて、別方向からも爆発音。

ドォン!

ドォォン!


外部部隊が動き始めた。

黒瀬の魔導銃が夜空を走る。

御堂の巨大な盾が敵の攻撃を受け止める。

桐生の魔法陣が次々と展開され、敵の進路を塞いでいく。


レイジの通信が各部隊へ飛び交う。

『敵部隊、正面へ移動!』

『西側にも増援!』

『そのまま進め!』


ネメシス本拠地の外周が、一気に騒がしくなる。

その瞬間。


「今だ。」

青真が呟いた。


扉がゆっくりと開いていく。

その先には。

光の届かない、深い地下通路。


青真は銀河を握り直す。

カレンが隣へ並ぶ。

闇風が先頭へ出る。

メグが最後尾につく。


「行くぞ。」

四人が同時に踏み込む。


扉の向こうへ。

ネメシス本拠地、その内部へ。

そして。

重い扉が、静かに閉じた。

読んでいただきありがとうございました!もし面白いと思っていただけたら、ブクマや評価で応援してもらえると励みになりま

す!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。