↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
173/178

第173話:脅威

地下施設の最深部。

改人Ωがゆっくりと一歩を踏み出した。


ドン。

床へ僅かな亀裂が走る。

その身体には青白い電雷が絶え間なく走っていた。


青真は銀河を構えたまま、目の前の敵を見据える。

「……さっきより速いな。」


改人Ωは答えない。

黄金色の瞳が、青真の動きを追っている。


次の瞬間。

バチィッ!!

姿が消えた。


「来る。」

青真は未来予知を発動する。


数秒先。

改人Ωが右側から接近。

拳を振り抜く。


青真は身体を僅かに沈めた。

拳が頭上を通過する。

そのまま銀河を振り上げる。


ガキィン!!

刃が改人Ωの腕へ叩き込まれた。

しかし、浅い。


改人Ωは即座に距離を取った。

「なるほど。」


青真が小さく息を吐く。

「敏捷強化に加えて、身体そのものも強化されてる。」


カレンが剣を構える。

「なら、こちらから行きます。」


地面を蹴る。

一瞬で間合いへ入り、剣が閃いた。


一撃。

二撃。

三撃。


改人Ωは拳で受け、身体を捻って躱す。


しかしカレンは止まらない。

剣の切っ先が肩を掠め、黒い魔力回路を一本断ち切った。


「グッ……。」

改人Ωが初めて声を漏らす。


「効いていますね。」

カレンが静かに構え直す。


その背後から雷撃が走った。

バリィッ!!

カレンは身体を捻って躱す。

雷撃が床を焼いた。


「電雷操作まで……。」

メグが改人Ωを観察する。

「複数の能力を同時に使ってる。」


闇風の姿が消えた。

気配遮断。

改人Ωの死角へ回り込む。


毒影の短剣が首筋へ迫った。

ギィン!!

改人Ωは振り向くことなく腕で受け止めた。


「……読まれたか。」

闇風は即座に後退する。

「五感強化だな。」


「視覚だけじゃない。」

「音も魔力も拾っている。」


メグが頷く。

「厄介ね。」


その瞬間、改人Ωが再び踏み込んだ。

今度の標的はメグ。

「メグ!」


青真が叫ぶ。

改人Ωが拳を振り抜く。

しかし、その直前。


「《重力領域(グラビティエリア)》。」

ズンッ!!

改人Ωの身体へ強烈な重力が掛かった。


床が沈み込む。

拳の軌道が僅かに逸れる。


メグはそのまま後方へ飛び退いた。

「私に近づけると思った?」


「助かった。」

青真が短く言う。


「まだ終わってないよ。」

メグが魔導具を構える。

魔人形(ゴーレム)!」


魔人形が改人Ωへ突っ込む。

「ゴォォッ!」


ドゴン!!

巨大な拳が改人Ωの腹部へ叩き込まれた。

改人Ωの身体が吹き飛び、壁へ激突する。


「まだ!」

メグが杖を向ける。


黄金色の錬成陣が床へ展開された。

「錬金拘束。」


金色の鎖が何本も飛び出す。

腕。

脚。

胴体。


改人Ωの身体へ次々と絡み付く。

ギギギギッ……。


改人Ωが力を込める。

鎖が激しく軋む。


「これでも止まらないの?」

メグが眉を寄せる。


「なら……。」

杖の先へ魔力を集中させる。

「重力、追加。」


ズンッ!!

さらに重力が加わる。

改人Ωの身体が床へ押し付けられた。


青真はその隙を逃さない。

銀河を握り直す。


一歩。

踏み込む。

蒼白い斬撃が走る。


しかし。

改人Ωの身体から大量の電雷が噴き出した。

バチバチバチッ!!

電雷が斬撃へぶつかり、軌道を僅かに逸らす。


青真の目が細くなる。

「防御にも電雷を使えるのか。」


改人Ωが鎖を引き千切る。

バキィン!!

そのまま地面を蹴った。


「速い。」

玲司が呟く。


改人Ωの姿を目で追いながら、通信機へ手を伸ばす。

「周囲の設備への被害が拡大しています。」

「戦闘を長引かせるのは危険です。」


「分かった。」

青真が答える。

「短時間で終わらせる。」


改人Ωが再び接近する。

青真は未来予知を見る。


右。

左。

フェイント。

その先に拳。


「見えてる。」

銀河で拳を受け流す。


ギィン!!

改人Ωの身体が流れる。


そこへカレンが踏み込んだ。

「隙あり。」


剣が胸部へ走る。

改人Ωが身体を捻る。


しかし完全には避け切れない。

刃が胸部を浅く裂いた。


闇風がその傷口へ飛び込む。

「ここだ。」

毒影の短剣が魔力回路を断つ。


改人Ωの電雷が一瞬だけ弱まった。

「今。」

メグが魔人形(ゴーレム)へ指示を出す。


魔人形が改人Ωの腕を掴む。

その隙にメグが再び錬金拘束を展開する。

金色の鎖が改人Ωの身体へ絡み付いた。


青真は改人Ωを見据える。

「なるほど。」

「能力を重ねるほど、切り替えに僅かな隙ができる。」


メグも頷く。

「やっぱり。」

「この改人の身体には、複数の能力が無理やり組み込まれてる。」


「五感強化。」

「敏捷強化。」

「電雷操作。」

「それぞれの能力を独立して使ってるんじゃない。一つの身体で同時に動かしてる。」


闇風が改人Ωを見据える。

「だから切り替えの瞬間だけ、魔力の流れが乱れる。」


「そういうこと。」


カレンが剣を構え直す。

「なら、その瞬間を狙えばいい。」


改人Ωが再び構える。

全身の魔力回路が輝く。

電雷がさらに強くなる。


そして。

敏捷強化の魔力が全身へ流れ始めた。


玲司が周囲を確認する。

「来ます。」


青真は銀河を構える。

「来い。」


改人Ωが床を蹴った。

轟音と共に、その姿が消える。ぶ

未来予知が、次の動きを映し出した。



改人Ωの姿が消える。

直後。

ドォン!!


凄まじい衝撃が地下空間を駆け抜けた。

青真の目の前へ、改人Ωが現れる。


拳が振り抜かれる。

未来予知に映った軌道を、青真は僅かに身体を傾けて躱した。


そのまま銀河を振るう。

ガキィン!!

刃と腕がぶつかる。


電雷が弾ける。

改人Ωは一度距離を取った。


「速い。」

青真は銀河を構え直す。

「でも、もう見えてる。」


改人Ωが再び踏み込む。

右。

左。


さらに一歩。

その動きに合わせて電雷が変化する。


だが、青真には次の動きが見えていた。

「そこだ。」

青真が一歩前へ出る。


その瞬間、カレンが横から踏み込んだ。

剣が改人Ωの腕を正確に捉える。

ギィン!!

改人Ωの拳の軌道が逸れた。


闇風がその死角へ滑り込む。

「もらった。」

毒影の短剣が背中の魔力回路を斬り裂く。


バチィッ!!

電雷が一瞬だけ弱まった。


「今です!」

メグが杖を振る。


「《重力拘束(グラビティバインド)》!」


ズンッ!!

改人Ωの身体が床へ沈む。

さらに魔人形が背後から腕を掴んだ。


ゴォォッ!

改人Ωが力任せに振り払おうとする。


しかし、その足元へ黄金色の錬成陣が広がった。

「錬金拘束。」

金色の鎖が一斉に伸びる。


両脚。

両腕。

胴体。


改人Ωの動きが完全に止まった。

「グォォォッ!!」


全身の電雷が一気に膨れ上がる。

鎖が激しく軋む。


「まだ動くの……。」

メグが魔力を追加する。


「なら、もう一段。」

重力がさらに強くなる。


床が大きく沈み込む。

改人Ωの魔力回路が赤く明滅した。


その瞬間。


メグが目を見開く。

「今、能力が切り替わった。」


青真が頷く。

未来予知にも、同じ瞬間が映っている。


電雷操作から敏捷強化へ。

その切り替えの僅かな間。

魔力回路の流れが乱れる。


「これが最後の隙だ。」

青真が踏み込む。


改人Ωが力を振り絞る。

拘束を破ろうと身体を動かす。


カレンが正面へ立った。

「させません。」

剣が閃く。


改人Ωの視線がカレンへ向く。


その瞬間。

闇風が背後へ回った。

「隙だ。」

短剣が魔力回路を断つ。


電雷が消える。


メグの重力魔法が改人Ωの身体を押さえ込む。

そして。


青真が銀河を振り抜いた。

「終わりだ。」


蒼白い斬撃が一直線に走る。

胸部。


そこへ集約されていた複数の魔力回路が一斉に断ち切られた。


バキィィィン!!


改人Ωの身体から光が溢れる。

魔力回路が次々と砕けていく。


電雷も。


敏捷強化の魔力も。

五感強化の魔力も。

全てが消えていった。


改人Ωの身体がゆっくりと膝をつく。


そして。

ドサッ。

床へ倒れた。


静寂。

青真は銀河を鞘へ戻した。


「終わったな。」


玲司がすぐに改人Ωへ近付き、反応を確認する。

「魔力反応、完全に消失しています。死亡を確認しました。」


カレンが剣を収める。

「A+級でしたが問題ありませんでしたね。」


闇風も短剣を収める。

「能力の種類は多かった。だが、扱い切れていなかったな。」


メグは倒れた改人Ωを見つめる。

「それでも……。」

「これだけの能力を一つの身体へ組み込める技術は、かなり危険。」


青真が周囲を見渡す。

「なら、ここも終わらせよう。」


メグが頷く。

「そうだね。」


彼女は施設中央にある魔導装置へ向かった。


巨大な装置から、無数の魔力供給管が伸びている。

その先には大量の培養槽。

メグが装置へ手を添える。

「この装置が製造設備全体へ魔力を送ってる。」

「ここを止めれば、少なくともこの施設ではもう改人を作れない。」


「壊せるか?」


「壊すだけなら簡単。」

メグは杖を構える。

「でも、せっかくだから中身も残しておきたい。」


錬成陣が展開される。

複雑な魔力回路が一つずつ浮かび上がっていく。


「魔力供給経路を切断する。」

「製造用の術式も停止させる。」


金色の魔力が装置内部へ流れ込む。

次々と魔力回路が消えていく。

ブゥゥゥン……。

施設全体へ響いていた機械音が、少しずつ小さくなる。


一つ。

また一つ。

培養槽が停止していく。

内部の魔力も消えていく。


玲司が周囲を確認する。

「魔力反応、急速に低下しています。製造設備の大半が停止しました。」


「地下構造にも変化があります。このまま停止処理を続けると、施設全体が崩れる可能性があります。」


メグが顔を上げた。

「もう十分。」


青真が頷く。

「撤退するぞ。」


「承知しました。」

玲司が通信機を取り出す。

「長官。」


『どうした。』


「改人の上位個体を撃破しました。」


『そうか。』


「製造設備も停止処理に入っています。」


『無理はするな。』


『証拠を可能な限り確保して撤退しろ。』


「承知しました。」

玲司は通信を切る。

「撤退します。」


一行は来た道を戻り始めた。


その時。


ガコン!!

施設全体が大きく揺れた。


「崩壊が始まります!」

玲司が叫ぶ。

「急ぎましょう。」


全員が一斉に走り出す。

階段を駆け上がる。

通路を抜ける。

そして地上へ出た瞬間。


ドォォォォン!!

背後で廃棄施設が大きく崩れ落ちた。

大量の瓦礫が山間部へ崩れ、地下への入口も完全に塞がれる。


青真は崩壊した施設を見つめた。

「これで、ここから改人が作られることはない。」


メグが静かに答える。

「うん。」


しかし。


玲司は回収した端末を見つめていた。

「一つだけ、気になる記録があります。」


青真が振り返る。

「何だ?」


玲司は画面を確認する。

「改人遊撃連隊の運用予定。」


「この施設で製造する個体とは別に、すでに運用段階へ移っている部隊があるようです。」


青真の表情が変わる。

「……街へ出すつもりか。」


「その可能性があります。」


静かな山間部に風が吹く。

その頃。

遠く離れた場所。


暗い部屋の中で、一人の男が端末へ表示された報告を眺めていた。


ネメシスの幹部。

画面には一つの報告が表示されている。


『改人Ω――撃破。製造拠点B――機能停止。』


男は静かに画面を閉じた。

「Ωは失敗か。」


「まあいい。」

別の画面を開く。

そこには大量の改人が並んでいた。


「遊撃連隊は完成している。」

「予定通り、市街地へ投入する。」


男はその画面を眺めながら、僅かに口元を上げた。

「それに……。」


別の資料へ視線を移す。

そこにはPRIMEの戦闘記録が並んでいた。


青真。

闇風。

メグ。

カレン。


「そろそろ、奴ら自身を利用する計画も実行に移すか。」


男は静かに端末を閉じた。


一方。

青真達はまだ知らない。

次に待っている戦いが、単なる改人討伐ではないことを。


改人遊撃連隊。

その部隊が、すでに街へ向けて動き始めていた。

読んでいただきありがとうございました!もし面白いと思っていただけたら、ブクマや評価で応援してもらえると励みになりま

す!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。