↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
172/177

第172話:改人Ω

白い蒸気が地下施設へゆっくりと広がっていく。

培養槽の中に浮かんでいた異形の影が、ゆっくりと動き始めた。


ガシャン。

固定具が外れる。

次の瞬間。

ドォン!!


巨大な腕が培養槽のガラスを内側から叩き割った。

破片が床へ散らばる。

その奥から、一体の改人が姿を現した。


人間に近い姿。

だが、身体の各所には黒い魔力回路が浮かび上がり、肩から背中にかけては魔導装置のような器官が埋め込まれている。


「魔力反応、A−級相当です。」

玲司が静かに告げる。


青真は改人を一瞥した。

「A−か。」


銀河へ手を添える。

「なら、すぐ終わるな。」


改人が咆哮する。

「グォォォォォッ!!」


床を蹴った。

巨体が一気に迫る。


青真は未来予知を発動する。

拳が振り抜かれる未来が見えた。


「そこ。」

半歩だけ身体をずらす。

拳が空を切った。


その横をカレンが通り抜ける。

細剣が閃いた。


一閃。

肩の魔力回路が断ち切られる。


「グォッ!?」

改人の動きが止まった。


そこへ闇風が死角から入り込む。

双短剣が膝裏を正確に切り裂く。

「これで十分だ。」


改人の身体が僅かに沈む。


メグが手を前へ向けた。


「《重力領域(グラビティエリア)》。」


ズンッ!!

改人の身体へ重力が掛かる。

床へ膝が落ちる。


その瞬間、魔人形(ゴーレム)が横から突っ込んだ。


「ゴォッ!」


ドゴン!!

巨大な拳が改人を吹き飛ばす。


壁へ叩き付けられた改人へ、メグの錬成陣が展開される。

「錬金拘束。」

金色の鎖が一瞬で伸び、改人の腕と脚を拘束した。


「青真。」

メグが振り返る。

「今。」


「了解。」

青真が踏み込む。


銀河が蒼く輝く。

一閃。

蒼白い斬撃が改人の胸部を走った。


改人の魔力回路が一斉に砕ける。

巨体が床へ崩れ落ちた。

静寂。

青真は銀河を鞘へ戻した。


「終わりだな。」


玲司が倒れた改人を確認する。

「反応、完全に消失しています。」


カレンは剣を収めた。

「この程度なら問題ありませんね。」


闇風も周囲を見回す。

「他に来る気配はない。」


メグだけは倒れた改人から視線を離さなかった。

「……待って。」


しゃがみ込み、改人の身体へ手を添える。

魔力を流す。

その瞬間。


メグの表情が変わった。

「やっぱり。」


奥には、数え切れないほどの培養槽が続いている。


その全てへ、太い魔力供給管が繋がっていた。


「……一体だけじゃない。」

青真が呟く。


メグは立ち上がった。

「うん。」

「この設備なら、同じような改人を何体も作れる。」


玲司が周囲を確認する。

「製造設備として稼働している可能性が高いですね。」


「ということは。」

闇風が奥を見る。

「ここはただの改人の製造場所ではないな。」


メグが頷いた。

「しかも、かなり大規模。」


青真は培養槽を見つめる。

先ほど戦った改人は、A−級。


それほどの戦力を持つ存在が、ここでは一体の特別な怪物ではない。

製造される対象の一つに過ぎない。


「……厄介だな。」

青真が静かに呟く。

「街で改人を倒してるだけじゃ、終わらないわけだ。」


「そういうことです。」

カレンが頷く。


メグは近くの魔導装置へ近付いた。

「この設備を調べれば、どうやって改人を作ってるのか分かるかもしれない。」


「それに。」

メグが奥へ続く通路を見る。

「もっと大きな設備がある。」


その時だった。


玲司が突然足を止めた。

「……待ってください。」


全員が玲司を見る。


「地下の奥から魔力反応があります。」

「かなり大きい。」


闇風が目を細める。

「敵か?」


玲司は集中する。

「分かりません。」

「ですが、この施設にいる改人とは違う反応です。」


青真が銀河へ手を添える。

「なら、見に行こう。」


メグも魔導具を手に取った。

「この施設の中心が近いかも。」


五人は地下施設の奥へ向かって歩き始めた。

背後には、停止した培養槽。

そのさらに奥には、まだ稼働を続ける無数の魔導装置。

静かな機械音だけが、地下空間に響いていた。



地下施設の奥へ進むほど、魔力の濃度が明らかに高くなっていった。

壁に埋め込まれた魔導装置が低い音を響かせ、床には複雑な術式が幾重にも刻まれている。


玲司は通信機を確認しながら、周囲へ視線を走らせた。

「この先、広い空間があります。」

「それと、魔力反応が一段階強くなっています。」


青真が足を止める。

「敵?」

「まだ断定できません。」


玲司は少しだけ集中する。

「ですが、通常の改人とは違います。」


メグが前へ出た。

「調べてみる。」

壁際の魔導装置へ手を添え、魔力を流し込む。

すると、目の前の術式が淡く発光した。


「これは……。」

メグの視線が装置から離れない。

「製造記録が残ってる。」


青真達も集まる。

装置へ表示された魔力情報には、改人の製造工程が記録されていた。


そこには複数の能力名が並んでいた。


五感強化。

敏捷強化。

電雷操作。

さらに複数の強化系能力。


カレンが息を呑む。

「一体の改人へ、これだけの能力を?」


「そうみたい。」

メグの表情が険しくなる。

「だから、この施設はただ改人を作ってるだけじゃない、強力な能力を持った改人を、人工的に作り出してる。」


闇風が周囲を見る。

「その完成品は?」


メグが答える前に、玲司が顔を上げた。

「……前方です。」


「大きな魔力反応。」

五人は通路の先へ進む。


やがて巨大な扉が現れた。

扉の向こうから、低い魔力の振動が伝わってくる。


青真が手を掛ける。

ギィィィィ……。

扉がゆっくりと開いた。


その先には、広大な円形の部屋が広がっていた。

中央に巨大な培養槽が一つ。

周囲には無数の魔導装置。


そして、培養槽へ向かって何本もの魔力供給管が伸びている。


「一つだけ……。」

カレンが呟く。


メグが培養槽へ近付く。

「この施設の最重要個体かもしれない。」


魔力を探る。

その瞬間。

メグの表情が変わった。


「……A+級。」


青真が目を細める。

「A+?」

(びっくりしたー。そんな反応するからS以上だと思うじゃん。A+なら十分やれるな。)


「うん。」

メグは培養槽を見上げる。

「でも、それだけじゃない。」

「この魔力回路……普通の改人とは構造が違う。」


メグが装置へ魔力を流す。

培養槽の内部へ情報が表示される。

「改人Ω?」


「五感強化。」

「敏捷強化。」

「電雷操作……。」

「複数のアーティファクト能力を継承してる。」


闇風が短剣を構える。

「一体に複数の能力を?」


「そう。」

メグが頷く。

「アーティファクトそのものを持ってるわけじゃない。」


「能力だけを身体へ組み込んでる。」

青真は静かに培養槽を見つめた。

「つまり、こいつは最初から複数の能力を使うために作られた。」


「その可能性が高い。」


カレンが細剣を抜く。

「起動する可能性は?」


メグが培養槽の魔力値を見る。

「……もう始まってる。」


その瞬間。

培養槽へ大量の魔力が流れ込んだ。

ゴォォォォォ……。

施設全体が震える。


玲司がすぐに通信機を手に取った。

「長官。」


『どうした。』


「地下深部で特殊な改人を確認しました。」

「A+級相当。」


『A+……。』

蓮の声が僅かに低くなる。


玲司は培養槽を見ながら答える。

「複数のアーティファクト能力を継承しているようです。」


『無理はするな。』


「承知しました。」

玲司は通信を切る。


その時だった。

培養槽の中で、改人の指が動いた。

ピクリ。


青真が銀河へ手を掛ける。

「……起きるぞ。」


ガシャン!!

培養槽の固定具が外れる。

白い蒸気が一気に噴き出した。

その奥で、巨大な影がゆっくりと立ち上がる。


改人が目を開いた。

その瞳が、まっすぐ青真達を捉える。


次の瞬間。

バチィッ!!


青白い電雷が身体中を走った。


メグが思わず一歩下がる。

「電雷操作……。」


改人が一歩、前へ出る。

ドン。

床が僅かに揺れる。


二歩目。

ドン。

その瞬間。


姿が消えた。

「――!」


青真の未来予知が反応する。

数秒先。

改人は既に青真の目の前へ到達していた。


「速い。」

だが、青真は動じない。


銀河を抜く。

ガキィン!!

拳と刀身がぶつかった。

雷光が弾ける。

青真は数歩後退する。

改人は追撃しない。

ただ静かに立っている。


「……。」

五感強化によって、青真の動きを完全に捉えている。


その身体には電雷が走り続けていた。


カレンが剣を構える。

闇風が低く姿勢を落とす。

メグは魔人形を呼び出す。

玲司も長剣へ手を掛けた。

青真は銀河を構え直す。


改人の身体へ、さらに雷が集まる。

そして。

一歩。


その瞬間、再び姿が消えた。

地下施設へ、凄まじい衝撃音が響き渡った。


読んでいただきありがとうございました!もし面白いと思っていただけたら、ブクマや評価で応援してもらえると励みになりま

す!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。