表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
最強ゲーマーの《多世界攻略録(マルチバースアーカイブ)》  作者: 紅柳
第五部魔法世界編 第一編 猟犬追跡編
165/174

第165話:猟犬の巣

特魔災害対策庁、作戦会議室。

壁一面の大型モニターには、ここ数日で発生した魔法犯罪の記録が表示されていた。


暴走事件。

魔法を利用した強盗。

ネメシス傘下組織襲撃。


一見すれば、それぞれ別の事件にしか見えない。

しかし。


「全部、繋がってる。」

蓮が静かに口を開いた。

「問題は、どこへ繋がっているかだ。」


青真達はモニターを見つめる。


「ネメシスの名前はすでに表へ出ている。」

「だが、上層部の人間や本拠地については、ほとんど情報がない。そこで、お前達には別々に捜査してもらいたい。」


青真は頷いた。


「分かった。」

四人はそれぞれ違う方向から捜査を開始した。


◇◇◇


青真が向かったのは、過去に発生した魔法犯罪資料室だった。


大量の記録を机へ並べ、一件ずつ発生地点と時間を地図へ書き込んでいく。


「こっちが暴走事件。こっちが強盗。こっちは傘下組織襲撃……。」


事件そのものには共通点がない。

だが、青真は地図を眺めながら眉をひそめた。


「……違う。」

「見るべきなのは事件が起きた場所じゃない。」


犯人達が事件の前に移動した経路。

そこへ視点を切り替える。

複数の事件を線で繋いでいく。


すると、いくつもの線が一つの地域へ集中していた。


「東京湾岸……。」


◇◇◇


闇風は別の場所にいた。


制圧したネメシス傘下組織。

その組織から押収された資料を調べている。


闇風は帳簿を眺めるだけではなく、物資の搬入記録、人員の移動記録、受け渡し場所を一つずつ確認していた。


「……ここか。」


複数の組織から別々に送られた魔石や特殊金属。

その行き先が、同じ中継地点へ集中している。


しかも、その中継地点から先の記録だけが不自然に途切れていた。


「隠しているな。」


闇風は地図へ視線を落とす。

中継地点の先。

そこにも東京湾岸の旧工業地区があった。


◇◇◇


メグは研究室でアーティファクトを調べていた。

机の上には、回収された精神干渉アーティファクトが並んでいる。


「……やっぱり。」

魔力を流す。

内部の術式が淡く輝いた。


「精神干渉の術式だけじゃない。」

「魔力回路そのものが、ほぼ同一規格。」


さらに素材を確認する。


「この魔石。」

「こっちの特殊金属も……。」


メグは資料と照合し、徐々に表情を険しくした。


「これだけ大量のアーティファクトに精神干渉効果を付けて生み出してる。」

「個人の研究施設じゃ無理。」

「大規模な製造設備が必要になる。」


候補となる施設を検索する。

そして。


「……あった。」

条件に一致する施設が一つだけ残った。

「東京湾岸の旧工業地区。」


◇◇◇


カレンは事件資料と交通網を照らし合わせていた。

「犯人達が移動したルートだけではありませんね。」


「人員を運ぶための経路。物資を運ぶための経路。そして、見張りを配置するための経路。」


それぞれを書き出していく。

やがて三つの経路が、一つの地点へ集まった。


「ここです。」

カレンが地図を指差す。

「東京湾岸の旧工業地区。」


◇◇◇


夕方。


四人が作戦室へ戻る。

それぞれの資料を机へ置いた。


「俺は事件の移動ルートから。」

青真が言う。


「俺は物資の流れから。」

闇風が続ける。


「私はアーティファクトの製造条件から。」

メグが資料を示す。


「私は人員と物流の経路からです。」

カレンが最後に地図を広げる。


蓮は四人の資料を一つへ重ねた。

その中心。

全ての線が、一つの地点で重なっていた。

東京湾岸。

旧工業地区。


青真が静かに口を開く。

「……ここだな。」


闇風が頷く。

「間違いない。」


メグも地図を見つめる。

「製造設備の条件も一致してる。」


カレンは静かに息を吐いた。

「なら、ここがネメシスの拠点です。」


蓮は数秒間、地図を見つめた。

そして。


「明日、現地へ向かえ。」

「ハウンドがいるかどうかは分からん。」

「だが、ここまで情報が揃えば調べる価値はある。」


青真は立ち上がった。

「了解。」


四人は作戦室を後にする。

その夜。


東京湾岸、旧工業地区。


誰も使っていないはずの廃工場の地下で、無数の監視モニターが静かに光っていた。


その画面の一つに映っているのは――。

青真達、PRIMEの資料だった。


翌日。

東京湾岸、旧工業地区。

かつては工場や倉庫が立ち並んでいた場所も、今では使われなくなった建物ばかりが残っていた。


四人は人目を避けながら、目的の区域へ入っていく。

「……静かすぎるな。」

青真が周囲を見渡す。


昼間だというのに、人の気配がほとんどない。


「廃棄された工場が多い地域ですから。」

カレンが答える。

「ですが、完全に無人というわけではありません。」


その言葉に闇風が足を止めた。

「……ああ。」

視線だけを動かす。

「見られている。」


青真も周囲を見渡した。

「どこから?」


「分からない。」

闇風が短く答える。

「だが、いる。」


メグも魔力を探る。

「微弱な魔力反応がある。」

「地下……ね。」

四人は一つの古びた工場へ視線を向けた。


建物自体は完全に放棄されているように見える。

だが。

正面入口の扉だけが妙に新しい。


「ここだな。」

青真が近付く。


カレンが扉を確認する。

「鍵が掛かっています。」


「開けるか?」

青真が聞く。


カレンは首を横に振った。

「待ってください。」


剣を抜く。

一閃。

金属製の扉が綺麗に切断され、そのまま静かに倒れた。

「行きましょう。」


「相変わらず豪快だな。」

青真が苦笑する。


四人は工場内部へ入った。

中は暗い。

機械は停止し、床には長年使われていないような埃が積もっている。


しかし。


「……この埃。」

メグがしゃがみ込む。

「最近、誰かが通ってる。」


闇風も床へ視線を落とす。

「足跡がある。」


その先には、古い搬入口。

さらにその奥。

地下へ続く階段があった。


「地下施設か。」

青真が呟く。


四人は階段を降りていく。

十数段。

やがて、地下へ到着した。

その瞬間だった。


カチッ。

小さな音が響く。


「止まって!」


メグが叫ぶ。

次の瞬間。

天井から無数の細いワイヤーが飛び出した。

「来る!」


青真が前へ出る。

銀河を鞘から抜剣する。

同時に、通路の奥から大量の魔力を纏った弾丸が飛んできた。

ドドドドドッ!!


青真は避けない。

銀河で銃弾を全て斬り捨てていく。


「銃撃です!」

カレンが叫ぶ。


暗闇の奥から複数の人影が現れた。


一人。

二人。

三人。

さらに奥から五人。

合計八人。


全員が武器を構えている。


魔法短剣(マジックダガー)》。

鉄パイプ。

魔力手榴弾。

そして《六連回転魔銃(リボルバー)》を装備した男。

「侵入者はPRIMEだ!」

「構うな!」

「ここで潰せ!」


八人が一斉に動いた。


魔力手榴弾が投げ込まれる。


「散開!」

青真の声と同時に、四人がそれぞれ別方向へ動く。


爆発。

白い閃光と煙が通路を覆った。

その中から短剣を持った男が飛び出してくる。


「死ね!」

青真へ向かって振り下ろされる短剣。


キィン!

刃が魔力装衣へ触れた瞬間、弾かれた。


「なっ……!」


青真は相手の腕を掴む。

「悪いな。」


そのまま軽く投げ飛ばす。

男の身体が床を転がった。


闇風の背後から別の男が鉄パイプを振り上げる。


しかし。

その姿が突然消えた。

「え?」


気配を完全に消し、一瞬で死角へ回り込んでいた。


次の瞬間。

ゴッ。

闇風の短剣の峰が男の首元へ入る。


男が崩れ落ちる。


「こいつ!」

残りの敵が闇風へ殺到する。


だが。

「遅い。」


闇風は一歩後ろへ下がった。


その瞬間、床へ仕掛けられていたワイヤーが敵の足へ絡み付く。


「なに!?」

「罠まで!」


闇風は答えない。

ただ死角へ消える。


一人。

また一人。


峰打ちによって次々と敵が倒れていく。

「メグ!」


「わかってる!」

魔力手榴弾がメグへ向かって飛んでくる。


メグは慌てない。


「《魔人形ゴーレム》!」

巨大な魔人形が瞬時に前へ現れる。


ドンッ!!

爆発を正面から受け止める。

煙が晴れる。


魔人形は傷一つない。


「そ、そんな……!」

敵が後退する。


メグは魔導具を握り直した。

「私達を相手にするなら、もっと準備した方がいいよ。」


魔人形が拳を振り抜く。

ドォン!!

敵がまとめて吹き飛ばされる。


残った二人が《六連回転魔銃(リボルバー)》を構えた。

「撃てえええっ!!」

六発の魔弾が連続して放たれる。


青真はその前へ出た。

「《魔力弾マナショット》。」


掌から放たれた光弾が途中で分裂する。

一発。

二発。

四発。

八発。


散弾となった魔力弾が敵の武器を正確に弾き飛ばす。


「ぐあっ!」


「銃が!」

そのまま二人が床へ倒れ込む。


そして。

最後に残った敵の前へ、カレンが立っていた。

「これで、終わりです。」

剣を構える。


敵が鉄パイプを振り上げた。


カレンは一歩だけ踏み込む。


一閃。

空気を裂く斬撃が敵の武器を弾き飛ばし、その衝撃で身体ごと後方へ吹き飛ばした。


ドンッ!

静寂。

八人の戦闘員が、全員床へ倒れている。


青真は周囲を見渡した。

「……終わったな。」


闇風が倒れた敵を確認する。

「全員、生きている。」


メグも頷いた。

「気絶しているだけね。」


カレンは剣を鞘へ納める。

「では、先へ進みましょう。」


その時。

地下施設の奥から、カチッという小さな音が響いた。


四人が一斉に振り向く。

暗闇の奥。


無数の監視カメラが、ゆっくりとこちらへ向きを変えていた。


「……。」

青真が目を細める。

「見られてるな。」


モニターの赤いランプが、一つ。

また一つと点灯していく。


その先に待つものが何なのか。

まだ、誰も知らなかった。

読んでいただきありがとうございました!もし面白いと思っていただけたら、ブクマや評価で応援してもらえると励みになりま

す!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ