第163話:調査
特魔災害対策庁本部。
池袋事件から数日後。
会議室には大型モニターが設置され、複数の事件記録が表示されていた。
画面に映るのは、各地で発生した魔法犯罪。
違法アーティファクトの使用。
一般人による魔法暴走。
突然の破壊活動。
それらの情報が並べられている。
青真達PRIMEの四人は、会議室の席へ座っていた。
「池袋の事件以降、各地の事件記録を再調査した。」
蓮が資料をめくりながら話す。
「結果、過去にも同じような事件が複数発生していたことが分かった。」
メグがモニターを見る。
「でも、今までは別々の事件として処理されていた。」
「そうだ。」
蓮は頷く。
「使われたアーティファクトも違う。」
「暴走した人数も違う。」
「だが、共通点があった。」
画面に複数の事件が表示される。
「違法なアーティファクトの流通。」
「そして使用者の精神状態の異常。」
闇風が腕を組む。
「裏で繋がっていたわけか。」
「ああ。」
蓮は一枚の資料を表示する。
黒い紋章。
その下に書かれた名前。
「ネメシス。」
部屋の空気が少し重くなる。
青真は画面を見る。
「まだ分かっていることは少ないんですよね。」
「その通りだ。」
蓮は答える。
「組織の規模。」
「構成員。」
「拠点。」
「目的。」
全て不明。
「ただし。」
蓮は続ける。
「奴らが偶然事件を起こしているわけではないことだけは確かだ。」
「計画的にアーティファクトを配布している。」
「何か目的がある。」
カレンが静かに口を開く。
「一般人を利用した理由が気になります。」
「戦力としてではなく、データ収集の可能性がありますね。」
メグも頷く。
「アーティファクトの性能確認。」
「精神干渉の効果確認。」
「誰かが試していた可能性が高い。」
青真は拳を握る。
「人を実験に使ってるってことか。」
蓮は静かに頷いた。
「だから早急に調査する必要がある。」
「だが、相手は慎重だ。」
「池袋事件の後も、大きな動きは確認されていない。」
闇風が目を細める。
「姿を隠している。」
「ああ。」
蓮は四人を見る。
「そこで、PRIMEには各地の関連事件調査を頼みたい。」
「全国規模になる。」
青真は頷いた。
「分かりました、探します。」
蓮は続ける。
「ただし無理はするな。」
「相手の情報が少なすぎる。」
「正体不明の組織ほど危険だ。」
青真は立ち上がる。
「それでも次の被害が出る前に止めます。」
その言葉に、闇風、メグ、カレンも続いて立ち上がった。
こうして。
人類最強部隊PRIMEによる、ネメシス追跡が始まった。
PRIMEによる調査が開始されてから数日。
各地で発生した魔法犯罪の情報が、少しずつ集まり始めていた。
その中で。
一つの共通点が浮かび上がる。
違法アーティファクトの流通経路。
そこを追っていた闇風は、とある地下街へ足を踏み入れていた。
薄暗い路地。
表向きは普通の商店街。
しかし。
一歩裏へ入れば、そこには違法な魔法道具を扱う闇市場が存在していた。
「……ここか。」
闇風は周囲を見回す。
魔力を隠す結界。
監視用の魔法道具。
普通の人間なら気付けない細工。
だが。
闇風の気配察知は、それら全てを捉えていた。
「三人全員、武装しているな。」
その中の一人。
黒い箱を別の男へ渡している。
中身は違法アーティファクト。
闇風は静かに距離を詰めた。
「……誰だ。」
構成員の一人が振り返る。
しかし。
その瞬間には。
既に闇風の姿は消えていた。
「な――」
次の瞬間。
男の背後。
短剣の柄が首元へ叩き込まれる。
ドサッ。
男はその場へ崩れ落ちた。
「一人。」
闇風は淡々と呟く。
残り二人が慌ててアーティファクトを起動する。
「敵襲!」
「こいつ一人だ!」
魔力障壁。
強化魔法。
攻撃用アーティファクト。
しかし。
相手が悪かった。
「遅い。」
闇風が踏み込む。
一瞬。
二人の武器だけが切断された。
ガキィン!!
そして。
次の瞬間には二人とも意識を失い、地面へ倒れていた。
戦闘終了。
時間にして数秒。
闇風は倒れた構成員達を拘束する。
「……末端か。」
装備。
魔力。
戦闘能力。
どれも低い。
だが。
情報源としては十分だった。
◇◇◇
特魔災害対策庁。
取り調べ室。
拘束されたネメシス構成員が座っている。
蓮。
青真。
闇風。
メグ。
カレン。
全員が資料を確認していた。
「ネメシスについて話してもらう。」
蓮が告げる。
構成員は笑う。
「俺達は下っ端だ。」
「上のことなんて何も知らねぇ。」
闇風が静かに口を開く。
「なら知っている範囲でいい。」
「誰から指示を受けた。」
数秒の沈黙。
やがて。
男は答えた。
「……ハウンド様。」
闇風の目が細くなる。
「ハウンド。」
「現場を動かしてる上司だ。」
「俺達はあの方の指示でアーティファクトを流していた。」
メグが資料へ視線を落とす。
「やっぱり。」
「組織的に動いてる。」
さらに調査を続ける。
判明した情報。
* ネメシスには複数の部門が存在する
* 違法アーティファクトの製造担当がいる
* ハウンドは現場指揮を担当している
* さらに上に存在する人物がいる
青真は静かに資料を見る。
「ハウンドの上、まだいるのか。」
構成員は震えながら答える。
「俺達が知ってるのはそこまでだ。」
「だが……。」
「ネメシスは、まだ始まったばかりだって。」
「ハウンド様は言っていた。」
◇◇◇
その頃。
ネメシス拠点。
暗い部屋。
ハウンドは複数のモニターを見ていた。
池袋事件。
回収されたアーティファクト。
そして。
PRIMEの戦闘記録。
「……。」
「やはり。」
ハウンドは小さく呟く。
「一般人程度では、この程度か。」
机の上には新たな資料。
そこには人間の魔力データ。
強化術式。
人体改造計画。
「第一段階終了。」
「次は、より強い個体で試す。」
ハウンドの背後。
暗闇の中で複数の影が動く。
ネメシスの計画は。
次の段階へ進もうとしていた。
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