第154話:神武解放
六本木。
夜空を埋め尽くす瓦礫群。
街灯。
自動車。
コンクリート片。
高架道路の残骸。
数百。
数千。
全てが宙へ浮いていた。
「……なるほど。」
総長は戦斧を肩へ担ぎながら空を見上げる。
「ようやく本気か。」
ボスは無言だった。
ただ右手をゆっくりと前へ差し出す。
その瞬間。
ドドドドドドドドドッ!!
無数の瓦礫が一斉に射出された。
弾幕。
まるで巨大な機関砲だった。
総長は空を蹴る。
《空駆法》。
バン!!
右へ。
バン!!
左へ。
バン!!
上へ。
次々と軌道を変えながら瓦礫の嵐を潜り抜けていく。
だが。
終わらない。
避けても避けても次が来る。
「チッ。」
総長は初めて舌打ちした。
ボスは静かに目を閉じる。
その周囲へ赤いウィンドウが展開された。
演算。
未来予測。
軌道計算。
行動解析。
総長の移動経路が無数に表示される。
「捕捉。」
ボスが呟いた。
次の瞬間。
総長の着地点へ巨大なビル残骸が叩き込まれる。
ドォォォォォン!!
爆発。
衝撃。
粉塵。
総長は咄嗟に防御する。
しかし。
避け切れない。
ガァァァン!!
巨大な鉄骨が肩へ直撃した。
「ぐっ!」
吹き飛ばされる。
ビル外壁へ叩き付けられる。
コンクリートが砕け散った。
ボスは静かに告げる。
「終わりだ。」
「未来演算。」
「回避経路。」
「着地点。」
「反撃行動。」
「全て予測済み。」
再び瓦礫群が動く。
今度は逃げ道そのものを塞ぐように。
総長の表情から笑みが消えた。
(なるほどな。未来を読んでやがる。)
空を蹴る。
しかし。
次の着地点にも瓦礫。
さらに次も。
その次も。
まるで見えない壁に追い込まれるようだった。
ドォォォォォン!!
巨大なコンクリート塊が直撃する。
総長の身体が吹き飛ぶ。
道路を何十メートルも転がった。
血が流れる。
ボスはゆっくりと近付く。
「終わりだ。」
総長はゆっくりと立ち上がった。
肩から血が流れている。
だが。
笑っていた。
ボスの表情が初めて変わる。
「……なぜだ。演算結果ではすでにお前は死んでいるはずだ!」
総長は戦斧を拾い上げる。
「はぁ?」
「何寝ぼけた事言ってんだ。」
ボスが目を見開く。
総長は鼻で笑った。
そして。
ゆっくりと戦斧を肩へ担ぐ。
「あのなおっさん。」
夜風が吹いた。
総長の目が鋭く光る。
「俺らプレイヤーは絶えず《適応》してんだよ。」
「昨日の俺と。」
「今の俺は別物だ。」
ボスの未来演算ウィンドウが一斉に乱れ始める。
総長は戦斧を握り締めた。
「だから。」
「お前の演算は外れる。」
「終わりだ。」
キィィィィン!!
首都高速の高架上。
闇風と漆黒の魔族の斬撃が再び激突する。
火花が散る。
しかし。
今度は闇風が押されていた。
「どうした。」
魔族が笑う。
「さっきまでの威勢は。」
闇風は舌打ちする。
速い。
自分と同じ系統。
いや、それ以上だった。
攻撃を仕掛けても躱される。
死角を取っても読まれる。
肩口を浅く斬られる。
脇腹にも傷が増えていく。
「終わりだ。」
魔族が姿を消した。
次の瞬間。
背後。
首筋へ短剣が迫る。
だが。
闇風は笑った。
「……ようやく使えるな。」
(武器から武器の真の力ではなく神獣の力を解放する。)
毒影の短剣が白く輝く。
白雷虎の紋章が浮かび上がる。
「《神武解放》、《雷神化》。」
バチィィィィッ!!
全身へ白雷が走った。
神経。
筋肉。
感覚。
全てが限界を超えて加速する。
魔族の動きが止まって見えた。
「なっ——」
魔族が振り向く。
だが。
もう遅い。
闇風は既に背後へ回り込んでいた。
「遅い。」
黒雷が閃く。
首が宙を舞った。
漆黒の魔族はそのまま光となって消滅する。
闇風は短剣を回しながら呟いた。
「死ぬなよ青真。」
オフィス街。
重戦士の戦斧が振り下ろされる。
ドォォォォン!!
ゴーレムが粉砕された。
「終わりだ。」
重戦士が笑う。
「小娘。」
メグは静かだった。
魔導之杖を握る。
「終わるのはあんたよ!」
朱炎雀の紋章が赤く輝く。
神武解放。
《炎霊兵団》。
ゴォォォォォ!!
不死の神炎が地面を覆う。
そこから。
次々と炎のゴーレムが生まれ始めた。
一体。
二体。
十体。
五十体。
百体。
「何だと……!?」
重戦士が目を見開く。
炎霊兵達は破壊されても即座に再生する。
終わらない軍勢。
不死の兵団。
さらに。
巨大な炎霊ゴーレムがメグを空へ投げ上げた。
上空。
メグの周囲へ無数の薬瓶が展開される。
「降り注げ。」
薬瓶が赤く光る。
《ポーションレイン》。
パリン!!
パリン!!
パリン!!
数百本の爆裂ポーションが雨のように降り注いだ。
神炎と混ざった爆発が街区全体を包み込む。
重戦士も。
大型魔獣も。
全てを飲み込んでいく。
轟音が止んだ時。
そこには何も残っていなかった。
メグは静かに着地した。
御茶ノ水聖橋。
ガキイン!!
剣が激突する。
女騎士とカレン。
互角。
完全な互角だった。
そして。
ドォォン!!
橋が崩壊した。
二人は神田川へ落下する。
ザァァァァッ!!
水飛沫。
だが二人は止まらない。
水面を蹴る。
走る。
再び剣を交える。
「素晴らしい。」
女騎士が笑う。
「だが。」
「貴女では届かない。」
突き。
連撃。
斬撃。
カレンは徐々に押され始めた。
その時。
玄盾武が輝く。
「《神武解放》、《絶対防御領域》。」
翠色の光が広がった。
女騎士の剣が届く。
だが。
弾かれた。
「何……!?」
さらに。
反射。
自らの攻撃がそのまま返る。
一瞬の隙。
カレンは見逃さなかった。
神田川の水面を駆ける。
一直線。
「これで終わりです。」
銀閃。
一閃。
女騎士の身体が崩れ落ちる。
「見事です……。」
その言葉を残し光へ変わった。
カレンは静かに剣を下ろした。
新宿高層ビル群。
パンッ!!
再び銃声。
アルナの肩を弾丸が掠める。
「ちっ……。」
何度移動しても撃たれる。
だが。
今ので見えた。
位置。
風。
反射。
全て。
アルナは笑う。
「見つけた。」
風の大聖霊が顕現する。
「《聖霊解放》、《風女神》。」
巨大な風の翼が広がった。
風の結界が全身を包む。
アルナは夜空へ飛翔する。
百メートル。
二百メートル。
さらに上。
狙撃手が初めて焦る。
「馬鹿な——」
アルナは弓を引いた。
風が集まる。
回転。
圧縮。
螺旋。
全てを一点へ収束。
「終わりよ。」
《神風螺旋矢》。
放たれた矢は巨大な風の竜となり夜空を裂いた。
高層ビルを貫通。
屋上を破壊。
狙撃手の胸を撃ち抜く。
轟音。
そして静寂。
アルナはゆっくりと降下する。
それぞれの戦場。
全ての魔王軍幹部が消滅した。
夜風が吹く。
闇風。
メグ。
カレン。
アルナ。
四人は同時に東京タワーを見上げる。
その瞬間。
ドォォォォォォォォォッ!!
東京タワーから桁違いの魔力が噴き上がった。
四人の表情が変わる。
「始まったか。」
闇風が呟く。
メグが杖を握る。
「青真……。」
カレンも剣を構える。
アルナは夜空を見上げた。
東京決戦。
究極の戦場。
最後の戦いがさらに激しさを増していく。
読んでいただきありがとうございました!もし面白いと思っていただけたら、ブクマや評価で応援してもらえると励みになりま
す!




