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第152話:守護者と挑戦者

「《大規模地形操作テラフォーミング》。」

浮かび上がった巨大ビルが総長へ向かって倒れ始めた。


数万トンの鉄骨とコンクリート。

普通の人間なら回避すら不可能。

しかし。

総長は笑った。


「面白ぇ。」

戦斧を背から取り振り下ろす。

ドォォォン!!

衝撃波。


戦斧の一撃がビルの外壁へ叩き込まれる。

コンクリートが爆発するように砕け散った。


総長はその破片を足場に飛ぶ。

さらに。


バン!!

空中で何かを蹴る音。

再び加速。

バン!!

バン!!

連続で空気を蹴りながら夜空を駆ける。


「《空駆法エアウォーク》。」

総長は高層ビルの側面へ着地し、そのまま垂直に走り出した。


ボスは初めて僅かに目を細める。

「魔力で空気を固め跳躍しているのか。」


総長は笑う。

「お前らみたいに便利な能力じゃねぇよ。」

そのままビル壁面を蹴る。

一瞬で距離を詰める。


戦斧が振り抜かれた。

轟!!


しかし。

ボスの前へ巨大な壁が出現する。

道路だった。


地面そのものが持ち上がり、鋼鉄の壁となって戦斧を受け止める。

ガァァァン!!

凄まじい衝撃。


周囲の窓ガラスが一斉に砕け散った。

総長は着地しながら舌打ちする。

「硬ぇな。」


ボスは淡々としていた。

「都市全てが私の武器だ。」


右手を振る。

瞬間。

街灯が槍のように飛ぶ。

信号機が捻じ曲がりながら襲い掛かる。

高層ビルの外壁が剥がれ、巨大な刃となって総長へ降り注ぐ。


総長は笑う。

「最高だ。」

戦斧を振る。


破壊。

回避。

空駆法(エアウォーク)》。


常人なら即死する攻撃を、まるで綱渡りのように潜り抜けていく。

しかし。


ボスはまだ動いていなかった。

ただその場へ立ったまま。

総長はそれに気付く。


(余裕だな。)

(動く必要もないってか?)


次の瞬間。

ボスが静かに右手を握った。

空気が歪む。


周囲の瓦礫が浮き上がる。

街灯。

車。

コンクリート。

全てが不自然に宙へ浮いた。


総長の笑みが少しだけ消える。

「……まだあるのか。」


ボスは静かに言った。

「当然だ。」

その瞳が僅かに赤く光る。


六本木の夜空そのものが、不吉に軋み始めていた。


一方東京タワー。

融合した三つの世界の中心。

赤黒い魔力が空へ噴き上がり、周囲の空間そのものを歪ませていた。

青真、蓮、ルシウス。

三人は崩壊した展望台へ降り立つ。


「ここか。」

青真が銀河へ手を添える。


蓮は周囲へ視線を走らせた。

透明な結界が空間全体へ張り巡らされているのが見えた。

「侵入した瞬間、戦闘になるだろう。」


ルシウスも聖剣を握り直す。

「魔力濃度が異常です。」

「ここだけ別空間のようです。」


青真は前を見る。

迷いはなかった。

「行こう。」

三人はゆっくりと最上階へ続く階段を上がる。


一歩。

また一歩。

静寂だけが続く。

魔物もいない。

罠もない。

だからこそ不気味だった。


やがて。

巨大な扉が見えてくる。

漆黒の扉。

無数の魔法陣が刻まれた異様な門。


蓮が小さく息を吐いた。

「この先だ。」

青真は頷く。

銀河に魔力を込める。


ルシウスは聖剣を抜いた。

眩い白銀の光。


三人は視線を交わす。

そして。

重い扉を押し開いた。

ゴゴゴゴゴ……

扉が開く。


その先。

巨大な玉座の間。

天井は見えない。

無数の魔力結晶が空中を漂い、赤黒い光を放っている。


そして。

最奥。

巨大な玉座。

そこへ一人の男が座っていた。

漆黒の鎧。

黄金の瞳。

圧倒的な存在感。

魔王。

融合世界を生み出した張本人。


魔王は静かに目を開いた。

「ようやく来たか。」

低い声が空間を震わせる。


青真は一歩前へ出た。

「全部終わらせる。」


魔王は小さく笑う。

「終わる?」


ゆっくりと立ち上がる。

その瞬間。

玉座の間全体が震えた。

凄まじい魔力。

空気が重くなる。


ルシウスですら思わず息を呑む。

「これほどの魔力……。」


蓮も表情を引き締めた。

「今までとは別格だ。」


魔王は玉座から降りる。

一歩。

また一歩。

床へ足が触れる度に空間が軋む。


「貴様達は確かに強い。」

「我の軍勢も。」

「幹部達も。」

「親衛隊も。」

「全て乗り越えてきた。」

黄金の瞳が青真を捉える。


「だが。」

魔王の口元が僅かに歪む。


「ここから先が本番だ。」

黒い魔力が爆発した。

ゴォォォォォォォッ!!

玉座の間全体を飲み込む魔力の奔流。


青真は銀河を構える。

ルシウスは聖剣を前へ。

蓮は仕込み傘を静かに開いた。


三人と魔王。

互いに一歩も動かない。

しかし。

戦いは既に始まっていた。

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