第150話:分進
すみません。諸事情により4日ぐらい更新が途切れるかもです。
東京都庁。
崩れ落ちた都庁舎の前で、透明だった結界がゆっくりと消えていく。
蓮は静かに息を吐き、掌を下ろした。
「……終わった。」
その隣では、青真が銀河を鞘へ納める。
アルゴの姿はもうない。
砕けたコンクリートだけが、激戦の痕跡を残していた。
「やったな。」
「ああ。」
二人は短く頷き合う。
その時だった。
シュッ。
黒い影が屋上から飛び降りる。
闇風だった。
肩へ毒影の短剣を担ぎ、不敵に笑う。
「待たせた。」
「グラディウスは?」
青真が聞く。
「終わった。」
それだけだった。
余計な説明は必要ない。
そこへ別方向から足音が響く。
「青真ー!」
アルナだった。
その後ろからメグも歩いてくる。
アルナは弓を肩へ掛けたまま笑った。
「こっちも片付いたわ!」
メグも魔導之杖を抱え、小さく微笑む。
「予定通り。」
「良かった。」
青真も自然と笑みを浮かべる。
そして。
最後に静かな足音。
カレンだった。
隣にはルシウス。
二人とも傷はある。
だが歩みはしっかりしていた。
「お待たせしました。」
カレンが頭を下げる。
ルシウスは聖剣を鞘に収め、小さく笑う。
「全員無事ですね。」
これで揃った。
百華繚乱。
蓮。
ルシウス。
七人が静かに並ぶ。
夜風が吹き抜ける。
遠く。
赤黒い魔力を纏った東京タワーだけが夜空へ突き刺さっていた。
「あそこだ。」
青真が呟く。
銀河へ手を添える。
「魔王はあそこで待ってる。」
蓮も前を見る。
「ここからが本番だ。」
誰も異論はない。
七人は同時に駆け出した。
夜の東京。
崩壊した道路。
炎を上げる高層ビル。
割れたガラスが月明かりを反射し、街全体が静かに軋んでいる。
その途中。
各地では人類連合軍と魔王軍本隊が激突していた。
炎皇の業火が夜空を赤く染める。
水帝の激流が魔族を飲み込む。
剣聖の白刃が闇を裂き、数十体の魔族が同時に倒れた。
東京中が戦場だった。
人類史上最大の反撃。
その中心を、七人は一直線に駆け抜ける。
しかし。
「止まれ!」
全員が飛び退く。
ドゴォォン!!
巨大な戦斧が夜空を切り裂き、道路へ突き刺さる。
砕けたアスファルトが宙へ舞う。
その先。
重装甲の巨漢がゆっくりと歩み出る。
「潰す。」
自分で投げた戦斧を片手で引き抜き、肩へ担ぐ。
さらに。
屋上。
橋の中央。
高速道路。
高層ビル。
四方から巨大な魔力が姿を現した。
魔王軍幹部。
魔王へ続く最後の壁だった。
静寂は、一瞬だった。
重戦士が肩へ戦斧を担ぎ直し、低く笑う。
「ここから先は一歩も通さん。」
闇風は双短剣を回しながら鼻で笑う。
「だったら力尽くで通るだけだ。」
黒装束の魔族が口元を歪める。
「俺を無視する気か。」
「できるもんならやってみろ。」
二人の姿が同時に消えた。
次の瞬間。
キィン!!
短剣同士が夜空で激突する。
火花が散る。
しかし互いに一歩も譲らない。
その横では重戦士が巨大戦斧を振り上げた。
「潰れろ!」
轟音と共に戦斧が振り下ろされる。
メグは一歩後ろへ下がり、魔導之杖を構えた。
「アルナ!」
「分かってる!」
アルナは素早く横のビル外壁へ飛び移る。
重戦士の頭上を取るように駆け上がりながら弓を引き絞る。
夜風が髪を揺らした。
その頃。
高層ビル屋上。
スコープ越しにアルナを追う男が静かに息を止める。
アキュラシー・インターナショナAXMC。
照準がぴたりとアルナを捉えた。
「逃がさん。」
引き金へ指が掛かる。
パンッ!!
乾いた銃声が夜の東京へ響いた。
弾丸が一直線に夜空を裂く。
アルナは未来を読むように身体を捻る。
頬を掠めた弾丸が後方の看板を撃ち抜き、金属片が夜空へ飛び散った。
「痛った!速っ……!」
アルナはそのままビル屋上へ飛び乗る。
「今度はこっちの番よ!」
風を纏った矢が一直線に放たれた。
一方。
御茶ノ水聖橋。
橋の中央で向かい合う二人。
神田川の水面へ月明かりが揺れている。
女騎士が静かに剣を構えた。
「戦姫。」
「その名に相応しい実力、見せてもらいます。」
カレンも剣を構える。
「望むところです。」
夜風が二人の間を吹き抜けた。
次の瞬間。
二人は同時に地面を蹴る。
ガキィン!!
剣と剣が激突し、火花が橋の上へ散った。
その頃。
青真、蓮、ルシウス。
三人だけは止まることなく東京タワーへの道を走り続けていた。
背後では仲間達の戦闘音が夜空へ響いている。
それでも誰一人振り返らない。
仲間を信じているからだ。
蓮が小さく笑う。
「皆なら勝つ。」
青真も頷く。
「ああ。」
ルシウスは聖剣を静かに握り締めた。
「私達も急ぎましょう。」
三人は速度をさらに上げる。
夜の東京。
赤く照らされた東京タワーが、少しずつその姿を大きくしていった。
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