140話:反撃
「《暗黒波動砲》。」
真武解放した五人へ向け、魔王は右手を静かに掲げた。
次の瞬間。
ズドォォォォォォォォン!!
黒紫色の極太の奔流が一直線に放たれる。
「来る!」
青真の未来予知が即座に反応する。
「カレン、正面!」
「メグ、防御錬成!」
「アルナ、左から風で逸らせ!」
「闇風、右を抜けろ!」
一瞬。
四人が同時に動いた。
「はぁぁぁぁっ!!」
カレンが剣を地面へ突き立てる。
真武解放によって強化された魔力が全身を巡り、銀白色の闘気が身体を包み込む。
同時に。
「錬成障壁!」
メグが巨大な錬成陣を展開。
黄金色の障壁がカレンの前へ何重にも重なる。
さらに。
「風よ!」
アルナの烈風が横から吹き付け、暗黒波動砲の軌道を僅かに逸らした。
「そこだ。」
闇風は真正面ではなく側面へ回り込み、一瞬で魔王との距離を詰める。
ドゴォォォォォン!!
暗黒波動砲が錬成障壁へ激突した。
凄まじい衝撃。
床石が砕け、玉座の間全体へ黒い爆炎が広がる。
しかし。
障壁は砕けない。
「止めた!」
アルナが思わず声を上げる。
カレンは歯を食いしばりながら剣を押し込む。
「重い……!」
それでも。
真武解放した身体は一歩も退かなかった。
青真はその様子を見て小さく笑う。
「いいぞ!」
「そのまま押し返せ!」
「了解!」
メグがさらに魔力を注ぎ込む。
錬成陣が眩く輝き始める。
暗黒波動砲は徐々に押し返され、その勢いを失っていった。
やがて。
バシュゥゥゥ……
暗黒の奔流は霧散する。
静寂。
誰もが息を呑んだ。
「防いだ……。」
メグが呟く。
魔王は静かに五人を見渡した。
「なるほど。」
「真武解放。」
「それほどまでに人類を高めるか。」
その声には驚きよりも、どこか満足したような響きがあった。
青真は銀河を構え直す。
七振りへ分離した銀河が一斉に魔王へ襲い掛かる。
「行け!」
青白い閃光。
闇風も同時に飛び出した。
雷のような速度で死角を取る。
カレンは真正面から斬り込み、魔王の注意を引き付ける。
アルナの矢が上空から降り注ぎ、メグの錬成魔法が退路を塞ぐ。
百華繚乱。
真武解放。
完成された連携。
魔王は初めて守勢へ回る。
銀河を躱す。
闇風の短剣を受け流す。
カレンの連撃を弾く。
アルナの矢を撃ち落とす。
だが。
「遅い!」
青真の未来予知が魔王の次の動きを捉えていた。
銀河七刀が全方向から交差する。
ガガガガガガガッ!!
魔王の外套が初めて裂ける。
肩口から赤黒い血が一筋流れ落ちた。
「入った!」
アルナが叫ぶ。
闇風も小さく笑う。
「押してる。」
カレンは魔王へさらに踏み込む。
「まだです!」
「畳み掛けます!」
魔王は流れ落ちる血を指先で拭う。
その赤黒い血を見つめながら、小さく笑った。
「面白い。」
「ようやく。」
「戦いになった。」
その赤い瞳が、静かに妖しく輝いた。
その右手がゆっくりと持ち上がった。
黒紫色の魔力が一気に収束していく。
「また来る!」
アルナが叫ぶ。
「《暗黒波動砲》。」
ズドォォォォォォォォン!!
先程以上の規模を誇る暗黒の奔流が百華繚乱へ襲い掛かる。
「青真!」
メグが叫ぶ。
しかし青真は一歩も動かなかった。
「……なるほど。」
口元が不敵に歪む。
銀河を背中へ戻し、右手を前へ突き出す。
無数の光球が周囲へ現れた。
一つ。
二つ。
五つ。
十。
二十。
数え切れないほどのマナショット。
アルナが目を見開く。
「全部撃つ気!?」
「違う。」
メグがすぐに気付く。
「あれ……。」
「集めてる!」
無数のマナショットが高速で一つへ重なっていく。
白蒼色の巨大な光球。
凄まじい魔力密度。
空気そのものが震え始めた。
青真はニヤリと笑う。
「お返しだ。」
「《収束魔力砲》!!」
ドォォォォォォォォォン!!
白蒼色の極太の光線が放たれる。
暗黒対蒼白。
二つの極大魔法が真正面から激突した。
衝撃波。
爆音。
玉座の間が激しく揺れる。
「押せぇぇぇぇぇ!!」
青真がさらに魔力を注ぎ込む。
真武解放によって強化された魔力が光線へ流れ込み、その威力がさらに跳ね上がる。
バキィィィン!!
暗黒波動砲が徐々に押し返され始めた。
「押してる!」
アルナが歓声を上げる。
「今だ!」
闇風が飛び出した。
爆煙へ紛れ、一気に魔王の側面を狙う。
しかし。
魔王の姿が消えた。
「!」
闇風の短剣は空を切る。
「《空間転移》!」
メグが叫ぶ。
魔王は既に青真の真後ろに立っていた。
「遅い。」
漆黒の拳。
「青真!」
カレンが飛び込む。
ギィィィィン!!
銀河が拳を受け止める。
凄まじい衝撃。
青真は数メートル押し込まれる。
「ぐっ!」
それでも倒れない。
「そこ!」
未来予知。
銀河七刀が一斉に魔王へ襲い掛かる。
魔王は再び転移。
「また!」
アルナが矢を放つ。
だが。
転移。
闇風が先回り。
転移。
カレンが斬る。
転移。
メグが錬成障壁を展開。
転移。
百華繚乱の連携を嘲笑うように、魔王は空間を自在に飛び回る。
「厄介ね……。」
アルナが舌打ちする。
「位置を固定できない。」
メグも解析を続ける。
青真だけは静かに魔王を見続けていた。
(見えた。)
(転移前。)
(必ず魔力が一点へ集まる。)
(つまり。)
(着地点は完全ランダムじゃない。)
青真は小さく笑う。
魔王もまた笑みを浮かべた。
「流石だ。」
「攻略者。」
「ならば。」
「この先も読んでみせろ。」
黒紫色の魔力が再び魔王の全身を包み込んでいく。
時空そのものが、不気味に揺れ始めた。
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