第138話:SS級
ガギィィィン!!
銀河と《終焉》が激しくぶつかり合う。
火花が飛び散り、玉座の間へ甲高い金属音が響き渡った。
現在のラグナロクは槍形態。
長大な黒槍から放たれる突きは、一撃一撃が必殺の威力を秘めている。
「速い!」
青真は未来予知で数秒先を見ながら、紙一重で槍を躱す。
その横をカレンが駆け抜けた。
「はあっ!」
鋭い連撃。
しかし魔王は槍を回転させるだけで全て受け流してしまう。
「軽い。」
魔王は静かに呟く。
次の瞬間。
槍が唸る。
ブォンッ!!
横薙ぎ。
百華繚乱全員が一斉に飛び退いた。
床石が粉々に砕け散る。
「これ当たったら即死ね。」
アルナが冷や汗を流す。
「メグ!」
「援護します!」
黄金色の錬成陣が展開される。
無数の雷槍が魔王へ降り注ぐ。
だが。
魔王は槍を一度振るっただけだった。
ゴォッ!!
黒い衝撃波が雷槍をまとめて吹き飛ばす。
「魔法まで……!」
メグが目を見開く。
「青真!」
「見えてる!」
青真は銀河を七振りへ分離。
四方から同時攻撃を仕掛ける。
だが魔王は一歩も動かない。
槍を最小限だけ動かし、七本全てを正確に弾き返した。
「ちっ。」
青真は舌打ちする。
(防御効率がおかしい。)
(全部最短距離で弾いてる。)
闇風が死角へ潜り込む。
毒影の短剣。
首筋へ一直線。
しかし。
「甘い。」
魔王は槍の石突きを後方へ突き出した。
ガンッ!!
闇風は短剣で受け止めるが、そのまま数メートル吹き飛ばされる。
「ぐっ……!」
「闇風!」
アルナが風魔法で体勢を支えた。
闇風は静かに立ち上がる。
「問題ない。」
「だが近寄らせてもらえない。」
カレンも一旦距離を取る。
「私でも懐へ入れません。」
青真は未来予知を維持したまま、魔王だけを見つめていた。
(……違和感。)
(この武器。)
(変形武器なのに。)
(攻撃が繋がり過ぎてる。)
再び槍が突き出される。
三連突き。
未来予知通り。
青真は全て回避する。
しかし。
四発目。
「!」
予測より半拍遅れて飛んできた。
ギィン!!
咄嗟に銀河で受け止める。
そのまま吹き飛ばされる。
「青真!」
メグが叫ぶ。
青真は空中で一回転しながら着地した。
「なるほど……。」
その目は笑っていた。
魔王が僅かに眉を動かす。
「何がおかしい。」
青真は銀河を肩へ担ぐ。
「いや。」
「面白くなってきた。」
魔王は槍を静かに構え直す。
「ほう。貴様。」
「まだ余裕があるか。」
「余裕じゃない。」
青真は首を横へ振る。
「攻略法が見え始めただけだ。」
闇風が横へ並ぶ。
「何か分かったのか。」
青真は《終焉》だけを見つめながら答えた。
「まだ確証じゃない。」
「でも。」
「変形には法則がある。」
その瞬間。
魔王がゆっくりと槍を持ち上げた。
黒紫色の魔力が刀身を包み込む。
「来る!」
百華繚乱全員が身構える。
《終焉》が再び姿を変え始めた――。
黒紫色の魔力が《終焉》を包み込む。
長大な黒槍だった刀身が音を立てて縮み始めた。
柄が二つに割れ、そこから黒い鎖が伸びる。
先端には三日月状の巨大な刃。
「鎖鎌……!」
アルナが息を呑む。
「距離を取って!」
カレンが叫ぶ。
しかし、その声よりも早く。
ブォォン!!
黒い鎖が広間を薙ぎ払う。
闇風は低く身を伏せ、青真は未来予知で跳躍する。
アルナは風魔法で後方へ飛び退き、メグへ迫る刃をカレンが剣で受け止めた。
「メグさん!」
「ありがとう!」
その隙を逃さずアルナが矢を放つ。
しかし魔王は鎖を操り、全ての矢を弾き落とした。
「近距離も中距離も封じられる……!」
闇風が小さく舌打ちする。
青真は魔王から視線を外さない。
(やっぱりだ。)
(見えてきた。)
鎖鎌が戻る、その一瞬。
「止まった。」
青真が呟く。
「変形する直前、右手がほんの僅かに止まる。」
闇風も頷いた。
「確かに見えた。」
「変形には必ず切り替え動作がある。」
「そこが唯一の隙だ。」
魔王は僅かに目を細める。
「武器ではなく、仕様を見ているか。」
「攻略だからな。」
青真は当然のように笑う。
「武器を攻略するんじゃない。」
「武器の仕様を攻略する。」
その瞬間。
《終焉》が再び黒い魔力を放つ。
鎖が縮み、刃が巨大化していく。
一本だった柄は太く伸び――
巨大な黒い大剣へ変貌した。
「大剣形態!」
カレンが構え直す。
魔王はその大剣を片手で軽々と持ち上げた。
「終わりだ。」
ズォォォォン!!
漆黒の斬撃が玉座の間を埋め尽くす。
「散開!」
百華繚乱は全員同時に回避を試みる。
しかし衝撃波だけで吹き飛ばされた。
床を転がる青真。
柱へ叩き付けられる闇風。
風魔法で受け身を取るアルナ。
魔法障壁で耐えるメグ。
剣を床へ突き立て踏み止まるカレン。
それでも全員が押されていた。
静まり返る広間。
青真はゆっくり立ち上がり、服の砂埃を払う。
「……S級が五人も揃って押せないってどういうことよ。」
魔王は当然のように答える。
「当然だ。」
「我は人類が定めるところのSS級だからな。」
青真は一瞬固まった。
「……そうなの!?」
四人が一斉に振り向く。
「「「「知らなかったの!?」」」」
アルナは思わず頭を抱える。
「魔王なんだからそのくらい分かるでしょ!」
メグも呆れ顔だ。
「そこ驚くところじゃないから!てかギルドで言ってたじゃない!」
闇風は肩を竦める。
「攻略以前の問題だろ。」
カレンも苦笑した。
「青真さんらしいですが……。」
魔王は深くため息を吐く。
「……貴様ら。」
「戦闘中だぞ。」
「あ、そうだった。」
青真は照れ笑いしながら銀河を構え直す。
「まあいい。」
「SS級だろうが何だろうが。」
「攻略できるなら問題ない。」
その目が再び鋭くなる。
「お前の攻略法は、もう見え始めてる。」
魔王の口元が僅かに吊り上がった。
「ならば見せてみろ。」
「我を。」
「どこまで攻略できるかを。」
二人の視線が交差する。
第一形態。
ラグナロク。
そしてSS級の魔王。
百華繚乱の本当の攻略は、ここから始まる。
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