表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
137/152

第137話:魔王討伐RTA

巨大な黒い扉の前。

百華繚乱の五人は静かに武器を構えていた。

扉の向こうには魔王。

世界最強の存在。


だが青真だけは、どこか楽しそうな表情を浮かべている。

「それじゃ、作戦確認。」

銀河を肩へ担ぎながら青真が口を開く。

「今回だけは開幕から全力。」

「相手に考える時間を一秒も与えない。」


アルナが首を傾げた。

「それって普通じゃない?」

「違う。」

青真は即答する。


「普通は様子を見る。」

「能力を見る。」

「攻撃を見切る。」

「でも今回は全部省略。」


メグが嫌な予感しかしないという顔をする。

「……また何か変なこと考えてる。」

青真はニヤリと笑った。

「せっかくのラスボスだ。」

「だったら。」

「最初から攻略する。」


闇風は腕を組みながらため息を吐く。

「嫌な予感しかしない。」

カレンも苦笑した。

「青真、その笑い方は危険です。」

「褒め言葉として受け取っとく。」

青真は銀河を鞘へ戻す。


「メグ。」

「例のやつ頼む。」

「はいはい。」

メグは魔導之杖を掲げ、大きな錬成陣を展開した。


黄金色の魔法陣が床いっぱいへ広がる。

無数の岩塊が集まり始め、巨大な人型を形作っていく。

数秒後。


全高四メートルほどの《大型魔人形(ゴーレム)》が完成した。

アルナが目を丸くする。

「え?」

「何これ?」

「今回の主役。」


青真が当然のように答える。

ゴーレムはゆっくりと両腕を前へ差し出した。

青真はその右腕へ飛び乗る。

続いてカレンも左腕へ。

「……?」

アルナはますます混乱した。


「何してるの?」


青真は真顔で答える。

「投石。」

メグが即座に突っ込む。


「人間でしょ!」

「人間だけど。」

「だけどじゃない!」


アルナは思わず吹き出した。

「いやいやいや!」

「そんな攻略法ある!?」


「ある。」

青真は胸を張る。

「ボス戦開幕は距離を詰める時間が一番もったいない。」

「だったら飛べばいい。」

闇風は額へ手を当てる。


「理屈は分かる。」

「分かるのか。」

「だが普通はやらない。」

「だから奇襲になる。」


青真は満足そうに頷いた。

「攻略は常識を疑うところから始まる。」


カレンも静かに頷く。

「確かに。」

「最短距離ではあります。」

「カレンまで!」

メグが頭を抱える。

青真は笑いながら指を一本立てた。


「ポイントは一つ。」

「魔王に自己紹介させない。」

「え?」

アルナが目を瞬かせる。

「絶対言うぞ。」


「『よくここまで来た勇者達よ』とか。」

「『待っていた』とか。」

「『我は魔王』とか。」

「全部カット。」

「喋る暇を与えない。」


闇風は静かに笑った。

「魔王が気の毒になってきた。」

「ラスボスにもテンポは大事だからな。」

青真はゴーレムの腕へしゃがみ込み、前方だけを見据える。


「闇風。」

「潜伏。」

「了解。」

闇風の姿が空気へ溶けるように消えた。


「アルナ。」

「開幕から援護。」

「うん!」

アルナは既に三本の矢を番えている。


「メグ。」

「扉を開けたら、そのまま魔法。」


「分かった。」

「ゴーレム。」


メグが命令すると、大型ゴーレムがゆっくり腰を落とした。

投擲姿勢。

青真は満足そうに頷く。


「よし。」

「準備完了。」

巨大な黒い扉を前に。


百華繚乱は静かに息を整えた。

世界最強との決戦。

その幕開けは――

誰も想像しない形で始まろうとしていた。


ギギギギギ……

重厚な黒い扉がゆっくりと開いていく。

その先に広がっていたのは、巨大な玉座の間。


黒曜石で築かれた広間の最奥。

漆黒の玉座へ、一人の男が静かに腰掛けていた。

黒い外套。

禍々しい王冠。


そして玉座の脇へ立て掛けられた、異様な存在感を放つ魔神器・《終焉ラグナロク》。


魔王はゆっくりと目を開く。

「よくここまで来――」


「投げろォォォォ!!」

青真の叫びが玉座の間へ響いた。


「……は?」

魔王の思考が止まる。


次の瞬間。

ゴォッ!!

大型魔人形が全力で腕を振り抜いた。


右腕から青真。

左腕からカレン。

二人が砲弾のような勢いで射出される。

「何っ!?」

魔王は反射的に立ち上がる。


その一瞬の隙。

アルナの矢が飛ぶ。

風を纏った三本の矢が一直線に魔王へ迫る。


「メグ!」

「了解!」

黄金色の錬成陣が展開される。

炎。

氷。

雷。


三属性の魔法が一斉に炸裂した。

轟音。

広間全体が激しく揺れる。

そして。


誰にも気付かれないまま。

闇風の姿は既に消えていた。


「甘い!」

青真は空中で銀河を抜く。

七本へ分離。

七方向から同時攻撃。


カレンも魔王へ一直線に飛び込んだ。

「はあああっ!」

鋭い斬撃。

しかし。


魔王はラグナロクを掴むより早く、身体を半歩だけ捻る。

ギィィン!!

カレンの剣が肩を掠める。

同時に七本の銀河を拳で弾き返した。


「グッ。貴様ら!」

その瞬間。

背後。

闇風が現れる。

毒影の短剣。


首筋への一撃。

しかし。

ガキィン!!


魔王は振り向きもせず肘で受け止めた。

「っ!」

闇風は即座に距離を取る。


「青真!」

「分かってる!」

百華繚乱は一斉に後退する。

魔王はゆっくりとラグナロクへ手を掛けた。


「開幕奇襲。」

「悪くない。」

静かな声。


次の瞬間。


終焉(ラグナロク)》が黒紫色の魔力を放つ。

ズォォォ……

巨大な刀身がゆっくりと形を変え始める。

「変形……!」


青真の目が鋭くなる。


大剣。

いや。

違う。

刀身が縮む。

柄が伸びる。


刃先が二股へ割れた。


「槍……!」


巨大な黒槍。

第一形態。


終焉(ラグナロク)》第一変形。


魔王は軽く槍を回す。


ブォンッ!!

風圧だけで床石が砕け散った。


「魔神器・《終焉(ラグナロク)》。」


青真はその姿を見つめながら、小さく笑う。

「なるほど。」

「まずは武器の性能確認って訳か。」


魔王は槍を肩へ担ぐ。

「来い。」

「勇者よ。」


その一言。


青真も銀河を構え直した。

「みんな。」

「予定通り。」

「まずは《終焉(ラグナロク)》を攻略する。」


闇風が静かに頷く。

「了解。」

カレンも剣を構える。

「武器を見切ります。」

アルナは再び矢を番えた。

「援護は任せて。」

メグは魔導之杖を握り直す。

「いつでも行けます。」

青真は銀河を握り締め、不敵に笑う。

「攻略開始だ。」


魔王と百華繚乱。

世界の命運を懸けた戦いは、ここから本当の幕を開けた。


読んでいただきありがとうございました!もし面白いと思っていただけたら、ブクマや評価で応援してもらえると励みになりま

す!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ