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第130話:封じられた未来

ガキィィィン!!

銀河と漆黒の長剣が激しくぶつかり合う。

火花が闘技場へ散り、重い金属音が何度も反響した。


青真は未来予知を発動しながら、一歩も退かずアスモードと剣を交える。

一秒先。

二秒先。

映し出される未来をなぞるように銀河を振るい、アスモードの斬撃を紙一重で受け流していく。


「……。」

アスモードは一言も喋らない。

ただ無駄のない剣筋だけを繰り返す。

斬る。

受ける。

流す。


その全てが洗練され切っていた。

「速い……!」

青真は小さく息を吐く。

未来予知がなければ、今の一撃だけでも反応できなかった。


それほどまでにアスモードの剣は鋭い。

しかし。

「こっちも行くぞ!」

銀河へ魔力を流し込む。


青白い光が刀身を包み込み、一振りだった魔剣は二振り、三振りと分裂していく。

やがて七振り。

七本の銀河が青真の周囲を高速で旋回し始めた。




七本の刃が一斉に飛び出す。

正面。

左右。

背後。

上空。


死角という死角を埋め尽くすように襲い掛かった。

普通なら回避不可能。

防御すらできない包囲攻撃。


だが。

カキィィン!!

ガガガガガッ!!

アスモードは一歩も動かない。


長剣一本だけで七本全てを正確に弾き返していく。

最小限の動き。

最短距離。


まるで七本の軌道が最初から見えているかのようだった。

「何っ……!」

青真は目を見開く。


銀河七刀を真正面から捌かれたのは初めてだった。

その隙を逃さず、アスモードが踏み込む。

漆黒の長剣が一直線に喉元を狙う。

未来予知が軌道を映す。


青真は身体を捻り、その一撃を紙一重で回避した。

同時に右手を突き出す。


「《属性付与魔力弾(エンチャントマナショット)》!」

青白い光弾が三つへ分裂する。

さらに水属性を付与。


氷の粒子を纏った魔弾が一直線にアスモードへ襲い掛かった。

しかし。


アスモードは剣を軽く振る。

シュンッ。

たった一閃。

三発のマナショットは全て真っ二つとなり、闘技場の床へ霧散した。


「嘘だろ……。」

青真は思わず呟く。

属性付与魔力弾(エンチャントマナショット)》は今まで数多くの強敵を倒してきた主力技。


それをここまで簡単に切り落とされたことは一度もない。


ならば。


「これなら!」


銀河へ再び魔力を集中させる。

刀身が淡い蒼色へ染まり、周囲の空気が一気に冷え込んだ。


「氷属性魔法――」

銀河を振るう。

「《氷刃連牙》!」


無数の氷刃が空中へ生成され、アスモードへ降り注ぐ。

氷の刃。

銀河七刀。

魔力弾(マナショット)》。


三方向から同時攻撃。

青真が持つ技を惜しみなく重ねた連携だった。


それでも。

アスモードの表情は変わらない。

長剣が静かに舞う。


一太刀。

二太刀。

三太刀。


氷刃が砕ける。

銀河が弾かれる。

マナショットが切り裂かれる。


全て。


完璧だった。


攻撃が終わる頃には、アスモードは最初に立っていた場所から半歩しか動いていなかった。


「……終わりか。」

低い声が闘技場へ響く。

青真は銀河を握り直す。

額を伝う汗が床へ落ちた。


(強い。今まで戦ってきた敵とは格が違う。)


それでも未来予知がある限り、まだ戦える。

そう考えた、その時だった。

アスモードの黄金色の瞳が、青真を真っ直ぐ見据えた。


アスモードは剣を下ろさない。


その黄金色の瞳だけが、静かに青真を観察していた。


「面白い。」


小さく呟く。


「初撃。」

「二撃目。」

「七刀。」

「魔法。」

「全て最適解。」


「偶然ではないな。」


青真は何も答えない。

銀河を構えたまま、次の未来を見続ける。

未来予知。

映し出される四秒先。


アスモードが踏み込む。

横薙ぎ。

返す刀。

突き。


その全てを見切り、青真は未来通りに身体を動かした。

ガキィィィン!!


銀河と黒剣が再びぶつかる。

未来を知っている青真。

それでも。


アスモードは決定打を許さない。

「まだだ!」


青真は銀河を再び七振りへ分離する。

七本の刃が高速で旋回し、一斉にアスモードへ襲い掛かった。


さらに右手を突き出す。

「《属性付与魔力弾(エンチャントマナショット)》!」


光弾が四つへ分裂。


水属性を付与した紅い魔弾が、七刀の隙間を縫うように飛び出していく。

剣と魔法。

完全な同時攻撃。


しかし。

アスモードは静かに剣を振る。

ガガガガガッ!!


七振りの銀河が次々と弾き飛ばされる。

続いてマナショットも、一発残らず切り裂かれた。


「くっ!」

青真はすぐに銀河を回収し、再び構え直す。


アスモードは初めて小さく頷いた。

「なるほど。」

「理解した。」

その一言に、青真は眉をひそめる。


「何をだ。」

アスモードは剣先をゆっくり下ろした。

「貴様の戦い方だ。」

「常に最善を選ぶ。」

「迷いがない。」

「いや。」

「迷えない。」


「……。」

青真の表情が僅かに変わる。

アスモードは続けた。

「貴様は未来を見ている。」


闘技場へ静寂が訪れる。

青真は無言のまま銀河を握り締めた。

「沈黙か。」

「それで十分だ。」

アスモードは左手をゆっくりと前へ突き出す。


黒い魔力が掌へ集まり始めた。

複雑な魔法陣が何重にも展開される。

青真は未来予知を発動する。


四秒先。

魔法陣。

黒い鎖。

自分へ伸びる光景。


「魔法……!」

青真は踏み込もうとする。

だが。


アスモードの方が僅かに早かった。

「封印魔法。」

「《特技封縛スキルバインド》。」

黒い魔法陣から無数の鎖が飛び出す。

蛇のようにうねりながら青真へ絡み付いた。


「なっ!」

銀河で斬る。

一本。

二本。

鎖は切れる。


しかし次の瞬間には新たな鎖が生まれ、青真の身体を包み込んでいく。

黒い光が胸元へ吸い込まれた。


ズキン――。


頭へ鋭い痛みが走る。

青真は反射的に未来予知を発動する。

いつものように未来を見ようとした。


しかし。

「……え?」

何も映らない。

一秒先も。

二秒先も。


未来そのものが消えていた。

青真は思わず目を見開く。

「未来が……見えない。」


その瞬間。

視界の端へ青い文字が浮かび上がる。


```

《未来予知》

状態:封印

```


「そんな……。」

青真は思わず息を呑む。

アスモードは静かに長剣を構え直した。

「貴様最大の武器。」

「まずは、それを奪った。」


「未来が見えぬ貴様は。」

「どこまで戦える。」

漆黒の剣先が静かに青真へ向けられる。

青真は銀河を握り直した。

未来は見えない。


頼れるのは、自分の剣だけだった。

闘技場へ再び静寂が訪れる。

そして。

アスモードが静かに地面を蹴った。


読んでいただきありがとうございました!もし面白いと思っていただけたら、ブクマや評価で応援してもらえると励みになりま

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