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第13話:レベリング


「……悔しいけれど、今のままじゃあの怪物には勝てないわ」


屋上で一条さんが悔しげに拳を握りしめる。あの第四師団長の『重りパージ』による規格外の暴虐は、俺たちのハメ技を力づくで瓦解させた。

だが、俺は泥をすすったような空気の中で、不敵に笑ってみせた。


「あいつのチートをハメ殺すには、今の俺たちのスペックじゃ足りない。……これより、一週間限定のレベリングを開始する」


俺の言葉に、3人の目が変わった。

4人はそれぞれの地力を極限まで引き上げるため、一時的にバラバラの修行期間へと突入する。


俺(帰宅部)のレベリングは、自室の暗闇から始まった。

新スキル『予測演算タクティカル・フォーサイト』の獲得。前回の戦闘映像をフレーム単位で徹底的に分析し、何千回もの脳内シミュレーションを繰り返す。限界を超えて研ぎ澄まされた脳は、敵の初動、重心移動、視線から「戦況の数秒先」をロジックで超高速計算し、未来の盤面を視覚的に捉える技術へと進化した。


一方、一条さん(剣道部)は道場へと殴り込んでいた。

体得するのは『神速のモーションキャンセル』。全国レベルの部員たちを相手に「1対多数」の猛特訓を重ね、大振りした際の隙(フレーム硬直)を極限まで削ぎ落とす。最短フレームで次の連撃へと移行する、無駄のないコンパクトな身のこなしを完全にマスターした。


闇風(サバゲー同好会)は、さらに過酷な縛りプレイに挑んでいた。

『絶対回避(無敵フレーム)』の習得。エアガンを持たずゴムナイフ1本で乱入し、四方八方から飛び交うBB弾の射線を読み切る。紙一重ですべてを回避しながら全員を背後から制圧し、敵の範囲攻撃すら無効化して懐に飛び込むステップを体得した。


そしてメグ(サイエンス部)は、放課後の実験室の機材をジャックしていた。

『空からのハッキング&ドローン戦術』の構築。市販のドローンをAI搭載型へ魔改造し、俺の指示と連動して頭上からピンポイントでデバフを投下する自動追尾技術と、敵の連携を強制遮断する通信ジャックコードを完成させた。


一週間後。約束の場所である、いつもの学校の屋上。


「……遅いですよ、サブリーダー」


ふっと背後から声がして心臓が跳ね上がる。振り返ると、いつの間にか気配を完全に消した闇風が立っていた。歩く動作の中に『無敵フレーム』が組み込まれているかのような、不気味なほどの滑らかさだ。


ガラッと扉が開き、一条さんが姿を現す。その佇まいは以前よりさらに鋭く、ただ立っているだけで一切の隙(硬直)が見当たらない。


「待たせたわね。私の『キャンセル技』、早く試したくて堪らないの」

「ふふん、私も最高のアップデートを完了したわよ?」


メグが不敵な笑みで、新型の飛行型ガジェットを掲げた。


一周回り、圧倒的な強者感を漂わせた3人が揃う。これこそが、俺がネトゲ時代に憧れ、今現実に作り上げた最強の「固定組ギルド」だ。


全員の進化を確認した俺は、ホワイトボードの作戦図をバシッと叩いた。


「――よし、全員レベルアップは完了だな。これより、イベント『第四師団長・完全完封戦』を開始する。……今度は1ミリも動かさずにハメ殺すぞ」

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