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最強ゲーマーの《多世界攻略録(マルチバースアーカイブ)》  作者: 紅柳
第四部融合世界編 第一編 魔大陸侵攻編
126/150

第126話:矜持

黒い魔力が戦場を覆う。


ゼクトは胸当てへ刻まれた傷へ静かに視線を落とした。

百華繚乱が初めて幹部へ届かせた一撃。

その事実を否定することなく、小さく頷く。


「見事だ。」


「幹部である私へ傷を付けた。」


「その実力には敬意を払おう。」


黒剣をゆっくりと構え直す。


「ならば。」


「騎士として全力で応える。」


黒い魔力が一気に噴き上がる。

地面が砕け、空気そのものが震え始める。

青真は未来予知を発動した。

脳裏へ映る未来は、先程までとは全く違っていた。


「全員気を付けろ!」


「来る!」


その瞬間。


ゼクトの姿が完全に消えた。


「魔法付与――加速。」


未来予知が見えていても追い付けない。

黒剣は一瞬でカレンの目前へ現れ、そのまま聖盾へ叩き付けられた。


ガァァァン!!


衝撃が戦場全体へ響く。

カレンの身体が数メートル押し込まれ、足元の岩盤が砕け散る。

それでも彼女は盾を離さなかった。


「まだ……!」


ゼクトは静かに呟く。


「強い。」


「だが足りない。」


再び黒剣へ魔力が流れ込む。


「魔法付与――重力。」


二撃目。


玄盾武が大きく軋む。

カレンの膝が地面へ沈み、腕が僅かに震え始める。

百華繚乱の誰よりも、防御へ特化した彼女でさえ押されていた。


「アルナ!」


風を纏った矢が次々と放たれる。

ゼクトは身体を動かさない。

黒剣だけで全ての矢を叩き落とした。


「メグ!」


巨大な錬成陣が足元へ展開される。

鋼鎖が地中から飛び出し、ゼクトの足を拘束する。

しかし黒剣が一閃。


鎖は一瞬で断ち切られた。


「闇風!」


死角から黒雷閃。


闇風が背後へ回り込み、毒影の短剣を首筋へ走らせる。

しかしゼクトは振り向くことなく黒剣を背中へ回し、その一撃を受け止めた。


「見えている。」


闇風は舌打ちしながら距離を取る。

ここまで完璧に連携しても、一度も決定打にならない。

ゼクトはまるで百華繚乱全員の動きを読んでいるかのようだった。


青真は銀河を握り締めたまま、未来だけを見続けていた。


一秒先。

二秒先。

三秒先。

未来が何度も書き換わる。

勝てない未来。


青真は銀河を強く握り締める。


「――《数秒先の真実プリセカンドトゥルース》。」


その瞬間。


世界が静止したように感じた。


四秒先の未来が、断片ではなく一本の映像となって脳裏へ流れ込む。

ゼクトの踏み込み。

魔法付与の順番。

黒剣の軌道。

カレンの防御。

アルナの射線。

闇風の潜入経路。

全てが鮮明に映し出されていく。


「ぐっ……!」


激しい頭痛が青真を襲う。


視界が揺れ、鼻先から血が一筋流れ落ちる。

それでも青真は歯を食いしばり、映像を最後まで見続けた。

そして能力を解除すると、小さく笑う。


「見えた。」


「勝てる。」


青真は仲間達を見渡した。


「カレン!」


「次の一撃を受け止めて!」


「アルナ、右肩!」


「闇風、左後方!」


「メグ、俺の合図で拘束!」


四人は迷わず頷いた。


「了解!」


ゼクトは黒剣を静かに構える。


「まだ抗うか。」


「ならば、その覚悟ごと断つ。」


「魔法付与――加速。」


黒い雷が刀身を駆け抜ける。


未来で見た通り。


ゼクトは一瞬でカレンの目前へ現れ、渾身の一撃を振り下ろした。


ガァァァン!!


玄盾武が激しく軋む。


凄まじい衝撃にカレンの膝が沈む。


それでも彼女は退かない。


「まだ……耐えます!」


その瞬間だった。


「今!」


青真の声が戦場へ響く。


アルナの風を纏った矢がゼクトの右肩を射抜く。


僅かに体勢が崩れる。


続いてメグの錬成陣が足元へ広がり、鋼鎖が黒剣ごとゼクトの腕へ巻き付いた。


「闇風!」


黒い影が背後から飛び出す。


毒影の短剣が鎧の隙間を正確に切り裂き、ゼクトの動きが一瞬だけ止まる。


「見事。」


ゼクトは小さく呟いた。


「だが――」


「遅い。」


黒剣へ再び魔力を流そうとした、その瞬間。


青真は既に踏み込んでいた。


「そこだ!」


銀河が青白く輝く。


青氷龍の力が刀身へ宿る。


「氷河斬!」


蒼白い斬撃が一直線に走る。


先程《数秒先の真実プリセカンドトゥルース》で見た、魔法付与直前――唯一防御が遅れる瞬間。


その一点だけを狙い澄ました一撃だった。


ズバァァァッ!!


蒼い斬撃が黒い鎧を深く切り裂く。


ゼクトは静かに目を見開き、そのまま膝をついた。

黒剣が地面へ突き刺さる。


「……見事だ。」

「先を読むだけではない。」

「掴み取ったか。」


ゼクトは青真を見上げ、小さく笑った。


「百華繚乱。」


「この先で待つ者達は……私より遥かに強い。」


「どうか、最後まで抗え。」


その言葉を残し、暗黒騎士ゼクトの身体は黒い粒子となって静かに消えていった。


戦場に静寂が訪れる。

しかし、それは束の間だった。

ゴゴゴゴゴ……

大地が不気味に震え始める。


無数の白骨の腕が地中から這い出し、辺り一面を埋め尽くしていく。

「これは……!」


メグが息を呑む。

黒いローブを纏った一人の男が、骸骨の杖を手にゆっくりと姿を現した。


その背後には、数え切れないほどのアンデッドの軍勢。

男は不気味な笑みを浮かべ、静かに杖を掲げる。


「歓迎しよう。」

「魔王軍幹部。」

死霊術師ネクロマンサー――モルドレイス。」


「さあ、生者達よ。」

「死者の軍勢と踊る時間だ。」


読んでいただきありがとうございました!もし面白いと思っていただけたら、ブクマや評価で応援してもらえると励みになりま

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