第124話:元七英雄
百華繚乱が軍団長達を突破した直後。
戦場には元七英雄を中心とした七人の十二英傑だけが残っていた。
五人の軍団長は百華繚乱の背中を睨み、そのまま追撃へ移ろうとする。
だが、その前へ七つの影が静かに立ちはだかった。
剣聖。
炎皇。
水帝。
風王。
賢者。
槍聖。
雷将。
人類最強と謳われた七人が横一列に並ぶ。
それだけで戦場の空気が一変した。
軍団長達も自然と足を止める。
「どけ。」
第一軍団長が剣聖を睨む。
「我らの任務は奴らの討伐だ。」
剣聖は静かに刀を抜き、切っ先を軍団長へ向けた。
「その任務は、ここで終わりだ。」
炎皇は豪快に笑う。
「若い連中が前へ進んだ。」
「だったら後ろは俺達が片付ける。」
水帝は三叉槍を肩へ担ぎ、小さく息を吐く。
「時間は掛けません。」
槍聖は長槍を軽く回した。
「久々の実戦だ。」
「腕が鈍っていなければいいが。」
その横で雷将は雷を纏わせた武器を構え、不敵に笑う。
「心配するな。」
第五軍団長が鼻で笑う。
「老いぼれ共が。」
「時代は終わった。」
その言葉に剣聖は表情一つ変えない。
「そうか。」
ドンッ!!
剣聖が一歩踏み込む。
その瞬間、姿が消えた。
第一軍団長が反応した時には、剣聖は既に背後へ立っていた。
静かに刀を振り抜く。
ズバァッ!!
第一軍団長の胸へ一本の斬線が走る。
遅れて鮮血が舞い、巨体はゆっくりと崩れ落ちた。
剣聖は刀を振るい、血を払うだけだった。
「一人。」
静かな声が戦場へ響く。
残る四人の軍団長の表情が変わる。
目の前にいるのは伝説ではない。
本物の英雄だった。
「次は俺だ!」
炎皇が炎剣を振り上げる。
第二軍団長も巨大な斧を構え、真正面から激突した。
二つの武器がぶつかった瞬間、爆炎が大地を飲み込む。
轟音が響き渡る。
だが、炎が晴れた時には勝負は終わっていた。
第二軍団長の斧は真っ二つに砕け、その身体もまた炎剣によって両断されていた。
炎皇は笑みを浮かべたまま、大剣を肩へ担ぎ直す。
「二人。」
その声と同時に、水帝、風王、賢者、槍聖、雷将も静かに前へ踏み出した。
軍団長達は武器を握り直す。
しかし、その差はあまりにも大きかった。
第三軍団長が水帝へ槍を突き出す。
鋭い連撃は空気を裂き、周囲の大地さえ抉っていく。
だが、水帝は半歩も退かなかった。
三叉槍を静かに構え、その全てを最小限の動きで受け流していく。
「終わりだ。」
その一言と共に槍が閃く。
蒼い水流が一直線に奔り、第三軍団長の胸を貫いた。
巨体はそのまま膝をつき、力なく倒れ込む。
水帝は静かに槍を払い、何事もなかったように立っていた。
第四軍団長は風王へ飛び掛かる。
全身へ魔力を纏い、一撃で押し潰そうとする。
風王は小さく息を吐き、右手を振った。
その瞬間、巨大な真空の刃が生まれ、軍団長を一瞬で飲み込む。
轟ッ!!
暴風が吹き抜ける。
風が止んだ時には、第四軍団長は既に地面へ倒れていた。
風王は静かに前髪を払い、何も言わず歩き出す。
第五軍団長は賢者へ突撃する。
「魔法使いから片付ける!」
怒号と共に大剣を振り下ろした。
しかし賢者は慌てる様子もなく、杖を軽く掲げる。
巨大な魔法陣が展開される。
次の瞬間。
眩い光が第五軍団長を包み込み、その姿は跡形もなく消え去った。
賢者は静かに杖を下ろす。
「これで終わりです。」
その頃。
槍聖は迫り来る魔王軍の精鋭部隊を相手にしていた。
長槍が円を描くたびに魔族兵が次々と吹き飛ぶ。
誰一人として間合いへ踏み込めない。
「近付けるものなら来い。」
その一言だけで、魔族達は足を止めた。
雷将もまた笑みを浮かべる。
武器へ纏わせた雷が激しく迸り、戦場を青白く照らした。
「遅い。」
雷鳴と共に一閃。
数十体の魔族兵が同時に吹き飛び、周囲は一瞬で静まり返る。
その圧倒的な力に、人類軍から歓声が湧き上がった。
「終わったな。」
炎皇が辺りを見回す。
五人の軍団長は全滅。
残っていた魔王軍も総崩れとなり、戦場から退いていく。
七人の英傑は静かに武器を収めた。
剣聖は百華繚乱が進んだ方角を見つめる。
その表情は以前よりも穏やかだった。
「あとは任せる。」
小さく呟き、踵を返す。
元七英雄は再び人類軍の前へ立ち、後方の戦線を守り始めた。
その頃、百華繚乱は魔王城へ続く黒い大地を駆け抜けていた。
突然、青真が足を止める。
未来予知が激しく反応した。
「……止まれ。」
四人も同時に立ち止まる。
目の前の空間がゆっくりと歪む。
黒い瘴気が渦を巻き、一人の男が姿を現した。
全身を漆黒の鎧で包み、腰には巨大な黒剣。
その男は静かに剣を抜き、黒い魔力を刀身へ纏わせる。
「魔法付与――闇。」
漆黒の刃が禍々しい輝きを放つ。
男は百華繚乱を見据え、静かに名乗った。
「魔王軍幹部。」
「暗黒騎士。」
「ここから先へは、一歩たりとも進ませない。」
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