第123話:突破
ズォォォォォ……
隊長達が倒れた直後。
戦場全体を覆うほどの重圧が魔大陸を震わせた。
先程までとは比較にならない魔力。
人類軍の誰もが思わず足を止める。
魔王軍の奥。
黒い瘴気を纏った五つの影が、ゆっくりと歩み出てきた。
第一軍団長。
第二軍団長。
第三軍団長。
第四軍団長。
第五軍団長。
五人が並んだ瞬間、空気そのものが張り詰める。
「隊長共がやられたか。」
第一軍団長が低く呟く。
「だが、ここから先へは進ません。」
第二軍団長が巨大な斧を肩へ担ぐ。
第三軍団長は槍を静かに構えた。
第四軍団長は漆黒の魔力を全身へ纏う。
第五軍団長は大剣を抜き放ち、人類軍を睨み付けた。
「魔王様の城へ辿り着きたければ。」
「まずは我らを越えてみろ。」
その言葉と同時に、五人の軍団長が一斉に魔力を解放する。
ドォォォン!!
衝撃波が戦場全体を駆け抜けた。
王立騎士団の一部が思わず後退する。
冒険者達も表情を強張らせた。
「これが……軍団長。」
アルナが息を呑む。
「隊長とは比べ物にならない。」
メグも静かに頷いた。
「魔力だけなら、A級ボスクラスだ。」
闇風は目を細める。
「正面突破は悪手だ。」
「足を止められる。」
その瞬間、青真の瞳が淡く輝いた。
未来予知。
数秒先の未来が脳裏へ映し出される。
軍団長達が百華繚乱を足止めし、その間に魔王軍本隊が包囲を完成させる未来。
青真は静かに息を吐いた。
「……なるほど。」
「そういうことか。」
銀河を握り直し、小さく笑う。
「みんな。」
「作戦変更だ。」
四人が一斉に青真を見る。
青真は軍団長達から視線を外さず、静かに告げた。
「倒す必要はない。」
「目的は魔王城へ辿り着くこと。」
「ここは突破する。」
その一言に、四人はすぐ理解した。
「突破する。」
青真の一言で、四人は迷うことなく頷いた。
未来予知が映し出した最短ルート。
その一本だけを信じ、百華繚乱は一斉に駆け出す。
「止めろ!」
第一軍団長が大剣を振り上げる。
凄まじい斬撃が大地を抉りながら迫る。
だが青真は未来予知で軌道を見切り、紙一重で躱した。
「氷獄牢。」
銀河を地面へ突き立てる。
瞬間。
第一軍団長の足元から巨大な氷柱が噴き上がった。
四方を分厚い氷壁が囲み、一瞬で巨大な氷牢が完成する。
軍団長はその場へ拘束された。
「小細工を!」
第二軍団長が百華繚乱へ飛び込む。
その前へアルナが躍り出る。
「風よ!」
暴風が一気に吹き荒れる。
軍団長の巨体が体勢を崩し、大きく横へ流された。
その隙へ。
「錬成。」
メグが魔導之杖を掲げる。
地面が大きく隆起し、巨大な岩壁が出現する。
さらに鋼の鎖が地中から飛び出し、第三軍団長の足へ絡み付いた。
「鬱陶しい!」
軍団長が鎖を引き千切ろうとした瞬間。
「そこです!」
カレンが盾を前へ突き出す。
眩い聖光が広がり、巨大な結界が軍団長達の進路を塞いだ。
四人の軍団長が同時に結界へ激突する。
轟音。
しかし、その一瞬で十分だった。
「黒雷閃。」
闇風の姿が消える。
黒い閃光が第五軍団長の眼前を駆け抜ける。
「っ!?」
一瞬で急所五箇所を斬られ感電し動けなくなる。
青真は銀河を天へ掲げる。
「氷魔槍雨。」
頭上へ巨大な蒼い魔法陣が展開される。
次の瞬間。
無数の氷の魔槍が豪雨のように降り注いだ。
軍団長達は防御へ回るしかない。
大地が凍り付き、視界は白く染まる。
「今だ!」
青真の号令と同時に、百華繚乱は軍団長達の間を一気に駆け抜ける。
「待て!」
「逃がさん!」
軍団長達が追撃しようとした、その時だった。
ドォン!!
五人の前へ、一人の男が静かに着地する。
剣聖。
その背後へ。
炎皇。
水帝。
風王。
賢者。
残る元七英雄の英傑達が並んだ。
剣聖は静かに剣を抜く。
「ここから先は。」
「俺達が相手だ。」
炎皇は豪快に笑った。
「ガキ共。」
「道は開いてやる。」
青真は一瞬だけ振り返る。
剣聖と目が合う。
「……行け。」
短いその一言。
青真は力強く頷いた。
「ありがとうございます!」
百華繚乱はそのまま魔王城へ向かって駆け出す。
後方では。
7人の英傑と軍団長。
新たな戦いの火蓋が切って落とされた。
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