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第116話:未来を斬る剣

青氷龍は静かに翼を広げた。

黄金色の瞳は青真だけを真っ直ぐ見据えている。

次の瞬間、神獣の魔力が一気に解放された。

凄まじい冷気が山全体を包み込み、吹雪は暴風雪へ変わる。


「まだ本気じゃなかったのか……。」


アルナが思わず息を呑む。

周囲の空気は一瞬で凍り付き、足元の雪までも氷へ変わっていく。

立っているだけでも体温が奪われていった。


「みんな、気を付けて!」


メグは魔導之杖を掲げる。

朱炎雀の魔力が全員を包み込み、身体へ温かな炎が宿った。

完全には防げない。

それでも凍える身体は僅かに軽くなる。


「助かる。」


青真は静かに頷く。

銀河を構え直し、未来予知を発動した。

数秒先の未来。

視界へ無数の未来が映し出される。


「来る!」


青氷龍は巨大な翼を羽ばたかせた。

無数の氷槍が空一面へ展開され、一斉に降り注ぐ。

まるで氷の雨だった。


「風よ!」


アルナは巨大な旋風を生み出す。

風が氷槍の軌道を乱し、カレンと闇風がその隙を縫って前へ飛び出した。

鋭い斬撃と短剣が青氷龍へ迫る。


しかし。


キィィィン!!


青い鱗は二人の攻撃を容易く受け止める。

その直後、青氷龍は前脚を振り下ろした。

衝撃だけで二人は後方へ吹き飛ばされる。


「ぐっ……!」


「まだ足りません!」


カレンはすぐに立ち上がる。

闇風も短剣を握り直し、再び構えた。

誰一人として諦めてはいない。


「青真!」


メグが叫ぶ。

青真は小さく頷いた。

右手へ魔力を集中させる。


無色の魔力弾が掌へ生まれる。

そこへ朱炎雀との戦いで解析し、自ら習得した炎属性を重ねていく。

紅蓮の炎が魔力弾を包み込み、鮮やかな赤へ染まった。


「エンチャント・マナショット!」


炎を纏った魔力弾が一直線に飛ぶ。

青氷龍の胸元へ直撃し、轟音と共に爆炎が巻き起こった。

神獣は大きく後退し、白い雪煙が周囲へ広がる。


「効いてる!」


アルナが声を上げる。

だが青真の表情は険しいままだった。

未来予知が映した結末。

この一撃だけでは勝てない。


「決定打が必要だ……。」


その時だった。


雪煙の中から、青氷龍が静かに姿を現す。

胸元には確かな傷が刻まれている。

それでも黄金色の瞳は揺らいでいなかった。


そして神獣は、ゆっくりと青真へ向かって歩き始めた。

その一歩一歩に、大地が低く震えていた。


青氷龍はゆっくりと青真の前で立ち止まった。

黄金色の双眸が真っ直ぐ青真を映し出す。

その圧倒的な威圧感に、空気そのものが震えていた。

次の瞬間、神獣は一直線に駆け出す。


「青真!」


アルナが叫ぶ。

カレンと闇風が飛び出そうとするが、青真は左手を上げて制した。

「大丈夫だ。」

静かな声だった。


未来予知。


無数の未来が脳裏へ流れ込む。

右へ避けても敗北。

左へ避けても敗北。

受けても敗北。

勝利へ繋がる未来は、たった一つしか存在しなかった。


「なら……。」


青真は銀河を静かに構える。

七振りへ分離させることも、大剣へ融合させることもしない。

ただ一本の剣として握り締める。

銀河が淡く輝き始めた。


「未来は見るものじゃない。」


青真は静かに息を吸う。

青氷龍は目前まで迫っていた。

巨大な爪が振り下ろされる、その瞬間――。


「切り開くものだ。」

「真武解放。」

銀河が振るわれる。


何もない空間へ向けた一閃。

仲間達には、そう見えた。

誰もが「外した」と思った、その刹那。


ザンッ!!


数秒後。

未来で青氷龍が辿り着くはずだった場所へ、斬撃が現実となって走る。

蒼い鱗が裂け、神獣の胸元へ深い一文字が刻まれた。


「グオオオオオッ!!」


青氷龍は大きく後退する。

黄金色の瞳が驚愕に揺れた。

未来を読んだだけではない。

未来そのものへ届く一撃だった。

(どうだ!防御不能、回避不能の未来予知で確定させた未来を銀河のなんでも斬る能力で斬る必殺技、「未来斬り」だ!)


青真は静かに銀河を下ろす。


青氷龍はしばらく青真を見つめていた。

やがて敵意を消し、小さく目を細める。


「見事だ。」


「未来を切り開く剣。」


「……その眼。」


「どこか、懐かしさを覚える。」


青真は首を傾げる。

その意味を尋ねようとした時、青氷龍は静かに首を振った。


「今はまだ語る時ではない。」


「いずれ、お前自身が答えへ辿り着くだろう。」


そう告げると、青氷龍の巨体は淡い蒼い光へ変わり始める。

無数の光の粒子は青真の前へ集まり、一つの蒼い宝玉となって銀河へ吸い込まれていった。


銀河は蒼い輝きを放つ。

刀身には氷を思わせる美しい紋様が浮かび上がり、冷気を纏い始める。


その瞬間、青真の脳裏へ新たな魔力の流れが刻まれた。


「氷属性……。」


炎に続く、第二の属性。


青真は静かに右手を掲げる。

掌へ生まれた魔力弾は、今度は澄み切った蒼い輝きを放っていた。


四神獣。


二柱目――青氷龍。


その力は、確かに百華繚乱へ受け継がれたのだった。


読んでいただきありがとうございました!もし面白いと思っていただけたら、ブクマや評価で応援してもらえると励みになりま

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