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第11話:チートのバグを突け

「……信じられない」


いつもの屋上。一条さんが、まだ少し震える手で自身の木刀を見つめていた。

あの圧倒的な格闘センスを誇る彼女が、一撃で弾き飛ばされたのだ。無理もない。闇風も脇腹をさすりながら、悔しそうに顔をしかめている。


「お兄様が、なぜあんな力を持っているのか、私にも分からないわ。ただの冷徹な生徒会長だと思っていたのに……」

「一条さん、お兄さんのことは一度置いておこう。今はそれより、あの第四師団長だ」


俺はいつものようにホワイトボードに第四師団長の似顔絵(大柄な男)を描き、その上にバツ印をつけた。


「まともに殴り合ったら、俺たちは100%全滅デッドエンドする。あいつのフィジカルは、ゲームで言えばレベル差がありすぎる『ボスキャラ』だ。おまけに――あいつはチートを使ってる」

「チート……?」

闇風が首をかしげる。


「ああ。第9話で、闇風のステルス(死角からの接近)が完全に看破されていただろ。まるで、最初から闇風の居場所が画面上に強調表示されているみたいに正確だった」

「確かに……あの一撃は、私の気配を完全に捉えていました」


そこで、メグがキーボードを叩き、工事現場周辺のネットワークログを画面に映し出した。


「サブリーダーの言う通りよ。解析した結果、第四師団長は、街の『防犯・監視カメラシステム』を完全に不正ハックしてる。あいつ、自分のスマホに街中のカメラ映像をリアルタイムで同期させて、こちらの動きを上空から『丸見え(ウォールハック)』状態にして戦ってたのよ」


「なるほどね……」

俺はニヤリと笑った。

理由が分かれば、それはもう無敵のチートじゃない。ただの「そういう仕様のクソゲー」だ。


「マップ全開で戦うボスなんて、ネトゲじゃよくある話だ。だったら、攻略法は一つしかない」

「……どうするの、青真くん」

一条さんが身を乗り出す。


「あいつの『カメラ』を、全部潰す。――いや、もっといい方法があるな」

俺はホワイトボードに、新たな作戦のタイムラインを書き込んでいく。


「メグ、第四師団長がハックしているカメラの映像を、こっちから『偽装(逆ハック)』することはできるか?」

「え? ……ええ、数分間だけループ映像(録画)を流すくらいなら、私の特製パッチで簡単にハックし返せるわよ」


「完璧だ。あいつはカメラの映像を100%信用して動いてる。なら、カメラの映像の中に『デコイ』を映し出して、あいつを俺たちの指定した『完全な暗闇デッドゾーン』へ誘導する」


俺のポケットには、すでにメグが追加で作成してくれた『アイテム②:超粘着スプレー(スパイダー・ネット)』と、煙幕代わりの消火器が詰まっている。


「カメラという最強のチートをハックされたあいつが、映像の嘘を見抜けずに暗闇に飛び込んできた瞬間――そこが、あいつの攻略ポイントだ。どれだけ攻撃力が高くても、見えない相手には攻撃を当てられない」


「……視界を奪い、システムの穴にハメ殺す。まさにWISTERIAさんの真骨頂ですね」

闇風の目に、いつもの鋭い光が戻る。


「よし、全員。イベント『第四師団長・視界ジャック作戦』を開始するぞ。格上のチートボスを、俺たちのハメ技で完封してやろう!」


負け確イベントからの、大逆転の反撃。

軍師の頭脳が、世界というクソゲーのシステムを再びハックし始めていた。

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