第100話:幻霧攻略
祝!100話です!ここまで書いてこれたのは皆さんの数少ない応援のおかげです!
白い霧が視界を埋め尽くしていた。
ほんの数十メートル進んだだけのはずなのに、入口は跡形もなく消え、周囲には同じような巨木が並んでいる。
方向感覚は完全に狂わされ、地図も役に立たない。
普通の冒険者なら、この時点で撤退を選ぶだろう。
「完全にマップギミックだな。」
青真は剣を構えたまま周囲を見渡す。
未来予知を発動しても見える未来が何度も枝分かれし、霧の奥だけがノイズのように揺らいでいた。
「未来予知まで潰してくるとは、嫌らしい。」
「気配も妙だ。」
闇風は静かに目を閉じる。
「全部同じ場所から感じる。」
「魔物が隠れてるんじゃない。」
「森全体が一つの生き物みたいだ。」
「なるほど。」
青真は小さく笑った。
「だったら攻略対象は霧じゃない。」
「霧を発生させてる本体を潰せば終わる。」
「ゲームなら定番ギミックだ。」
メグはしゃがみ込み、地面へ手を当てた。
淡い魔法陣が足元へ広がり、錬金術による魔力解析が始まる。
数秒後、ゆっくりと目を開いた。
「北東よ。一ヶ所だけ異常な魔力の流れがある。」
「闇風。」
「先行して確認。」
「分かった。」
闇風は短く返事をすると、そのまま霧へ溶け込むように姿を消した。
残された四人はその場で待機する。
青真は剣を肩へ担ぎながら、霧の動きを観察していた。
一定の方向へ流れているように見えて、時折逆流している。
「風じゃないな。」
数十秒後。
意念伝達が届く。
『見つけた。』
『デカい樹の根元。』
『ボスもいる。寝てる。』
「ビンゴだ。」
青真は笑みを浮かべる。
「全員、ボス戦準備。」
「今回は俺が前に出る。」
「カレン、援護頼む。」
「もちろんです。」
カレンは剣を抜き、青真の半歩後ろへ付く。
アルナは弓へ矢を番え、メグは魔法陣を展開した。
百華繚乱は自然といつもの陣形を完成させる。
霧を抜けると、突然視界が開けた。
そこには湖ほどの広場が広がり、中央には天井へ届くほど巨大な古木がそびえている。
その根元で眠っていたのは、樹木と狼が融合したような巨大な魔物だった。
枝角から溢れる魔力が、絶えず樹海へ霧を供給していた。
「なるほど。」
青真は魔物を見据えたまま呟く。
「ダンジョン全体をギミック化してたのは、お前か。」
その言葉に反応するように巨大な狼がゆっくりと目を開いた。
真紅の瞳が百華繚乱を捉え、次の瞬間、轟く咆哮が樹海全体を揺らした。
「開幕で決める。」
青真は剣を正眼に構え、全員へ意念伝達を飛ばす。
(闇風、右。アルナは左肩。メグは足止め。カレンは俺と前衛。)
(こいつは霧を張り直す前に畳むぞ。)
巨大な狼が地面を蹴る。
巨体とは思えない速度だった。
だが青真の未来予知には、その軌道がはっきり映っている。
「見えてる。」
身体を半歩だけ逸らし、剣を斜めへ振り抜く。
刃が前脚を浅く裂いた瞬間、カレンが横へ飛び込んだ。
「はぁぁっ!」
重い斬撃が続けて叩き込まれ、狼の体勢が大きく崩れる。
「今だ。」
闇風が影から現れる。
二本の短剣が一瞬だけ閃き、狼の脇腹へ深々と突き刺さった。
そのまま着地と同時に距離を取り、再び霧へ姿を消す。
「逃がさないわ。」
メグの魔法陣が完成する。
足元から鎖状の魔力が伸び、狼の四肢を拘束した。
完全には止められない。
だが、一瞬で十分だった。
「アルナ!」
「任せて!」
風を纏った矢が一直線に放たれる。
枝角の一本を撃ち抜くと、樹海へ流れていた霧が目に見えて薄くなった。
「やっぱりそこか。」
青真は笑った。
「霧の供給源は角だ。」
「全部折れば、このギミックは終わる!」
狼が怒りの咆哮を上げる。
魔力が一気に膨れ上がり、新たな枝角が再生し始めた。
「再生持ちか。」
「だったら再生する暇を与えなければいい。」
青真は真正面から突っ込む。
未来予知。
右爪。
左牙。
尻尾。
全てを紙一重でかわしながら懐へ潜り込む。
「これで終わりだ!」
剣が胸元を斬り裂く。
同時に左手を突き出した。
「マナショット。」
零距離から放たれた光弾が胸部を貫き、内部で炸裂する。
巨狼が苦しげな咆哮を上げた、その瞬間。
闇風の短剣が首筋を裂き、カレンの渾身の一撃が胴体を叩き割る。
最後にアルナの矢が額へ突き刺さり、巨体は静かに崩れ落ちた。
ボスが消滅すると同時に、樹海を覆っていた白い霧が音もなく晴れていく。
巨大な古木も淡い光となって消え、跡地には古びた宝箱だけが残されていた。
メグが蓋を開け、小さく息を呑む。
「B級アーティファクト。」
「『幻霧の外套』。」
「気配遮断と索敵阻害の効果があるわ。」
「闇風にぴったりね。」
「悪くない。」
闇風は短く頷き、新しい装備を受け取った。
青真も笑みを浮かべる。
「これで俺たちの戦力がまた一つ上がったな。」
帰還後、冒険者ギルドでは攻略報告に歓声が上がった。
ギルドマスターは報告書へ判を押すと、新しい依頼書を青真へ差し出す。
青真達のの新たな戦いは、もう始まっている。
読んでいただきありがとうございました!もし面白いと思っていただけたら、ブクマや評価で応援してもらえると励みになりま
す!




