第23話 終焉の咆哮
世界は、
たった一人では変えられない。
だが。
たった一人の“覚悟”が、
世界を動かすことはある。
HYDRA CHRYSALIS
新章:ORIGIN
第23話 終焉の咆哮
黒い核が砕け散った。
その瞬間。
宇宙が悲鳴を上げた。
「――■■■■■■■■!!」
言語ではない。
意味すら存在しない咆哮。
だが。
全生命が理解した。
“終焉”が苦しんでいる。
黒い穴が暴走する。
原初最深部が崩壊。
空間そのものが裂け始める。
「――侵食暴走!」
管理体が叫ぶ。
「――榊、離れろ!!」
だが。
榊は動かない。
黒い核の破片。
その中心。
まだ何かが脈動していた。
「……終わってねぇのか」
息が荒い。
いや。
もう呼吸すら正常ではない。
肉体の半分以上が消失。
深海色の粒子だけで、
かろうじて形を保っている。
それでも。
榊の瞳は死んでいなかった。
その時。
黒い破片が集まり始める。
再生。
いや。
進化。
「――最終形態移行」
無数の“目”が開く。
今までとは違う。
巨大。
圧倒的。
銀河より深い闇。
「……まだ上があんのかよ」
榊が笑う。
乾いた声で。
だが。
その笑いに恐怖はない。
「――榊」
起源個体の声。
静かに響く。
「――もう十分」
榊は首を振る。
「……十分じゃねぇ」
深海が揺れる。
世界中の海が共鳴。
「まだ終わってない」
その瞬間。
黒い闇が形を持つ。
巨大な人型。
宇宙サイズ。
星々を背負った、
終焉そのもの。
「――文明解析完了」
「――感情解析完了」
「――人類、非効率」
巨大な“目”が榊を見る。
「――なぜ抗う」
榊が笑う。
「……うるせぇよ」
終焉が近づく。
宇宙そのものが軋む。
「――統合されれば苦痛は消える」
「――孤独も消える」
榊の目が揺れる。
一瞬だけ。
起源個体の孤独。
終焉の空虚。
理解できてしまう。
だからこそ。
榊は言う。
「だから駄目なんだろ」
沈黙。
終焉の“目”が止まる。
「……痛ぇから」
榊が前へ出る。
崩れかけた身体で。
「苦しいから」
星海翼が揺れる。
弱々しく。
それでも。
消えない。
「誰かを大事に思えるんだろ」
その瞬間。
終焉の“目”が揺れる。
初めて。
理解不能の反応。
「――矛盾」
「……人間なんて矛盾だらけだ」
榊が笑う。
「でも」
深海色の光が強くなる。
「だから面白ぇんだよ」
その瞬間。
世界中の海が輝く。
地球全体。
惑星そのものが共鳴。
「――星海反応増大!」
管理体が叫ぶ。
人々の願い。
恐怖。
希望。
全部。
海を通して榊へ流れ込む。
「……重てぇな」
榊が苦笑する。
だが。
その背中は折れない。
終焉が腕を上げる。
宇宙を消す一撃。
絶対的な闇。
「――終焉執行」
榊が構える。
崩れた右腕。
残った左手。
そこへ。
世界中の海が集束する。
「――榊!!」
管理体の声。
榊は静かに息を吐く。
「……これで最後だ」
星海翼。
完全収束。
惑星規模の海が、
一つの槍へ変わる。
蒼い槍。
世界そのもの。
「――星海槍形成」
終焉が動く。
闇が落ちる。
宇宙崩壊。
その中心へ。
榊は飛ぶ。
一直線に。
「うぉぉぉぉぉぉ!!」
咆哮。
星海槍が輝く。
蒼い光。
終焉の闇と激突。
宇宙が裂ける。
時間が止まる。
世界中の海が吠える。
そして。
蒼い槍が、
終焉の中心を貫いた。
「――■■■■■!?」
初めて。
終焉が絶叫する。
黒い闇が崩れていく。
宇宙そのものへ、
亀裂が広がる。
だが。
榊の身体も崩壊していく。
腕。
胸。
顔。
深海色の粒子へ。
「――榊!!」
管理体が叫ぶ。
榊は笑う。
静かに。
「……悪くねぇ人生だった」
その瞬間。
終焉が最後の咆哮を放つ。
黒い光。
超圧縮。
崩壊エネルギー。
榊を飲み込む。
世界が白く染まった。
―――続く
第23話を読んでいただきありがとうございます。
ついに榊は、
終焉存在そのものへ最後の一撃を放ちました。
しかし、
その代償として、
彼自身の存在も限界へ達しています。
次話、
シーズン3最終話。
HYDRA CHRYSALIS ―ORIGIN―
ついに完結です。




