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自分だけ揚げ物が楽しめる世界  作者: ミツメ


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圧倒的な「あれ」

更新遅くなりすいません。現在、別作品も鋭意創作していまして10月ごろから載せられたらと考え書き溜めております。

今後もよろしくお願いします。

 《 》は焦っていた。初めての感情、焦り。それだけではない恐怖、絶望、諦観。これまでは舌を伸ばせば血が渇きを潤し、飢えを満たし、尊厳を肥大化させた。

 腕を振るえば地が揺れて、飛び跳ねれば衝撃が広がった。戦いの中で初めて成長もした。今まではただなんとなく見ていた餌の使う足掻き。いわゆる魔法。原理も知らない《 》だったが、水を祈り、火を願い、風を頼った。すると不思議なことに求める現象が発生した。

 成長というものを確かに感じ、喜びを得た。しかし、その分絶望は大きくなる。


 舌を伸ばせば抉り取られ、腕を振るうと強い力で弾かれる。飛び込んでも空にぶつかるだけ。新たな力もかき消されて終わる。あぁ、逃げたい。この場からできるだけ遠くに。

 そう願うが当然許されない。ふわふわと浮かぶそいつはどこへ行っても目の前に現れる。程なくして、《 》は力なく倒れ込む。諦めだった。そして死というものを覚悟した。漠然と存在し、自らには起こり得ない事象として認識していた概念。

 それが今自分の身に起きる。《 》は確かに絶望の象徴だった。

 きっと《 》と真正面からやりあえる者はごく僅か。綜馬は命を失うことは無くても敗北は必至だっただろう。そんな怪物を赤子扱いする[シーナ]


 決着はあっけないものだった。


 《 》が逃げた先、そこはかつての根城の近くだった。この辺りであればどこに行けばいいのかわかっている。地下へ続く道も知っていて、地下にさえ引き込めれば自分の勝利が近いのではと《 》は思考を変えていた。敗北、つまり死を一瞬でさえも思考に混ぜたくなかった。常に勝者であった誇り。

 だからこそ、目の前の「あれ」がすんなりと地下に潜ることを許してくれて、勝ちを確信した。

 次の瞬間、警戒していた方向とは別の場所から痛みを伴った。跳ね飛び、状況を確認する。そこにいたのはかつて壊したはずの人形が立っていた。


 そしてその奥からはいくつかの生体反応。また、これか。《 》はこの人形を厄介に思っていた。今戦う「あれ」よりも先に抱いていた敵への嫌悪感。それがやっと言葉として理解できたのは、敵という概念に気付いたから。

「あれ」がジリジリ近づいている感覚があった。この人形とやり合っている暇はないと、精一杯の力で水球を打ち込む。覚えたばかりの魔法だったが、十分な練度で、死を与える自信があった。

 しかし、結果はまた異なる。魔法は跳ね除けられ、人形はびくともしていない。

「おい!やつは魔法を使ったぞ!」

「やはりな、何かを隠していると思っていたんじゃ。」


 人形の奥の生体反応達が何か話しているが、彼らに構う暇なんてなかった。そうこうしているうちに、ふわふわと飛ぶ「あれ」が視界の端に映った。背中のそっとナイフで撫でられているような冷たい殺気が全身を凍り付かせる。

 終わった、と思ったがまさかの出来事が起こる。目の前の人形が自分ではなく「あれ」目掛けて飛び込んでいく。武器を構えながら明らかな敵意を持って。

 それを察したのか「あれ」はふわりと余裕そうに攻撃を避けると、続く、一撃、二撃と、簡単にいなして逆にズドンと、硬化した触手で胴に穴を開けた。「あれ」はただ障害物を処理したみたいな感じで、数本の触手でまだ抵抗する人形の相手をしながら《 》の方に意識を向けた。


 抵抗するならこの瞬間しかない。《 》は本能的に悟った。自分の全てをかけた一発。それが当たったのか、それとも避けられたのか。はたまた何も起こせなかったのかわからない。《 》は自覚する前に死んでいた。スパッと綺麗な断面で断ち切られた《 》はズドンと音を残してその場に二つに等分された。続いて、シュヴァリエもおもちゃを壊すみたいに解体された。二つの亡骸を興味津々でつつきながら、時々呑み込んでいく[シーナ]

 一連の流れ見ていたドワーフ達は言葉を失い立ち尽くす。バレてはならない。外には《 》以上に強大な敵がいる。そう悟った。


——————————————————————————————————


 綜馬は何が何だかわからないまま、その場に残された。とりあえず助かったのか、という安堵と[シーナ]の無事を祈る不安が同居する。

 とは言え、単独の救援は不可能。完全体の[朔]召喚も過ったが、それよりも先にミケアを呼びにいく必要があると判断した。時間もそれなりに立っているため、琴の様子も気になる。走って戻ろうとした矢先、目の前に[シーナ]が現れる。自身で改良を加えた【空間魔法】の応用によるワープゲート。使用できるのは[シーナ]のみ。

 そんな[シーナ]の触手には少し前までありえない覇気を放っていた怪物の首の半分。綺麗な断面で切られており、それが【空間魔法】の所業である事はすぐにわかった。


「どんだけ怪物になんだよお前は、」

 綜馬は苦笑いしながら目の前のふわふわと舞う可愛らしい生き物の頭を撫でた。[シーナ]は嬉しそうに全身の色をピンクっぽく紅潮させて喜んだ。


 あれだけ強いモンスターを討伐した。きっと玖珂の言っていた化け物とはこれなのだろう。そこから見えてくるこの地域の問題の元凶に、一つの活路が見えたと綜馬は感じた。

 少なくとも、これで危険が減り活動の範囲が広がった。

 綜馬は喜びつつ、ふと強大なモンスターを倒したことによる報酬が気になった。肉体として残っているため、ダンジョンなどで見られるアイテムや宝箱に変わるタイプではないのは確かだ。つまり、倒すことでなんらかの報酬を得られるタイプ。

 そう思い、久しぶりに掲示板へ目を通した。

 綜馬の目がまず最初に掴んだのは《大型モンスター討伐報酬獲得!》ではなく、《緊急ミッション 異世界勢力を排除せよ》の文言だった。

読んでいただきありがとうございます。


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