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自分だけ揚げ物が楽しめる世界  作者: ミツメ


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捕縛、排除、打倒

 ドワーフ達の最高傑作。シュヴァリエの第五世代機。装甲は青白く、甲冑から見える黄色い光はシュヴァリエの鋭い眼光として、狙った獲物を逃さない。

 耐久性、機動力、攻撃力、どれをとっても過去作の比にならない最強。その能力は確かな力を証明した。ドワーフが地下に居を構えてから。つまり地球に引き込まれてから現在に至るまで命を脅かす存在であった怪物の撃退に成功した。

 シュヴァリエが《 》を撃退する場面を見ていたドワーフ達。その中でも頭領のゴランは一つの考えが頭をよぎった。


「このまま地上に行かんか?」

「それはどういうつもりじゃゴラン。」

「わしらは土の民だ。だが、地中にこもって逃げ回るのは違う!坊主ばかりにメシの用意させるのはなんとも思わんのか。」

 ゴランの言葉に一同黙り込む。彼らはシュヴァリエの技術者として里とする拠点から少し離れたところで生活をしていた。

 その分生活に必要とする様々の面倒を玖珂が全て一任しており、玖珂は自分たちの事を恩人のようにして接するが、ドワーフからすれば玖珂の恩義は過剰に思えた。最初の目的とは違うが、最大の敵であった《 》の撃退は一つ前に進むこととすれば十分なきっかけになり得た。


「里には使いを出した。明日の晩、会議にて地上への進行を始めようという内容じゃ。そして、それに先んじてわしらは先に地上へ上がってみんか?」

「流石にそれは危ないじゃろ。補給班がどんな目に遭ったか、」

「坊主も言ってただろ。昔わしらを狙っていた奴らはどこかへ行ったと。ならば、わしらの武器に敵うものなどおらぬ!むしろ、奴らであっても返り討ちにしてやるわ!」

 ゴランの言葉に一部のドワーフ達は湧きたつ。暫く見れずにいた空。それが手に入れられるかもしれない機会。自信だって付いていた。


「もういい!わしに賛同する者だけ付いてこい!その代わりこいつは使わせてもらう。明朝までには戻ると里には伝えておいてくれ。」

 反対派の意見がなかなか変わらない事にしびれを切らしたゴランは立ち上がりシュヴァリエ起動の準備を始めた。ゴランの背を追うものがちらほらと立ち上がっていき、残された者達は神妙な面持ちで彼らの帰還を祈るしかなかった。


——————————————————————————————————


 有栖は欠伸を噛み殺す。以前の彼は様々な娯楽を楽しむものだった。その頃から暴力性と危険性は内に秘めていたが、彼の生活に彩をくれる要素は数多存在した。そんな中でも凶行に走ったのは耐え難い激情と、執着の放棄だった。つまり、有栖にとって世界の破滅前にはもう彼の世界は終わっていた。だからどうだってよかった。この世界の行く末なんて有栖からすればボーナスステージみたいなもので、気楽に過ごせればそれでよかった。


 綜馬とともにいる少女。近寄りがたいのは、彼女が示す綜馬以外は興味が無いという素振りが理由か、それとも圧倒的な強者の佇まいが所以か。どちらにしても彼女の正体は謎に隠され、それでいて触れてはいけないような禁忌の香りがした。

 有栖は本能的に少女と距離をとった。踏み込んではいけない距離を計る必要があった。彼女は耳が長く異質な存在であることは知っていた。けれど踏み込む事はしなかった。


 退屈な仕事をこなしながらそんな地雷原を進むなんて割にあっていない。暫くはウロウロしようと綜馬達とは別れた。何か目的があるわけではなかったが、やはり一人が気楽だった。佐々木を名乗った時に出来た数人の手下はそれぞれに役割を与えた。有栖の人生において他者とは利用するか、利用されるかの二択。認めた人間であれば自分をゴミのように扱っても仕方ないとすら考えていた。

 欠落した倫理観はもちろん自分周囲に作用する。


 暇つぶしといえばあまりにも空虚な時間だが、有栖にとって何もしていない時間というのは心地よかった。存外、心根は戦いを求めていないのではとふと考えるが、血が飛び交うような戦いを想像するたびにゾワッと抑えきれない欲望が顔を覗かせる。人は皆二面性を持つ生き物だ。それはサイコパスにも、シリアルキラーにも、平和主義者にも、英雄にも言えること。

 そんな様子でランキング上位者の情報を買いながらその日暮らしを繰り返す。


 綜馬を雇った奴は一週間くらいでとか言っていたがそんな早くに終わるはずはない。仮に終わってもあの辺りに配置した手下から連絡が届く。有栖はそれまでただ自由を満喫していれば良かった。

 人助けとか興味ないし、こんな世界になったら尚更意味がない。みんなが自分のことしか考えていない世界で優しさを出すのは寧ろ弱者だ。

 綜馬の持つ絶対を察していながらも、彼が誰かを救おうとしている様はどうにも納得できない。悪になれとは思わない。しかし、自分を犠牲にするほど助ける価値があるものがいるのか、そんな事が気になってしまう。これ以上いれば余計な軋轢を生み、ストレスの溜まった自分は良からぬことを図るかもしれない。自分と言う人間をよく知っているからこそ、有栖は一人を選んだ。


 今日もいつも通りクエストや、必要物資の条件に目を通す。ここ最近肉を食っていない。掲示板から個人が見れるランキングシステムになって、物資の困窮は無くなったがその分嗜好品のハードルが上がった。

 まとめて買うことで一定の生活必需品を用意し、余りで嗜好品を買うと言うやり方がどれだけ適切だったのか思い知る。

 赤身のステーキなんていつぶりか、西城の気まぐれで一度食べて以来口にしていない。よし、それならと、難易度は高く要求も高いが恩恵の大きいクエストを見る。


 一通り目を通し、めぼしいクエストを比較して決めようと思った矢先、緊急のミッションが表示される。対象者は対象地域にいるランカー。つまりこの辺りの実力者たち。

 ミッションの発注は『マーク』

 その内容に有栖は思わず笑みを浮かべた。

 《緊急ミッション 異世界勢力を排除せよ。〈対象地域に存在する可能性の高い異世界勢力(異世界種族)の捕縛、排除、打倒。※モンスターではなく人型〉》

 

 幾つのも思惑が欲望に向けて動き出した。

読んでいただきありがとうございます。


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