19話〜気持ち〜
あの日以来、裕翔と早苗の距離はドンと離れた。別に転校したとかではない。いつも通りにしている。
離れているのは気持ちだ。
早苗はこのモヤモヤした気持ちをどうしようも出来ないでいた。
「おはよう。」
早苗が言うといつも通り裕翔が返す。
「おはよう。」
登校中もいつも通り早苗が前を歩き裕翔が後ろから見守る。
「おはよう裕翔。」
「浩介、おはよう。」
裕翔は幼馴染の浩介と挨拶を交わし私もたくさんの友達と挨拶したあと席に着く。
"キーンコーンカーンコーン"
お昼のチャイムと共に裕翔と浩介は走りだす。狙いはアンパン。前に浩介からアンパンを味見させてもらってハマっていた。
早苗が裕翔の背中をボーっと見ていると琴美がちょっかいをかけて来る。
「へー早苗ちゃんって裕翔くんみたいなのがタイプなんだ〜。」
「ち、ちがうよ!」
早苗は顔を真っ赤にして反応した。
下校。
早苗はお昼の件のせいで裕翔と距離を取るために早歩きだった。
裕翔は早苗の姿を追う。
(いつもこうやって帰ってくれてるのも私が大事だからじゃなくて任務だからなんだよね…)
早苗の足は重くなり立ち止まる。
それに釣られ裕翔も止まると急に早苗が走り出した。
「はぁはぁはぁ…振り切れたかな…」
早苗は裕翔から逃げ切ったと思うと近くの公園のブランコに腰を下ろす。
(私は何をやってるんだろ…)
早苗は自分の気持ちがはっきりしないままでいた。
日は落ちかけ公園には人気がなくなった。
早苗は朱色に染まった空をジッと眺めている。
その次の瞬間、後ろから誰かが抱きついて来て耳元で囁いた。
「言っただろ兄さんがいるって。」
その声を聞いて早苗はすぐに誰か分かった。
「なに?お兄ちゃん。いきなり…」
早苗はいつもより暗い声で言う。
「お前がいきなり逃げるから。」
裕翔の優しい声がすぐ近くから聞こえる。
「だ、だってお兄ちゃんは私の事をただの護衛対象としてしか見てないんでしょ…」
早苗は顔を下に向けると裕翔は抱きつくのをやめ早苗の目の前に立つ。そして…
「んっっっっー?!!」
早苗の顔を手で上げ口付けをした。
「これでわかっただろ。」
早苗は突然の出来事に驚き固まった。
しばらくして早苗は正気を取り戻し無言になる。
裕翔も一度も口を開かれずに家に向かって歩き出す。
早苗も顔を真っ赤にしながらついて行く。
近道のために商店街を通った行く。その時…
「え?」
急に裕翔が倒れた。早苗が唖然としているとそこに浩介が現れた。
「裕翔!」
浩介は父親が商店街の魚屋の店長で偶然部活帰りに鉢合わせた。
浩介はすぐに駆け寄る。周りの人達も何事だと見ている。
「…暑い。すぐに近く病院に!」
浩介が裕翔の首元に手をやりながらそう言うと早苗が口を開く。
「だめ!」
「早苗さん?!」
「すぐ家に連れて行かないと。」
そう言って早苗は裕翔を担ごうとすると浩介が手伝う。
「なぜかわからないが手伝おう。裕翔の家は…『こっち!』え?」
早苗は全力で裕翔を運ぶ。
数分後、家の前まで着くと早苗はドアを思いっきり開け叫ぶ。
「ママ!!」
瑠美は呼ばれるとすぐに出てきた。
「なに?早苗。」
「お、お兄ちゃんが…」
瑠美は浩介の肩で担がれている裕翔を見て真剣な表情になる。
「早くなかに!」
裕翔をソファーに寝かせると瑠美はどこからかパソコンを持ってきた。
「ママ?なにを…」
瑠美はパソコンを開くとすごい速さでキーボードを叩く。
数十分後。
「ふぅ…」
瑠美は手を止める。
「お兄ちゃんは…」
早苗が聞く。
「大丈夫よ。」
「はぁ、よかった…」
その時、早苗は浩介がいることを思い出し浩介の方を見ると…
「え?!早苗さんって裕翔の妹だったの?」
(え?そっち?)
早苗は思わず心の中でツッコムのであった。




