表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔法の星の恋物語  作者: 知香
第4部
97/159

7.危険な依頼

ベルック公爵家からアカデミーが終わったら邸に寄って欲しいと知らせが来た。


「俺と一緒に公爵領へ行って欲しい」


何の話しかと思って公爵邸に着いて、さも家族かのように温かくリビングに迎え入れられ、ソファに座れば目の前のエミリオ様からお願いされてしまった。


「公爵領にですか?」


「フルートの町の新名物としてサングリアを教えてもらっただろ?それ以外にもベリーを使った精油、女性向けに香油も作ってみたんだ。それら新製品をお披露目する目的で祭りとお茶会、それに夜会を開くことになった」


「カリナは王子妃教育があって王都を離れられそうもなくて、夜会に出席するのにパートナーが居ないのよ。それにカリナをここに一人にするわけにもいかないから私と主人もここに残る予定なの。でも、香油を宣伝するのに女性が居ないと説得力ないでしょ?だからフレイヤちゃんに一緒に行って欲しくて」


なんと!私では絶対に役不足だ!マデリン様とカリナ様だから香油の宣伝になるわけで、私では絶対に宣伝にならないと思う……!


「わ、わたし……」


「これ、ベリーの香油」


渡された小さな香油瓶。

蓋を開けて香りを嗅いでみる。


「とっても良い香りですね……」


これを1ヶ月そこらで作ってしまったかのか……。ベルック公爵家の持っている技術って、凄いなぁ。


「これを公爵領に行ってる間ずっとつけて宣伝して」


「あ、あの、わたし……」


まだ行くって言ってませんけど……!


「今週末を挟んで5日間。アカデミーを数日休んでもらうことになってしまうけど、リーズ公爵からは許可を貰ってるから。それと、サングリア以外にもお酒じゃないベリーのドリンクも何種類か作ったから、向こうでいろいろ飲んで感想も聞かせて」


お父様から既に許可取り済み……!

エミリオ様の根回しと段取りの素早さと有無を言わせない進め方に驚くばかり……。


え、行くの?私……。

マデリン様やカリナ様の代わりなんて務められない!


混乱状態だった私の耳に、馬の音が聞こえた。



◇◇◇



(ああ……やっと帰ってこれた……)


馬を厩舎の厩番に引き渡した。隊の馬だ。なかなか賢く、明日から暫くの間の相棒だ。


邸に入ると、先触れ等何もなく突然帰ってきたのに執事が出迎えてくれた。


「風呂に入りたい。その間にリーズ公爵家に連絡をして欲しい」


「フレイヤ様なら本日いらっしゃってますよ」


「え!」


自室に向かおうとしていた足を止めた。


「あら、レオンじゃないの」


ガチャリとリビングの扉が開く音がしてそちらに振り返ると、母がリビングから出てきて、その後ろからずっと会いたくて仕方がなかった愛しい彼女が姿を現した。


「おかえりなさいませ、レオン様」


優しげな表情に吸い込まれそうになるけれど、何しろ昨夜は徹夜で仕事をした。前回水を浴びたのはいつだったか記憶も定かではない。


「ちょ、ちょっと、待って!多分臭うから!風呂に入って着替えてくるから、リビングで待ってて!」


それだけ言ってすぐさま風呂に行った。





「は?兄さんのパートナーだって?」


風呂に入って着替えてさっぱりしたところで、リビングで今日フレイヤが来ている理由を聞いた。


何故そうなる!?

夜会での兄さんのパートナー!?

この女ったらしのパートナーだと!?


「駄目」


「でも他に居ないから仕方ないでしょ?領地の親族も集まるし、フレイヤちゃんの紹介もできるでしょ?」


「危ない。危険。駄目」


今現在フレイヤに表だった護衛は付いていない。カミーユおばあ様が影を1人付けているとのことだったが、影だけでは不安だ。何しろ初めて赴くベルック公爵領だ。影も動きが制限されてしまうだろう。

兄が常に側で守れるのなら良いが、様々な者への挨拶やらなんやらで常時は難しいだろうし。

何より、兄さん自体が危ない!


「わ、私は、その……良さを口頭でお伝えすることは出来ても、マデリン様やカリナ様のような魅力が無いので広告塔にはなれないかと……」


「フレイヤは誰よりも魅力的だよ。このベリーの香りもとてもフレイヤの香りに馴染んでいる」


やっと会えた喜びから離れたくなくて、俺の足の間にフレイヤを座らせて囲い込んでいた。初めは恥ずかしがっていたフレイヤも、もう素直に受け入れてくれている。後ろから抱き締める形で彼女の甘い香りを堪能できるので、最高の格好だ。


そして兄から貰った香油を早速つけて貰ったところ、彼女の香りを邪魔することなく良く調和された香りだった。


この香油を作った兄を素直に称賛したいと思う。


「私、そんなににおいますか!?」


「違うわよ、フレイヤちゃん。レオンが言ってるのは魔力の香りよ。レオンはフレイヤちゃんの香りにだけは動物並みの嗅覚を発揮するみたいね」


「魔力の、香り、ですか……」


「フレイヤはとっても甘い香りがするよ」


また恥ずかしくなったのか、首と耳が少し赤くなった。可愛いな……。

こんなに可愛いのだから、女たらしのこの兄がフレイヤの側にいて我慢できるのか!?

俺は今すぐ自室に連れ込みたいくらいなのに!!


「レオン。お前が何を心配しているのか知らないが、フレイヤを借りる以上、ちゃんと身の安全は守るつもりだ。行程も領館も茶会や祭りの会場も、全てにおいて警備を増やす予定だ。その手間や気苦労を推しても今回は発案者のフレイヤの力を借りたいんだ。それに、俺も弟の婚約者にまでは手を出さない。まあ、フレイヤから誘ってきたら別だけどな」


「!?、そんなこと、しません……!!」


「……借りるって、フレイヤをモノみたいに言わないでください」


はぁと、溜め息が出る。

兄は全てお見通しか……。

そもそもヒューゴ様が許可を出している。それならばカミーユおばあ様にも話が伝わっているだろう。

俺が側で守ってあげられたら良いが、明日から任務に赴かなければならない。戻って来られるのは同じくらいになるだろうか。


「……分かりました。兄さんを信じましょう」


「あら、もうちょっと駄々をこねるかと思ったわ」


母の俺に対する評価の低さは何だ!?


「但し、条件があります!」


「条件?」


「ルイーズを護衛として連れて行ってください」


「ルイーズ?誰だ?」


兄が怪訝な顔をしている。


「ルイーズですか!?……と言うか、私が行くこと決まってしまいましたね……」


フレイヤの後半の呟きは、ぴったりくっついている俺にもよく聞こえなかった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ