表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔法の星の恋物語  作者: 知香
第4部
96/159

6.独りの日々

入団式から1週間程が経っていた。

あの日以来、レオン様とは会えていない。まあ、まだ1週間だ。2ヶ月会えなかったのに比べればどうってことない、筈。

でも、連絡もない。「休みが分かったら連絡する」と仰っていたけれど、休みが無いのだろうか……。体、本当に壊さないか心配になるけど……。



「じゃん!!」


「「きゃー!!!!!」」


耳がおかしくなる程の友人の悲鳴を引き出してしまったのは、入団式で撮ったエドワード殿下とレオン様の騎士服姿の写真だ。


「格好良すぎる!!!」


「なんて凛々しいの!!!」


「フレイヤは神ね!見せてくれてありがとう!」


「売って!これ売ってー!」


「私も欲しい!」


友人2人の勢いに負けそう。


「お二人に許可も取ってないのに勝手に譲渡も商売も出来ないわ。見るだけで我慢して」


「うう……確かに」


そこまでの反応とは思いもよらず。でも喜んで貰えて良かった。あんなに見たがっていたのだから、格好良さを少しだけお裾分けして眺めてもらえて、写真を撮ったかいがあった。


他にも沢山写真を撮ったので、皆さんに配らなくては。





さらに1週間が経った。

驚いたことに、入団式で撮影したアリーチェ王女殿下とエドワード殿下の写真が新聞に載ったのだ。


「これは……」


朝、お父様に新聞を見せられ、私が撮った写真が載っていたのだから驚きを隠せる筈もなく、唖然としてしまった。


「アリーチェ王女殿下から写真を新聞社に渡すとは聞いていたんだけどね。姉弟仲を見せつけたかったのかな」


アリーチェ王女殿下やエドワード殿下が写っている写真は、お父様から渡してもらったのだ。

こんなお父様よりも下手くそな写真が新聞に。しかもこの時確か緊張で手が震えていた筈……。



しかし、これだけではなかった。

さらに翌週になるとエドワード殿下とカリナ様の婚約が発表され、入団式の時のお二人の写真まで新聞に載ってしまった。



友人に見せたいと思い撮った写真が、こんな風に拡がっていって驚くばかりだ。


それ以降、どこで情報を仕入れてきたのか、各新聞社から写真に関する問い合わせがリーズ公爵家にきた。

それからお金持ちの貴族からも興味を引かれたようで、欲しいと言われているらしい。


お父様はその対応と、カメラの製造や写真現像に関すること、商業化を進めるにあたっての各種手続きやルール作りの為に王宮の各部署とのやり取りでとても忙しくなった。写真が広まることで絵師の仕事を奪ってしまわないように、ある程度の規制を行わなければならないとか、なんとか。


……なんか、本当に、ごめんなさい。という気分。


でもお父様は地球の新しい文化が受け入れられ広まることは喜ばしいことだと言って、むしろ私が感謝されてしまった。





気がつけば入団式から1ヶ月が経とうとしていた。

変わらずレオン様とは1度も会えていない。


でもこの日、アカデミーから帰ると執事がにこやかな笑顔を浮かべていた。


「レオン様から花束とカードが届いていますよ」


「本当!?」


そして渡されたのはピンクのマーガレットの花束。


「花言葉は≪真実の愛≫ですよ」


執事のにこにことした笑顔に恥ずかしくなる。


「……ありがとう。貴方、花言葉も分かるの?」


「レオン様はよくお花を贈ってくださいますから、勉強させて頂いてます」


「そうなんだ……」


終始にこにこの笑顔を向けられていたたまれず、花束は生けてもらうようにお願いをして、カードを持って部屋に向かう。心なしか早足で……いや、多分ちょっと駆け足で。


少し胸がドキドキとしている。ほうっとひと息ついてカードを開く。


*****

愛するフレイヤへ


なかなか連絡出来ずすまない。

暫く休みが無いけれど、休みが取れたら必ず連絡する。

愛しい君に会いたい。

今夜も月を眺めて君を想うだろう。


レオン・ベルック

*****


……恥ずかしい。

でも、嬉しい。


手紙ではなく花束に添えられた小さなカードに、びっしりとこれだけのメッセージを書いてくださった。

レオン様の字は綺麗だ。公爵家で教育されてきたからだろうか。読みやすく、容姿と同じで美しい。


(休み……無いんだなぁ……)


そんなに大変な任務に就いているのだろうか。

食事はちゃんと取れているのだろうか。

睡眠もちゃんと取れているのだろうか。


研修期間が終わっても、変わらずこちらから手紙を出すことが出来ないらしい。聞きたいこと気になることは沢山あるのに、何も確認することが出来ない。そして何も伝えられない。


レオン様からのカードを胸に押さえる。

私の気持ちも届けられたらいいのに。


(私も……月を眺めて、貴方を想っています)


最近はすっかり日が短くなり、部屋の窓からは茜色の空が見える。窓に近づいて西の空を眺めれば、空を茜色に染めるだけあって濃い赤色の夕日が浮かんでいた。


雲は少ない。

今夜、きっと、月も綺麗に見えるだろう。



◇◇◇



「足りない……」


「何が?」


殿下が不思議そうに聞いてくる。


「フレイヤが足りない……」


「は?」


殿下が間抜けな声を出す。


「1ヶ月も会えてないんですよ!その前は2ヶ月!入団式の日に会ったっきりで!」


フレイヤに会いたくてたまらない。中毒症状のようにフレイヤのあの甘い香りを嗅ぎたくなる。


「煩いな!私だってお前と同じでここに缶詰め状態なんだぞ!」


「殿下はいいじゃないですか!カリナは正式に婚約発表されて王子妃教育で王宮に来てるじゃないですか!会えるじゃないですか!」


「いつ会いに行った!?ずっとお前とここにいるだろうが!」


お互いに欲求不満で不毛な言い争いになっている。分かっていても止められない。



「なんだ、喧嘩か?」


そこに現れたのは、騎士団の特殊部隊の隊長、リアム・グランヴィル。俺の上司だ。


「レオンが婚約者に会えず欲求不満らしい」


「なんだ、この間花を贈るのを許可してやっただろう?」


「この部隊に配属になって1ヶ月、全然会えていないんですよ!もし全然会いに来ない俺に愛想をつかして、彼女の魅力に惹かれた別の男の誘いに乗ってしまったらと思うと……不安で仕方ないんです!」


「そんなこと言われてもな……。手紙のやり取りは業務以外禁止にしている部署だからな。花を贈ることの許可を取るのも大変だったんだぞ?」


「……それは大変感謝しております」


俺が隊長に直談判して、隊長が騎士団上層部からの許可をもぎ取ってきてくれたのだ。


「しかし、そんなにリーズ公爵家の令嬢に夢中なのか、レオンは。そんなに容姿端麗なのか?」


「まあ。レオンと出会ってからは特に垢抜けたかな」


「まあ!?フレイヤの魅力を語りだしたら一言なんかで終わりませんよ!誰に対しても心優しく、動物にまで好かれて自然と向こうから寄ってくるんです。始まりの魔女ソフィア様の子孫であることをプレッシャーに感じながらも魔法に対する努力を決して怠ること無く、公爵家を誇りに思って領民をとても大切にしています。笑った笑顔が本当に可愛らしく裏表の無い性格で、照れるとすぐに顔や耳が赤くなり、いつもは清楚な服装でいるのに夜会等で露出の多いドレスを身に纏った時の正反対の艶やかな雰囲気、そして露になっているシルクのような白い肌が俺の愛の言葉で真っ赤になると彼女の色気が増すんです。それだけじゃなく抱き締めた時に感じる豊かで柔らかな膨らみに、背中から細い腰にかけての曲線美、そして膝に乗せた時太股に感じる心地好い感触、何よりぷっくりとした唇は柔らかで永遠に噛みついていたくなる気持ちの良さで、絶対に他の男に渡したくないと思わせるものです!」


「……私が悪かった」


「魅力って……後半はただのエロい感想だろ」


隊長の突っ込みはもっともだ。しかしそれだけ欲求不満だと言うことが分かってもらえたことだろう。

それにしても、口に出したことで余計に想いばかりが募り、切ない……。


「……フレイヤに会いたい……」


「しかしまあ、お前はブライアンに似てるな。アナベル様の家系だからか。あいつも特殊部隊に入るまでカミーユによく花を贈ってた。同じ王宮にいるのに、王宮魔導室にわざわざ送りつけてたな」


「……そうですか」


ブライアンか。フレイヤの祖父であり、カミーユおばあ様の亡くなられたご主人。

既に亡くなっているとしか聞いていなかった。この部隊に配属され話を聞くまでは何故亡くなったのか理由も原因も知らなかった。

そしてフレイヤはまだ知らない。


「婚約者に会えるかどうかは成果次第だな。書類整理の報告を聞こうか?」


「……こんなにもよく溜めましたよね」


「お前はまだ良いだろ?配属後暫くは諜報訓練があったんだから。私はずっとこの書類の山を一人で確認させられたんだぞ」


「悪いなぁ。この部隊は人が少ないから他は全員潜っている。でも書類に目を通してだいたいは把握できただろ?はい、報告」


殿下と2人で揃って溜め息をついてしまう。


「侵入者の洗い出しの結果は、王宮の文官3名、ローラ付きの侍女1名、騎士団に1名、アカデミーに1名、それに演奏家として各貴族の邸に出入りしている者も1名。新しい情報としては、マトフェイの地へ向かう船が出入りしている港がトルクメ伯領の可能性が高いということ」


「しかし港の情報は不審な点が多いです。基本的に霧がかかったような不明瞭さのある彼の地なのに、諜報員からの報告がこうも揃っているなんて、わざと掴まされている情報としか思えません」


「そうだな。しかしトルクメ伯領はドルバック伯爵の逃亡予定だった指定された港にも近い。フーシェ侯爵領の隣だしな。ニセ情報だとしても調べる必要はある。レオン、お前潜ってこい」


「!?」


「今は他に潜れる奴がいない。初仕事だな」


「分かりました」


初仕事か。俺が一番未熟だから、比較的危険度の少ない場に潜り、経験を積めと言うことか。


「とりあえずそこの書類の山のチェックと王に報告する書類を作成して、終わったら一旦帰って良いぞ。明日早く終わればそれだけ時間が空くぞ?そしてレオンは明後日から潜れ。殿下は引き続き上がってくる報告と書類の確認を」


「か……帰れる!?」


早く終わればフレイヤに会えるかもしれない!

仮眠なんて取っていられない。全神経を集中して終わらせてやる!


「……また一人で書類に囲まれるのか……」


殿下のぼやきが聞こえたが無視した。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ