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魔法の星の恋物語  作者: 知香
第4部
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5.守りたいもの

「レオン。そろそろ隊に戻るぞ」


殿下の容赦ない言葉。


「…………」


思わずフレイヤをぎゅっと抱き締めてしまう。


「あの……レオン様?殿下があのように仰ってますよ?」


はぁと溜め息が出る。

久し振りに会えたのだ。2ヶ月も会えなかったんだ。今やっと腕の中に囲うことが出来たのに、もう離れなければならないとは……。


「レオン、今日は邸に戻るのでしょう?フレイヤちゃんも一緒に皆で食事をしましょうよ。ね、いいでしょ?フレイヤちゃん」


「……はい!嬉しいです!」


「そういうことだから、また後で会えるわ。子どもみたいなことをしないで、フレイヤちゃんは邸で待っているから、貴方はやることをしっかりなさい」


母にそこまで言われてしまい、仕方なく抱き締める腕を緩める。


「また後でね」


フレイヤの青色の瞳を見つめながら言い、額にキスをする。本当は唇にしたいけれど、こんな人前でしたらフレイヤは嫌がるだろう。少し顔を赤らめて「はい」と頷く彼女が可愛くて、離れたくなくなるけれど、気持ちを切り替えて手を離す。


皆と別れて殿下と隊へ合流しに行く。これから配属の通達がある。そして明日からの任務についての説明、寮を出るものは荷物の片付け等。

頭を切り替えねばと思うのに、久し振りに抱き締めた彼女の感触と香りを思い出してしまう。


会えなかった2ヶ月の間にさらに綺麗になった彼女が、俺を見て顔を綻ばせてから、少し照れた表情に変え迎えてくれた。

彼女に近寄れば、俺が誕生日プレゼントであげたイヤリングを揺らしながら彼女も歩を進めて来て、そのまま抱き締めてしまった。


柔らかな体は抱き心地が良く、香りも変わらず甘くて体の奥が疼いた。彼女の少し速い鼓動が伝わってきて嬉しさが胸に広がった。

変わらず俺のことを好きでいてくれたんだと感じた。


2ヶ月会えないと別れてしまう恋人同士もいるとか。なので手紙を出すことだけは許されていた。でも返事を貰うことは禁止されていた。というより、届いていたとしても恐らく処分されていただろう。規律には厳しい。

俺の出していた手紙も、検閲されていたことだろう。婚約者への手紙だと十分に分かるような、検閲官も呆れるくらいの内容で書いてやったが。

彼女への想いを文字に起こしたらそうなるのも仕方ない。


そこまで厳しいのも情報漏洩を防ぐ為か。はたまたネズミが潜り込んでいる可能性を危惧して外部との接触を遮断させる為か。そしてそんな者がいないかを炙り出す為か。


比較的平和だと思っていたこの星が、そうでないことを悟り始めていた。


そしてこれが、配属の通達を受け、確信に変わるのだ。






────ベルック公爵邸。



やっと邸に戻ってきた。2ヶ月ぶりの帰宅。結局なかなか帰ることが出来ず、遅くなってしまった。


フレイヤはもう帰ってしまっただろうかと思ったが、邸に入ると笑顔で出迎えてくれた。


「遅くまでおつかれさまです」


こんな結婚生活みたいに出迎えられ、遅くまで待たせてしまった申し訳なさよりも嬉しさが勝ってしまう。

考えるよりも先に体が彼女を抱き締めていた。


「遅かったわねぇ。食事は?」


「まだです」


「とりあえず食べてからフレイヤちゃんを送ってあげなさい」


「ええ」


離れがたくてフレイヤも連れて食堂に行けば、父と兄が何かを飲んでいた。


「遅かったな」


「はい、遅くなりました」


「今後は?」


「荷物は置いてきました。今後も帰らず泊まることがあると思います」


「そうか」


恐らく2人は何かを感じ取っているのだろう。それ以上は聞いてこなかった。


「お二人は何を飲んでいるのですか?」


「これ、サングリアっていうお酒」


「お酒?ベリーが入っているように見えるのですが?」


「ワインに果物を入れたものだ。フルートの町の新名物にならないかと試飲してた。フレイヤから聞いてリーズ公爵に作り方を教えて貰ったんだ」


フレイヤの顔を見れば照れくさそうな表情だ。

俺のいない間にいろいろあったようだ。ヤキモチのような寂しさを感じてしまう。


とりあえずすぐ近くに彼女を座らせて食事を取る。彼女の心地好い声を聞きながら、いつもの我が家の賑やかな雰囲気で時間が過ぎていく。



「送ってくよ」


食事が終わると、もう就寝していてもおかしくないような時間になっていた。


「お疲れではないですか?私、転移で帰れます」


「もう少し一緒にいたいから送らせて欲しい」


心配してくれる彼女を強引に連れて邸を出る。母には毎度のことだけれど「襲ったら許さないわよ」と釘を刺された。


馬車に乗ると彼女を抱き締めてキスをする。

正直欲求不満で理性なんて簡単に崩れ落ちそうだったので、啄むように唇が触れ合うキスを繰り返す。舌を絡めでもしたら気持ちが高ぶってしまい、そのまま彼女を座面に押し倒してしまうだろう。

それでも時々漏れ出る彼女の艶のある声に揺さぶられて、自分自身との戦いも繰り返された。


「俺は嘘つきだったな。毎日会いに行くと言ったのに2ヶ月も会いに来られなかった」


「仕方がないですから」


「……今後も、なかなか会えないかもしれない。殿下の近くで特別な任務に就かなければならないから」


「そうですか」


「すまない」


「お仕事なんですから、謝らないでください。体を壊さないよう気をつけてくださいね」


腕の中にいる彼女の心の中までは分からない。以前言った「我慢しないで」という言葉を、素直に受け入れるタイプではないことくらい分かっている。

たとえ「寂しい」とも「会いたい」とも言われたとしても、どうしようもないのだ。現実は甘くない。

どうしようもなくとも言われたいと思ってしまうのは、彼女の愛情を欲して、確認したいと思ってしまう欲深さだろうか。


「休みが分かったら連絡する。どこかに出掛けよう」


「お待ちしてます。でも……」


「何?」


何か言いにくいのか言葉を詰まらせている。

帰宅しても着替えずにまだ真新しい騎士服に身を包んでいた俺の、胸辺りを少しきゅっと握る。その仕草が可愛くてドキッとする。


「……出掛けなくても、こうして、側に居て、抱き締めて貰えるだけで、私は嬉しいのです」


すりっと顔を俺の首もとに擦り寄せながら言われ、俺の理性は簡単に崩れてしまい、リーズ公爵家に着くまで結局彼女の唇を貪ってしまったのだ。


何故彼女はこんなにも煽り上手なんだ?


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