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魔法の星の恋物語  作者: 知香
第4部
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1.秋の休日

風が吹くと涼しいと感じる季節になった。

領地でも多くの農産物が収穫時期となり、領民は忙しい季節。様々な領地で収穫祭が行われ、王都は領地に戻っている貴族が多い為、比較的穏やかに感じる。


それでも各地で収穫された旬の農産物が市場に沢山並び、それを買い求める人で町は賑わっている。


王立アカデミーに通っている私のような学生は、新しい学年の学びに慣れてきた頃だろう。


そんな秋の休日のある日。



「あら!フレイヤちゃん、上手ね!」


「本当!とっても丁寧に刺してあって綺麗です!」


今日はベルック公爵邸にお邪魔して、刺繍をしている。


「いえっ、とんでもないです!革が硬くて刺すのが難しくて……」


「ふふふっ。こんなに素敵なのをプレゼントされたら、レオンは喜ぶでしょうね」


「レオンお兄様はフレイヤ様からのプレゼントならその辺で拾った石でも喜びますわ」


さすがにそれは喜ばないと思うけど……。



私は王立アカデミーの3年生になり、レオン様は騎士団に入った。新入団の者は入って早々、2ヶ月間も寮へ泊まり込みで訓練と研修を受けなければならない。その間帰宅することも外出することも無く、外部との接触は基本禁止されている。

つまり、この2ヶ月間一切レオン様に会えていないのだ。

こんなことは初めてだし、忙しくてなかなか会えなくなるだろうと予想していた以上のことだった。


でも手紙は出せるらしく、週に一度のペースで手紙に花が一輪添えられて届く。


『君に会いたくて堪らない』

『今すぐ飛んでいって抱き締めたい』

『君の大輪の花のような可愛い笑顔が見たい』


……など。読んでは赤面してしまう内容ばかり。

嬉しいけれど、私としては元気で過ごされているのかとか、怪我はされていないかとか、レオン様ご自身のことが知りたいのになと思う。



そして2ヶ月間の研修期間を終えると、正式に騎士団への入団が許可され、入団式が行われる。

入団のお祝いとして、入団式後に新隊員の家族や婚約者から剣帯を贈るという風習があるらしく、こうして今マデリン様とカリナ様と一緒にレオン様に贈る剣帯に刺繍をしているところなのだ。


図柄は皆様と相談をして、護符の願いを込め柊の刺繍をすることにした。


刺繍は苦手じゃないけれど、何しろ初めての革への刺繍で、かなりの力がいるし、その分時間もかかる。指も痛くなる。

でも、心を込めて丁寧に刺したい。


騎士への無事を祈って思いを込めて刺繍を刺すものらしいのだ。



「さあ、そろそろ休憩にしましょう。手も休めないとね。痛いまま無理に刺して怪我でもしたら大変。レオンに怒られちゃうわ」


マデリン様に道具を取り上げられてしまい、強制的に休憩することに。


べルック公爵家の料理人お手製のいちじくと胡桃のパウンドケーキでティータイム。しっとりした生地にいちじくの甘味と香り、それに胡桃の食感が最高に美味しい。こんな美味しい不老長寿の果実のいちじくを食べているから、マデリン様はいつまでも年齢を感じさせない美しさを保っていらっしゃるのかもしれない。

……リーズ公爵家の料理人にも作ってもらうようお願いしてみよう。


「レオンの研修もあと少しね。フレイヤちゃんも、会えなくて寂しかったわよね」


「えっ!あっ、あのっ、は、はい……」


いきなり話を振られて、しかも寂しいって……そうなんですけど……寂しいとはっきり言うのはやっぱり恥ずかしい。


「フレイヤちゃんはアカデミーを卒業後、王宮魔導士になりたいの?」


「はい。自信はありませんが……」


一応その為に必要な魔法技術や知識を学べる講義を選択して受けている。やはり求められるレベルが高いのもあり、授業数も多く、昨年よりも遅くまで授業を受けている。

改めてお父様やお母様って凄いんだなぁと思った。


「勉強頑張ってね」


「ありがとうございます」


「勉強が大変だろうけど、結婚式の準備も進めなきゃね」


「はっ、はい……」


私とレオン様の結婚式は、私の卒業の日から2週間後に決まった。

伝統のある聖堂で、王都では一番大きく、我がリーズ公爵家もベルック公爵家も必ずそこで挙式をするそうだ。

そしてお互いに始まりの魔女の家系の公爵家と言うこともありかなりの注目度で、どこからか挙式の日が貴族間に漏れてしまった上に、挙式や披露宴に招待されたい貴族がとても多いらしく、まだ秋で社交シーズンに本格的に入っていないのにも関わらず、両家にはお茶会や夜会の招待状が大量に届いているらしい。


リーズ公爵家は取り敢えず全部断っていると言っていた。


何しろレオン様が騎士団の研修で不在なので、一緒に夜会に出られないのだ。アカデミーの新歓パーティーも今年は参加しなかった。レオン様に駄目だと言われたのだ。

女性ばかりのお茶会も、学生としての本分である勉学が忙しいのもあり、断っている。ベルック公爵家での少人数のものくらいしか参加していない。


「フレイヤちゃんはどんなドレスを着たいの?」


「私自身はよく分からなくて……でも、父が私に着て欲しいドレスがあると言っていますので、それを着ることになると思います」


「まあ!どんなのですか!」


「父のことなので地球の物じゃないかと思います」


「楽しみです!フレイヤ様の婚礼衣装、素敵だろうなぁ!」


いやいや。私の婚礼衣装なんかより、カリナ様の婚礼衣装の方が絶対素敵に着こなして誰もが憧れるような美しい花嫁になるに決まっている。


先日、エドワード殿下とカリナ様の婚約の件をこっそり教えてもらった。ほんっっっとうに吃驚した!兄妹みたいに仲良しだなぁ、なんて思ってたのに、まさかの恋人同士だったなんて……。

お二人の婚約はまだ少し先の発表になるそうだ。

でもカリナ様は2年生から文官科コースに編入をした。しかも卒業パーティーでエドワード殿下のパートナーとして参加されていたのも話題となり、2人は婚約するのではとすっかり貴族達の噂の的だ。


レオン様も教えてくだされば良かったのに。

婚約の件を教えてくださったマデリン様に、「貴女達はそういうところは似た者同士ね」と言われた。

そう言えば以前、レオン様にも「似た者同士だな」って言われた記憶がある。


きっと鈍感だという意味だろう……。


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