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魔法の星の恋物語  作者: 知香
第3部
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27.我が家の掟

今日は私の誕生日のお祝いをレオン様がしてくださると言って、一緒に舞台を観に行った。

私の誕生日はちょうど試験期間だったので、試験も終わり夏の休暇に入って落ち着いた今日にお出掛けを予定したのだ。


「観劇なんて本当に久し振りで、とっても楽しかったです!ありがとうございました!」


「喜んで貰えて良かった」


観劇の帰り、馬車の中でお礼を伝えて感想を言い合う。舞台に感動して興奮気味に話す私に、ニコニコと笑顔を浮かべて聞いてくださっていた。


「ショーン様は凄いですね!お客さんも沢山入っていたあの舞台に個人資金で投資をされているんですよね!?見る目があるのですね!」


「あいつは野性の勘だけは凄いからな。侯爵家の三男で騎士として身を立てるつもりで王都に出てきたのに、舞台芸術やら音楽やらに夢中になって、アカデミー在学中にも関わらず何となく始めた投資事業で成功しちゃったからな」


「今日はお会い出来ませんでしたが、ショーン様にはチケットのお礼をお伝えしないと」


「お礼なんて要らないよ。謝罪の品として向こうから差し出してきたんだから。仮装トーナメント大会の時の詫びだと。そして結婚式に呼べって」


本当に仲が良いなぁと思う。軽口を言っても認めているのは伝わってくる。


「もう一人のご友人の方は今後どうされるのですか?」


「もう一人?アルロのことか?」


今、初めてお名前が判明しました。

アルロ様と言うお名前だったのか。

ずっと「もう一人のご友人」と言っていた。

……すみませんと、心の中で謝る。


「あいつは一緒だ。騎士団だよ」


「そうなんですね。ご友人がご一緒だと安心しますね。寂しくもないですし」


「寂しい……か」


少し哀しげな表情をしているレオン様に気が付いて、しまったと思った。

極力寂しさを出さないようにしていた。その単語すら発しないように気を付けていた。


なのに思わず言ってしまった。


「そう、そうですよ!訓練とかが厳しいときも、ご友人がいたら励まし合ったりとかされるのでしょう!ところで入団にあたってご準備することとか大丈夫なのですか!?もう終わってるのですか!?」


会話を続けて何事も無かったように過ぎようとした。


「フレイヤ」


でもアンバーの瞳に簡単に捕まってしまう。向かえに座るレオン様に両手を握られ、ドキッとしてしまう。


「君にプレゼントがある」


にっこりと今日も美しい笑顔をしてから、私の手にリボンの掛けられた小さな箱が置かれた。


「あ……ありがとうございます」


「開けてみて」


言われるがままにリボンをほどいて箱を開けてみたら、イヤリングが入っていた。


「これは……ガラス?」


雫の形の上部が琥珀色で下部が青色の2色が中央でグラデーション風に混じり合ったイヤリング。


「リーズ公爵領のガラス工房で作ってもらった。冬の休暇の時に一緒に領内の町に下りた際にガラス工房を楽しげに眺めていたから、好きなのかと思って」


いつの間に。わざわざ領地で作ってもらったなんて。


お礼を言いたいのに胸がいっぱいで言葉が出てこない。2色が混同しているガラスの雫の綺麗さに目を離すことも出来なかった。


ガラス工房の前を通る時、ガラス製品の色鮮やかにキラキラと輝く様子を見て私が心を踊らせていたのを、レオン様はよく見ていてくださっていたんだ。


そして私が嬉々として領地の特産品を話しているのを聞いて、領地を誇りに思っているのも感じ取ってくださったんだ。だからわざわざリーズ公爵領で作ってもらったのだろう。王都にだってガラス製のアクセサリーを扱うお店はあるのだから。


涙が出そうだった。何の涙なんだろう。


「泣きそうな顔をしているよ」


レオン様の大きな手が頬に添えられる。


仕方ないと思う。

嬉しいけれど、寂しい。

こんな素敵な物を用意してくださったのに、レオン様の誕生日に私は邸にあるハンカチに刺繍しただけだった。比べるのも烏滸がましい。自分が情けない。

そんないろんな感情が入り交じっていた。


レオン様は箱からイヤリングを取り出して、黙り込んで動けなくなった私の耳に着けてくださった。


「痛くない?」


胸がいっぱいで苦しくて、相変わらず言葉が出てこない私は、頷くだけ。


「君がこれを着けていてくれたら、会えない時でも、俺は君の側にいられる気がする」


レオン様の手で、私の左耳に髪をかけられる。


「綺麗だ」


何か言わなきゃと思った。


「……嬉しい……です」


口は少ししか動いてくれなかった。聞こえていたかも分からない。


唇にキスをされる。舌が痺れてしまうような濃厚なキスで、唇が離れて首筋にもキスをされる。耳に髪をかけられていて露になったところを強く吸われた。そこは以前にもキスマークをつけられたところ。


「ん……」


思わず声が出た。

あれから数ヶ月経って、当たり前だけどもう痕は消えていた。新しくつけられた痕に嬉しいと思ってしまった。

私の頬に触れているレオン様の手に、頬を擦り寄せる。


「フレイヤ……」


「もっと……キスしてください」


こんなおねだり、今までしたことないのに。

嬉しかったからだろうか。

寂しくて甘えたくなったからだろうか。


唇が重なって、離れたくなくなる。


「……ごめん。今日は……理性を保てない……」


野性的な目で見つめられ、座面に押し倒されて、ドキドキしてしまう。もう何も考えられない程、頭が逆上せ上がっていた。

何度も何度もキスをして、レオン様の唇が徐々に下がって肌を滑ってゆく。

抵抗するどころか、両手でレオン様の頭を抱えていた。




ガチャ。


「まあ、こんなことだろうとは思ったけど」


突然何の前触れも無く開かれた馬車の扉。


「「!!!」」


眩しく感じる扉の前にはエミリオ様が立っていた。


「……いきなり開けるなよ」


「邸に着いて御者が声を掛けても出てこないって困ってたから。俺も一応ノックはしたぞ?」


前触れは無かったわけでは無いようだ……。

全然気が付かなかった。

邸に着いたことも、御者の声にも、ノックの音にも……


だんだんと状況を理解して恥ずかしさに顔が熱くなるのが分かった。


私は今……完全に流されていた気がする……

あれは……エミリオ様が登場しなかったら……不味かったのではないだろうか……


レオン様が抱き起こしてくださったので、乱れた髪や服を慌てて整えた。でも恥ずかしくてエミリオ様の方を見られない。


「フレイヤを驚かそうと皆邸の中で待ってるぞ?母さんやカリナが見たら半殺しにされてたな」


「…………」


全くその通りでしょう。


「もう少し開けるのが遅い方が良かったか?悪いな、せっかくの実践中だったのに」


「実践とか言うな!」


……実践?


「お前にやった本は読んだんだろ?」


「もうそれ以上は言わなくていいからっ!」


レオン様が取り乱して怒っている。

何だろう……。

多分、私は知らない方が良いような気がする……。


「いい加減邸に入らないと嗅ぎ付けてくるぞ」


「……分かってるよ」


……薄々感じてたけれど、多分、レオン様って、べルック公爵家の中で弄られる立場なんだろうな。



私の誕生日をべルック公爵家の皆様がお祝いしてくださると言って、お呼ばれされていた。

赤くなった顔を冷まそうと手の甲で頬に触れるけれど、全然冷めない。これは冷水を被らないと無理かもしれない。


赤い顔のまま邸に入ったら、勘の鋭いマデリン様がすぐさま髪で隠した首もとのキスマークを発見してしまい、魔法で作られた手枷をレオン様に嵌めてしまった。


「何するんだよ!」


「レオン。フレイヤちゃんに触れたら許さないわよ」


なんとも凄みのある一言で、私はレオン様を庇う台詞をゴクリと飲み込んでしまったのだった。

……邸に入っても嗅ぎ付けられました。


レオン様、今日もごめんなさい。

マデリン様には逆らえません。

見捨てます。


豪華な食事をご用意して頂き、ベルック公爵家の皆様と楽しい時間を過ごした。

手枷のせいで食事をまともに食べられないレオン様が気の毒だったけれど。

食べさせてあげようとしたら、マデリン様に止められた。


「だめよ、フレイヤちゃん。貴女ごと食べられちゃうわよ?」


「もう食わせてやれば?今は避妊具もかなり改良されてきてるし」


「エミリオお兄様!そういう問題じゃないですよ!」


「どういう問題だ?」


「これはアナベル様によって作られた我が家の掟よ!」


「……初耳なんだけど」


「エミリオも結婚を考える相手とはきちんと弁えるのよ」


「……面倒くさ」


「エミリオはお前自身が食われないようにも気を付けないとな。薬を盛られないようにな」


「……父さん、貴方はこれまでの人生で何をされてきたんだ?」



……うん。この家族、なんか凄い。




END


これで第3部は完結です。

第4部は明日から更新します。

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