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魔法の星の恋物語  作者: 知香
第3部
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24.個人的見解

今日は花祭り。


「フレイヤ様は何色が良いですか!?」


「どれも可愛くて迷います。カリナ様は何色にされるのですか?」


カリナ様は毎年花冠を着けるとのことで、一緒にメイン大通りの花屋の屋台で選んでいる。


「今年は何色にしようかな~。この淡緑の薔薇も素敵だなぁ」


様々な色の、様々な花で花冠が作られている。カラフルでゴージャスな花冠もあれば、一種類の花で作られたシンプルなものもあり、本当に多種多様。小さな女の子用の可愛らしいものから、大人の女性でも着けられるような髪飾りの様な小さな物もある。

本当に迷ってしまう。


「やっぱりこの淡緑の薔薇とかすみ草で作られた花冠にしよう!」


「素敵です!カリナ様にお似合いですよ」


大振りな薔薇に小花のかすみ草は、美しさと可愛らしさを兼ね備えたカリナ様にはピッタリだと思う。


(私はどうしよう~……)


本当に迷ってしまい、決められない。


「レオン様はどれが良いと思いますか?」


花祭りに連れてきてくださったレオン様に、意見を求めてみる。沢山ありすぎて自分で決められないのだ。


「黄色の花冠かな」


すっと手を伸ばして一つを手に取ると、私の頭に載せてしまった。


「俺の色を身につけていて欲しい」


俺の色……

レオン様の琥珀色の瞳のことだろうか。


恥ずかしくなって顔が熱くなる。


私が固まってしまっている間に、花冠の代金の支払いまでして貰ってしまった。


「黄色のフリージアとミモザですか!素敵ですね!」


私の頭の上の花冠を見て、カリナ様が褒めてくださる。


「……ありがとうございます」


「ああ……レオンお兄様が選んだのですね」


私の異様に照れている様子を見て察してくださった。




「レオンお兄様!お二人が仲が良いのは素敵なことですけれど、今日は私もいるのですよ。もう少し気を遣ってくださいませ」


馬車の中でカリナ様に言われてしまった。


「カリナが勝手についてきたんだろ?俺はフレイヤと2人で花祭りを楽しみたかったのに」


「だって、エミリオお兄様は付き合ってくださらないんだもの!」


「殿下にお願いすれば良かったじゃないか」


「殿下は王宮庭園を訪れる貴族や市民を迎えるのが毎年恒例なんです。いくら強い殿下とはいえ、さすがに町にまで気軽に来られませんわ」


「王宮庭園に着いたら殿下に押し付けるか」


「言い方が邪魔者扱い!」


今日も仲の良いご兄妹です。


「それに私だってフレイヤ様とお出掛けしたかったのです!未来の私のお義姉様ですもの。仲良くしたいのです」


隣に座るカリナ様に腕を組まれ、照れてしまう。凄く良い香りがするし、艶ふわの髪が当たって女なのにドキドキしてしまう。

しかも、お義姉様なんて!!

こんな可愛い義妹が出来てしまうという事実に興奮してしまう。きょうだいのいない私にとって、こんな嬉しいことはない。


「しかも何故フレイヤの隣にカリナが座るんだ……ぶつぶつ」


何かレオン様が小声で呟いている。そして小さく溜め息をついている。

でも私はカリナ様に促されるまま、窓の外の賑やかな花祭りの様子を一緒に眺めていた。

妹がいたら、こんな感じなんだなぁ……。



◇◇◇



王宮庭園に着いて、とにもかくにも殿下を探しだし、宣言通りカリナを引き渡した。


カリナは少し喚いていたが、気にせずさっさと背を向けてフレイヤと庭園を歩き始めた。


やっと2人っきりになれた。

……まあ、周りには他の貴族も市民も沢山居るけれど。ジロジロと見られている感はあるが、隣にフレイヤが居ると思うだけで気にならなくなるから不思議だ。


「カリナ様は宜しかったのですか?それにエドワード殿下もまだ貴族の方への挨拶があるのではないのですか?」


優しいフレイヤは2人の心配をする。


「大丈夫。毎年俺達が来る頃には挨拶にも疲れているから、丁度いいとか言って切り上げるよ。2人で適当に楽しむんじゃないかな」


「そうなのですか……」


「そんなことより、フレイヤは王宮庭園に来るのは初めてなんでしょ?見たいところとかある?」


「恥ずかしながらそんなに花に詳しくないので、見たいところとかは無いのですが」


「じゃあ一通り見て回ろう」


毎年カリナに連れてこられて何度も見ている庭園なのに、フレイヤと一緒に見て回れるだけで花の楽園のここが、さらに特別な場所に感じる。


「レオン様はお花に詳しいのですか?」


「そんなに詳しくない。君にプレゼントする度に少しずつ覚えているくらいだ」


「私も、レオン様に頂いて覚えています」


「似た者同士だな」


はにかんで笑っているのも愛おしい。


「フレイヤの好きな花は?」


「何でしょう。考えたこともなかったです。本当に令嬢らしくなくて……」


「ここに咲いている花ならどんなのが好き?」


ちょっと立ち止まって、庭園をぐるりと見渡す。俺の問いに真面目に答えようと真剣に花達を眺めている。

純粋で心優しい性格。


「チューリップ……かな」


一生懸命考えて出した答えなのに、どこか自信無さそう。何故その花が好きなのか理由まで問い詰めたら困らせてしまうだろうな。


「昨年ここに来たとき、カリナに花言葉の講義をされたんだ」


「花言葉の講義ですか!さすがカリナ様……」


「その時、確か赤色のチューリップの花言葉は≪愛の告白≫だって教えられた。俺は君に赤色のチューリップの花束を贈りたい」


顔も首も耳も、出ている肌が赤くなる。

それが可愛らしくて肩を抱いてピタリと寄り添えば、フレイヤの着けている花冠から甘い香りが漂ってくる。魔力の香りに少し似ている。


1年前までは花言葉なんて一つも知らなかった。覚えるなんて面倒だとも思っていた。花言葉を覚えられるなんて兄もカリナも凄い記憶力だとも感じていた。

まだ俺はそんなに詳しくないけれど、フレイヤにあげたいと思うだけで少しずつでも覚えられるのだから、不思議なものだ。


情熱的な恋をする日は来ないだろうと自信すらあったのに。今の俺はフレイヤに情熱的になっている。彼女に捧げる愛の言葉は恥ずかしげもなくスラスラ出てくる。


「ここはお花のトンネルですね。とっても素敵です」


目の前には黄色のモッコウバラのトンネルがある。2人並んでトンネルの中を潜って歩く。花も葉もとても旺盛で、トンネルの中は日の光を完全に遮ってしまう程だ。


「モッコウバラの花言葉は≪あなたにふさわしい人≫なんだって」


「ふさわしい……人」


「俺は君にふさわしいだろうか?」


「わっ…私には勿体ない程で……私の方がふさわしいかどうか……」


「ねえ、フレイヤ。以前も言ったけど、俺にとっては自分の好きな人がふさわしい人なんだ。だから、俺のふさわしい人は君しかいない」


「……私は、貴方の隣に立っても恥ずかしくない人間になりたい。自信を持って貴方の隣に立ちたいのです」


「君の言う恥ずかしくない人間ってどんな人なの?」


「……美しい容姿で、綺麗な所作で、魔法の技術が高い人……です」


「こんなにも可愛らしくて魅力的だし、公爵家できちんと教育された美しい所作で、魔法の技術も十分に高くなったのに、まだ自信がない?」


「かっ…!可愛らしいと思われるのは、レオン様の贔屓目が凄いだけです!所作もカリナ様に比べたら、本当にまだまだで……。魔法も、この間の仮装トーナメント大会でいまいちな結果でしたし……」


「贔屓目なしで見ているよ?本当に可愛いし、所作も十分美しい。それに、仮装トーナメント大会でも十分な成績だったじゃないか。君の言う様な条件をクリアしている女性は、君を覗いたらアカデミーにはカリナしか居なくなるよ」


「そんなことは……」


「魔法戦の本戦に出場出来た令嬢は君とカリナ以外に1人だけだっただろう?確か子爵家の令嬢で同性愛者であることを公言してたんじゃなかったかな。カリナと準決勝で対戦出来たことを喜んでいたよね。それに君の方がずっと可愛い。剣術戦の本戦はルイーズだけだったし」


「…………」


「どう?」


「……はい」


「俺は君にふさわしいかな?」


「……レオン様の理論で言えば……自分が好きな人がふさわしい人とするならば……私は、貴方が……その……あの……好き、なので…………」


「ふさわしい?」


恥ずかしがりながら小さく頷いてくれた。好きだと言ってくれたことが、嬉しくてたまらない。


「恥ずかしくて、これ以上は言えません……!言わせないでくださいませ!」


真っ赤になりながら必死に怒っているのに、全然恐くないし、寧ろ可愛くて仕方がない。

人目が無ければ彼女の魅力的な唇を奪っていたところだろう。


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