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魔法の星の恋物語  作者: 知香
第3部
82/159

19.剣術戦①

「レオン。気合い入ってるな」


目の前に現れたのは、エドワード殿下。


「…………」


「そんな嫌そうな顔をするなよ」


そんなこと言われても仕方がない。


「予選では殿下とやり合う余裕はありませんので、避けてたんです。何で来るんですか」


殿下は早々に片を付けられる方ではない。殿下にばかり時間を取られては、他の者を倒す時間が無くなる。今は一人でも多く倒して本戦へ出場する者を減らしたいのだ。


「お前が珍しくやる気になっているから見に来た」


そんなことを話しながら周りの者を倒していく。


「隣で戦っていたら審判に共闘していると思われるじゃないですか。共闘は禁止なので退場させられますよ」


「しょうがないなぁ。離れるとするか」


殿下が向かって行った方向とは反対に向き直り、周りにいる者を次々と倒していく。


「ん?」


ある学生の脇腹に横一文字に振ると勢いそのままに体が競技場外へ飛んでいった。そして目の前が空いて、その少し先に見覚えのある顔があった。


「げっ!!レオンじゃん!」


「ショーン……」


「マジかよ!避けてたのに!本戦出たいんだけど!」


「悪いな」


「やるんかい!殿下は見逃してくれたぞ!」


はは~。そういうことか。

殿下はショーンを避けたから俺のところに来てしまったのか。


「お前には恨みしかない」


「誕生日のときのことは謝ったじゃん!俺に構わずにもっとちょろい奴を減らしてくれよ!」


「大丈夫だ。あとは殿下が減らしてくれる」


「待て待てっ!」


悪いがここで鬱憤をはらさせてもらおう。

フレイヤに余計なことを言いやがって。

今日だってフレイヤの友人にちょっかいをかけやがって。


踏み込んで剣を打ち下ろす。剣で受け止められカーンと一際大きな音がしてビリビリと手に振動が伝わる。

ショーンは動きが素早く、相手の力を流すのが上手い。なので流す余裕すら与えずに次々に打ち込んで剣で受け止めさせる。


「何だよ!マジじゃんか!」


「当たり前だ」


「見逃してくれたら人気の観劇のチケットやるぞ!フレイヤちゃんとデート出来るぞ!」


せこいな。


「馬鹿か。うちは公爵家だぞ。兄さんの伝を使えば手に入れるのは容易い」


「くっそー!」


観念したのか吹っ切れたのか、ショーンも本気で向かってきた。打ち込まれて受け身になってばかりいたのを改め、打ち返してきた。剣で受け止めながらショーンの懐を少しずつ拡げさせる。ショーンもそれに気付き、脇を締める様に構え直そうとする一瞬に手元を狙って剣を振り下ろす。


「ぃてっ!」


剣を握っていた手に俺の剣が当たった衝撃で、ショーンは剣を地面に落としカランカランと鳴る。


「まだやるか?」


「……もうこの手じゃ剣を持てない」


はぁと溜め息をついて、このままリタイヤすることにしたようだ。


「フレイヤちゃんが見てる目の前で優勝出来るようにせいぜい頑張れよ」


ショーンは吐き捨てるように言って競技場を下りて行った。



再び周囲の者を斬り倒していく。数が減ってきて近付いてくる者が居なくなるが、目に写った者へと剣を向けていく。

途中ルイーズも見掛けたが、向こうも俺とやるのを避けるように離れていったので、俺も特に追うこともせず、ひたすら数減らしをした。


そして終了の合図が鳴る。


残ったのは8人。良い数字だ。

トーナメントの抽選をして本戦だ。



◇◇◇



「あの娘、フレイヤちゃんの親戚なんだって?」


「そうなんです」


「ここまで残るなんて強いんだね」


ショーン様にルイーズのことを褒められちょっと嬉しく思う。


「でも殿下が次の相手ではなぁ。残念だけど決勝は昨年や一昨年同様、殿下とレオンかな」


レオン様は本戦でも圧倒的な強さで決勝進出を決めた。本当に、強かった……。

最初に対戦した1年生なんて攻撃に出る隙もなく押されて、あっという間に決着がつき、相手が呆気に取られていた程だ。


「それはどうだろうな」


「ん?どういうことだ?レオン」


「ルイーズは速いよ。俺も一度負けている。その時雪上だったから、彼女の本気はもっと速いだろう。それに反射も良いし柔軟性もある。3年には居ないタイプだから、殿下にとっては戦い慣れていない相手だ」


「レオンが負けたのか!?」


「あっ……でも、それは、私のせいでもあって……」


「フレイヤのせいじゃないよ。俺が集中しきれていなかったのが悪かったんだ」


レオン様が私の肩を抱いてフォローしてくださる。


「何イチャイチャしてんだよ」


「今は何かむかつくな~」


ショーン様とレオン様のご友人のもう一人の方に言われてしまった。


「す……すみません!」


ちなみにこのご友人の方はつい先程レオン様と対戦したばかり。レオン様に打たれた左脇腹がまだ痛むようで、右手でさすっている。防御魔法を掛けていてもレオン様の一撃は重くて内部に響くような痛みが残るらしい。授業で何度も対戦しているので慣れているって仰っていたけれど。


「気にしなくて良いよ。ただ羨ましいだけなんだから」


「くそっ!お前なんて決勝で負けてしまえ!!」


レオン様は気にせず涼しい顔をしていらっしゃる。

男性のご友人はこういった関係性が普通なのでしょうか?私って本当に世間知らずなんだな……。



審判の先生の合図で、殿下とルイーズの試合が始まる。


ルイーズは本当に速くて、殿下に臆することなく攻めていく。2人の打ち合いは速くて、素人の私には目で追うことも儘ならない。


「彼女、これまでの試合より速いな。抑えてたんだな」


「多分、まだ速くなると思う」


これまでの試合の中でも一際息を飲むような迫力ある打ち合いに、見ている者達は静かに見守っている。

隣のレオン様も真剣な目をして2人の動きを追っているようだ。この勝った方と次試合をするのだから当たり前だろうけれど。


端からみていると殿下が押しているように見える。徐々に競技場の端へとルイーズを追い詰めている。


でも端まで来るとルイーズがするりと潜り抜けて殿下の方が追い詰められている体勢に替わる。それでも力は殿下の方がある為か、ルイーズが追い詰めきれず殿下が押し返す。


「打ち合うスピードが上がったな」


「ルイーズが上げたからな。これだけ速いと殿下の持ち味の剣の重さも少し軽減される」


「お互い隙もなく打ち合い、決め手に欠けるな」


殿下の鋭い突きも、ルイーズは剣で流しながら避けている。そのままコンパクトな動きで反撃してもさらりと殿下に避けられてまた打ち合いとなる。


「息が上がってきているな」


かなり長い時間打ち合っている。私にはそんなに息が上がっているように見えないし、速い動きのままの印象だ。騎士科の体力って凄いなぁと思う。予選から剣を振るい続けているのだから。


そして決着は一瞬だった。


ルイーズの後ろに下がったタイミングに合わせ殿下の下から強く掬い上げるように振り上げた剣にルイーズが弾かれ、体勢を崩した一瞬に一気に剣を振り下ろした。それがルイーズに当たると思ったのに、すり抜けてルイーズの剣が殿下の胴に入った。


審判の先生の声が掛かり、ルイーズが勝った。

2人へ大きな歓声と拍手が沸き起こる。



◇◇◇



「強いな、ルイーズ」


試合が終わり、彼女を称え握手を求める。


「ありがとうございます」


彼女が握手に応じてくれたので手を握れば、女性とは思えない硬い手だった。これまで男性以上の努力を重ねてきたのだろうと思った。


「決勝での健闘を祈るよ」


「殿下と対戦する機会が持てたことを大変光栄に思います」


彼女は爽やかな笑顔だった。

私は負けたのに、不思議と清々しい気分だった。


競技場から下りると、いつもの煩く賑やかな友人達が待っていた。


「殿下がレオン以外に負けるところを久々に見ましたよ」


「貴重だよな~。殿下もよくあんなスピードについていきますよね。俺は無理だ」


「ショーンには無理だろうな」


「殿下、はっきり言わないでくださいよ!」


毎年何故か決勝で当たっていたレオンと目が合う。抽選の筈なのに、教師が何か細工でもしているのかと思う程、決勝以外で対戦することはなかった。

でも今年は私が決勝に行くことが出来なかった。


「レオンと戦えなくて残念だよ」


「殿下とは散々やってるので」


「お前は冷たいな~」


「殿下のお陰でルイーズの力を見れました。ありがとうございます」


「決勝に上がってきたのが私じゃなくルイーズだったのが嬉しそうに聞こえるぞ」


「気のせいです」


目をそらされる。


「頑張れよ」


軽く笑ってレオンを送り出す。


「殿下、おつかれさまです。お怪我は?」


気がつくとカリナが側に寄ってきていた。


「問題ない。いつものことだ」


「そうですか。治癒魔法をして差し上げたかったのに、残念」


魔法戦で予選から決勝まで戦ったばかりなのに、治癒魔法を掛けられる魔力が残っているのか。アナベル様の直系魔女は畏るべしだな。


「みっともない姿を見せたな」


「あら。私、幼い頃からエミリオお兄様やレオンお兄様と剣を交えて負けた殿下も勝った殿下も、両方とも何度も見てますよ?」


「それもそうか」


くすりと笑うカリナは少し悪戯っぽさがあり、妖艶な魔女だった。


可愛らしかった少女は、いつの間にか強い大人の女性になっていた。



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