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魔法の星の恋物語  作者: 知香
第3部
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16.早春の頃

帰宅すると両親に殿下から聞き出した話と共に、結婚式の時期について相談した。俺の希望等聞かなくても分かっていたとばかりに、既に色々と根回しされていたことを知った。


言ってくれればいいのに!


今はとりあえず、数日後の騎士団の入団試験に集中することと、翌月の仮装トーナメント大会のことを考えなさいと言われた。


確かに。殿下の言う通り、卒業前は忙しい。


騎士団への入団希望の書類はもう送っている。実技試験と身体検査を受けるだけ。アカデミーの教師の推薦状や過去の仮装トーナメント大会の成績も書類に添付されているので、そうそう落とされることはないだろうけれど。


両親との話を終えて席を立とうとした時、母に呼び止められた。


「エドワード殿下とお話しした時、殿下はどうされるおつもりか聞いた?」


「どう?……カリナのことですか?」


「レオンも分かるようになったのね」


母がニコニコしている。何故遠回し気味に話すのだ。はっきり何のことだと言ってくれればいいのに。貴族ってそう言うものなのだろうけれど。


「いろいろと儘ならないと仰っていました。なので、独りよがりでいて他の男に取られても知りませんよと言っておきました」


「そう。殿下もまだまだね。ありがとう、レオン」


母が何を考えているのかはさっぱり分からないが、おそらく殿下に対して少し不満に思っているのだろうな。




そして、数日後の騎士団の入団試験は何事もなく終えた。入団希望の受験者は殆どが共に学んできたアカデミーの学生だ。

騎士団に入れるのは主に魔力のある貴族でなければならない。騎士団は王族の護衛、王宮の警備、貴族関連の事件の対処等を行う為、貴族籍があり貴族としての知識や振る舞いが出来る必要があるのだ。稀に自領に優秀な平民の者がいた場合に領主と養子縁組をして、王立アカデミーを経て騎士団に入ることもある。身元引受人がしっかりして教養があれば認められるので、比較的寛容であると思う。


一方で王都の警備を担う警備隊は、実力さえあれば平民でも魔力が無くてもなれる。


騎士団の入団試験に落ちた者は、翌年にまた受験し直すか、警備隊に入るか、自領の騎士になる者がほとんどだ。警備隊や自領の騎士となっても再び騎士団の試験を受ける者もいる。やはり騎士団に入れば一代限りでも騎士の称号を得て爵位を賜れ、また給料も良いので、俺のような貴族の次男以降は希望する者が多い。


まあ、俺はリーズ公爵家に婿入りするので爵位やら給料やらはあまり気にしないのだが、幼い頃からエドワード殿下と共に騎士団に入ることを目指し鍛練をし、殿下の友人と言う名の護衛兼側近として育てられてきたので、婚約しても騎士団に入ると言う目標は変わらない。


殿下も王族だからと特別扱いは無く、同じ試験と身体検査を受けた。


結果はまた後日だ。



◇◇◇



いつの間にか暖かくなった空気に誘われるように咲き出した花の周りを、虫や鳥達が飛び回るようになった早春。


仮装トーナメント大会の日がやってきた。



「す……すごい!可愛いです!!」


「まあ、ありがとうございます」


今日も見目麗しいカリナ様の仮装は、白地のワンピースに生花をあしらった姿。そう、昨年の花祭りの時の格好ととても似ている。ワンピースの丈が膝上丈で貴族令嬢としてはかなり珍しいけれど、カリナ様の美脚が活かされた素敵な仮装だ。まさに花の妖精。

レオン様が私に妖精の格好をすれば勝手に男が惑わされるよと言っていたけれど、カリナ様は本当に男子学生を惑わしている。誰もが振り返り視線を独り占めにし、放心状態の方もいる。


私には無理だ……。

妖精にしなくて良かった。

こんな素敵な方と比べられ笑い者にでもされたら、私はアカデミーにどんな顔をして行けば良いのか分からない。


「何故スカート部分よりも上半身の方にそんなに沢山花を盛っているんだ?」


エドワード殿下がカリナ様に不思議そうに聞いている。確かに、圧倒的に上半身……というより胸元に花がこれでもかと言う程盛られている。


「兄さんに胸がないって言われたらしいですよ。誤魔化すために花を盛っているんです」


「何で言うの!?レオンお兄様サイテー!!」


……今日も仲の良いご兄妹です。



「フレイヤ様の仮装は……何ですか?」


「えっと、獅子使いです」


「獅子使い……サーカスの?」


「そうです!」


結局、妖精も女神も私には無理だと思い、獅子使いにした。服装は乗馬服に似ているが、ジャケットを赤にしてサーカスっぽく派手にした。服装だけでは獅子使いに見えないかなと思い、尻尾を着けてみたけれど、やっぱり伝わらなかったみたいでちょっとショック。獅子を魔法で出したら良かったかな。でもさすがに魔力を使いすぎちゃうかなと思って辞めたのだ。


「言い得て妙だな」


「そうですわね。レオンお兄様を調教できるのはフレイヤ様くらいでしょう」


……はっ!

そう言う反応をされてしまうのか!?


「女神じゃなかったのは残念だけど、凛々しい姿のフレイヤも素敵だよ」


そんなことを言うレオン様は昔の騎士服を復刻させたらしく、格好良すぎて直視出来ない。レオン様の美形の顔立ちにも慣れてきたと思っていたけれど、見慣れない格好をされると美しさと格好良さに眩暈がしてしまう。


遠巻きにレオン様を見ているご令嬢の小さな悲鳴が、小さい筈なのに私の耳にも届いてくる。不思議だ。


「フレイヤちゃんのお友達のエレナちゃんだっけ?これは昨年から人気の舞台の魔女の格好でしょ!?」


「はっ、はい!あの舞台のお話が好きで、3度観に行きまして……」


「あの舞台面白いよね~!その格好もとても似合ってるよ~!こちらの君はレベッカちゃんだよね!これは童話の女の子の格好でしょ!?」


「はっ、はい!昔から好きで……」


「童話の少女の格好を成長した女性がすると色気が足されて男は興奮してしま────」


「ショーン!セクハラはやめろ!!!」


私の友人に絡んでいたショーン様を、レオン様が止めに入ってくださいました。


「俺の友人が失礼なことを言ってすまない」


「だ、だ、だ、だいじょうぶですっ……!!!」


レオン様に直接話し掛けられ、麗しいご尊顔に緊張と興奮で上ずった声で答える友人の顔は、それはもう真っ赤だ。

それもその筈。友人2人はもともとレオン様ファンだったのだ。憧れの方と対面して緊張しない訳がない。私のせい(?)でレオン様とも顔を合わせる機会が出来てしまって、多少は慣れたそうだけれど、今日の格好良さは半端ではない。しかも、エドワード殿下やカリナ様もいらっしゃるので余計に緊張することだろう。


この1年程で殿下やカリナ様とも普通に会話できるようになった私は、かなりの成長を感じる……。


1年前の仮装トーナメント大会では、レオン様だとは知らずに誰もが不審に思って距離を取っていた猪さんに突撃していた。今思えば身の程知らずで無鉄砲だったかもしれない。自分の好奇心と行動力も、もう少し慎重になるべきだなと反省する。

優しく対応してくださったレオン様には感謝と、素晴らしい魔法技術にやっぱり憧れがある。


でも、もしあの時私が声を掛けなかったら、私達の関係はどうなっていただろうか。もしかしたら以降会話することも無かったかもしれない。お互いの存在すら知らないままに、アカデミーを卒業することになったかもしれない。

そして、殿下やカリナ様とも近しくなることも無かっただろうな。それに、魔力コントロールも上手く出来ないままだったかもしれない。


今こうやって私に優しく微笑み掛けてくださっているのも、別の令嬢がされていたかもしれない。


「フレイヤ。魔法戦、頑張ってね」


タラレバを言っていても仕方がない。繋いできた縁と今に感謝しつつ、今日は大会に集中して頑張ろう。


「ありがとうございます。レオン様も頑張ってくださいね」


「ああ。ありがとう」


……返された美形の笑顔が半端ない。


友人2人が直ぐ後ろで悶絶しているのか、妖しげな悲鳴と共に息を吸う音が聞こえた。


恐らく、友人だけじゃなく、近くにいて見てしまった令嬢達も見惚れたことだろうな。


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