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魔法の星の恋物語  作者: 知香
第3部
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15.得手勝手

「殿下、アリーチェ王女殿下の結婚の時期は決まりましたか?」


「あのなぁ……いくらお前でも正式に発表されていないことを教えられるか」


昼に食堂の個室で殿下にダメ元で聞いてみるが、やっぱりダメだった。


「そんなこと聞いてどうするんだ?」


「フレイヤがアカデミーを卒業したら直ぐに結婚したいのです。アリーチェ王女殿下と被らないようにしなければならないので、確認をと思いまして」


「なるほどね……」


「それに、アリーチェ王女殿下が婚約を発表したことで、今婚約や結婚をする貴族が増えております。聖堂を押さえられなくなったら結婚が遅くなってしまい困りますので早く知りたいのです」


「困るって……」


アリーチェ王女殿下が結婚をして子どもが生まれたら、その子どもは王位継承者になる為、婚約者にしたり側近にしたいと企む貴族が子や孫を婚約させたり結婚をさせて、同世代の子を成そうとしている。

お陰で社交界はとても活発だ。兄にもカリナにも多くの縁談話が来る。目を通す父や母、それに執事や秘書も、そして当人もうんざりしている。

たまに俺宛にも来る。もういい加減にして欲しい。


「一刻も早く結婚したい気持ちなのに、聖堂が押さえられないからと結婚が先延ばしになるのは嫌なので」


「嫌って……そんなにか?」


「フレイヤが寂しいと言っているのです」


「寂しい?」


「俺がアカデミーを卒業したら、今みたいに毎日のように会えなくなるのが寂しいと言っているのです」


「…………」


「だからフレイヤがアカデミーを卒業したら直ぐにでも、可能なら翌日にでも式を挙げたい」


「翌日は早すぎるだろ」


「寂しいと思わせてしまう時間が少しでも短い方が良いでしょう?」


「いやいや……卒業前は試験もあるし忙しいのではないか?その忙しい中、結婚式の準備までしなければならないのは大変ではないのか?女性はいろいろと準備することが多いだろう」


「……2週間後くらい」


「フレイヤの卒業後の進路希望は?」


「王宮魔導士です」


「……王宮魔導士になって直ぐ式を挙げるのは、それこそ忙しそうだな。仕事に慣れ落ち着いてからでは、お前は遅くて待てないと?」


「待てません」


当たり前だ。


「卒業してから仕事が始まるまでの、夏の休暇時期の間に式を挙げたい訳か」


「はい」


その通りだ。


「……ぶれないな、お前は」


はぁと溜め息をつく殿下。あきれられているようだけど、譲れないことなのだ。


「王族の結婚式は簡単に決めて行えるものではない。まして次期国王だ。規模も大きく盛大で準備も時間が掛かる。今のところ大きな動きはない。1年後に式を挙げることは無いだろう。まして、夏の暑い時期に結婚の式典やパレードを行うとは考えられない」


「本当ですか!」


「友人として言えることはそんなとこだな」


王族の子と同世代の子を成そうと躍起になっている貴族達が俺にとっては迷惑で理解できないでいたが、俺は殿下と同い年の友人で良かったと、今本気で感謝した。


「ありがとうございます!直ぐに聖堂を押さえに行きます!」


「……ちゃんと両家の親とも相談しろよ」


とりあえず帰宅したら両親に相談してリーズ公爵家にも許可を取って、もちろんフレイヤにも伝えて、フレイヤはどんな反応をするだろうか、喜ぶだろうか、恥ずかしがるだろうか、どちらにしろ何にせよ可愛いことに変わりはないだろうな。日取りが決まればフレイヤも少しは寂しいと思わないだろうか。寂しいのも1年だけと思えば頑張れるだろうか。いや、そんなことを言いながら結局は俺が会えなくなるのが嫌なのだ。


「おい」


そして寂しくなんか無いと、平気だと言われることの方が寂しく悲しいだろうな。寂しいから会いたいと思われたい気持ちがあるのだ。縋るように体を寄せ服をぎゅっと握られ寂しいと言われたのが、どうしようもなく可愛くて嬉しかったのだから。


「おーい」


もっと俺のそばに居たいと思われたい。俺を必要と思って貰いたい。こんな思いを抱いてしまうなんて、自分勝手で欲深くて最低だな────


「戻ってこいよ」


焦点が合って目の前に殿下がいることを思い出す。


「……すみません」


「結婚式、私も呼んでくれよ」


殿下を呼ぶとなると警備とかどうするんだ?


「面倒臭そうな顔をするなよ」


「顔に出てましたか?すみません」


「……相変わらず正直だな」


確かに一番の友人であるこの方を呼ばない訳にはいかない。幼い頃からずっと傍におり、共に学んできたし、一緒に遊んできた。変装してでも参加してきそうだし。


「殿下ご自身はどうされるのですか?」


「どうとは?」


「カリナですよ。あいつへの縁談話、夜会への招待状の数は凄いですよ。それこそアリーチェ王女殿下の婚約が発表されてから急増しましたから」


「そうか……そうだろうな」


「夜会に参加しても次から次へとダンスの申し込みをされて辟易しているようですし。余計なお世話かもしれませんが、兄としてはさっさと婚約でもして欲しいと思っています」


「……本当に正直だな」


俺はフレイヤと毎日会えなくなるのが寂しいと思っているのに、この方はカリナとそう頻繁に会っている様子ではない。まあ、俺は毎日授業後に魔法レッスンをしているので、実際のところはよく分からないけれど。アカデミーで偶然に会ったときに会話する程度なのではと思っているが、こっそりデートしているのだろうか。

全く噂にならないので、公になることはない。噂にならないように気を遣っているのかもしれないが。


「婚約できない理由があるのですか?」


「……いろいろと儘ならないのだ」


「それはカリナも理解しているのですか?」


「話していない」


「カリナはひたすら待ち続けるのですか?」


「はっきり言ってくれるな。お前がそうなるとはね……」


「言えないこともあるのでしょうが、いつまでも独りよがりでいて他の男に取られても知りませんよ」


少し嫌味が強かったかもしれない。珍しく不機嫌そうな顔をしている。感情を表に出す人ではない。俺しかいないからかもしれないが。


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