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魔法の星の恋物語  作者: 知香
第1部
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7.覗き見

午後の座学の授業が終わって先生の手伝いで資料室に教材を片付けに行き、さあ帰ろうかと廊下を歩いていると、友人が窓の外から騒ぎ声が聞こえると言うので何だろうと目を移すと、樹木が並び立つところに令嬢達が集まっているのを見つけた。

何かあるのかと外を見渡すと、屋外の訓練場で騎士科の人達が授業を行っている様子が見えた。


「令嬢が集まっているってことは、騎士科の2年生じゃないかしら!」


「何で2年生だって分かるの?」


「「レオン様目当てよ!」」


友人2人の息の合った返答に「あ、そう…」とちょっとたじろぎながら、食堂で話していた、始まりの魔女の家系のレオン様という人のことかと思い出す。

その人目当てに令嬢達が騎士科の授業を見学…覗き見?しているということなのだろう。


訓練場の回りにはぐるりと樹木が植えられており、木々の間から両手では収まりきらない程の人数の令嬢達が、授業を見てはキャーと声を上げている様子が、ここからよく見えた。


「ほら、フレイヤ!長い金髪の方が殿下で、その直ぐ傍にいる黒髪の方がレオン様よ!」


そう教えられても、ここは校舎の3階。かなり距離が離れているので顔までは見えない。他にも黒髪の人は沢山いるのに、友人は何故見分けがつくのだろうと不思議に思う。


でも、剣に炎の魔法を纏い、魔力制御を行っている様子が見てとれ、友人が指すお二方は、その魔力コントロールの技術が高いことがここからでも分かった。


炎の揺らめきが押さえられなかったり、大きな炎になってしまったりする人が多い中、殿下らしき金髪の方と黒髪のレオン様と思われる方は、剣をコーティングするようにオレンジ色の膜が張られているのが見える。


「凄い魔力コントロール技術ね……!」


それが誰かなんてどうでも良いと思える程、その高度な技術に感動してしまった。


綺麗に炎をコーティングされた剣は、炎が揺らめいている剣と打ち合いをすると、揺らめいている炎を打ち消してしまっていた。

炎をコーティングされた剣同士で打ち合うと、高い音がここまで届き、強度が増しているのが分かる。そして、魔法が解かれることは無かった。


そのように炎をコーティング出来ている人は半数もおらず、その魔法を維持する難しさが分かる。そして打ち合った時の響く音でコーティングの強度も分かる。

金髪の方と黒髪の方の剣の音は綺麗な高音をしていて、その集中力と技術力に驚くのと同時に、炎のコーティングの技に見惚れてしまっていた。


そのお二方が打ち合いをすると、魔力がぶつかり合い、その弾かれた魔力の振動で訓練場の回りの樹木の枝葉が揺れる。

樹木の間から覗き見している令嬢達は、振動を感じる度にキャーキャー騒いでいる。


「ね!格好良いでしょ!」


「格好良いかどうかは遠くて分からないけれど、素晴らしい技術だわ!」


どうやったらあんなふうに魔法をコントロールできるのだろう。まさに自由自在だ。


アカデミーでその術を学ぶのだろうけど、こうも違いが出てしまうのか。


それだけ努力をしているからか、コツを掴むのが早く呑み込みが早いからか、アカデミー入学前から家庭教師にしっかりと指導されてきたからか……。


「魔法をコントロールする術を教えて貰いたいわ……」


私はいつも魔力暴走を起こして失敗してしまう。せっかく魔力が高いのに、上手く扱えずコントロール出来ない。宝の持ち腐れだ。


「おっ…教えてもらうぅ!!なんて贅沢な……!」


「でも…でもっ、可能なら!私もレオン様に教えてもらいたいわ!」


「そうね!可能なら私だって教えてもらいたい!!」


「レオン様に…教えてもらう……想像するだけで無理ー!鼻血でるー!」


「目が合って、話し掛けられて、手取り足取り…そんなの死んじゃうー!」


私がポツリと言った言葉に友人2人が大きく反応してしまった。もう恋する乙女の妄想が止まらないみたいだ。2人は手を握り締め合いながら、信じられないテンションで会話をしている。


(つ…ついて、いけない……)


余計なことを言ってしまったなと後悔をしていると、バンッと大きな音がして、ビクリと肩が跳ね上がった。


「静かにしなさい!!!」


まだ授業をしているところもあるのに、校舎の3階の廊下で私達はキャーキャー騒いでしまった為、すぐ近くの教室から先生が出てきて、注意されてしまったのだった。



◇◇◇



「今日も凄かったなー」


「レオンの独り勝ちだな」


「やっぱりつえーよ」


友人達が俺に近付いてきて、そう言うが……


「殿下とは勝敗がつかなかったから、独り勝ちではないぞ?」


「ばっか!ちげーよ!」


「令嬢達からの人気だよ」


は?


「皆揃いも揃ってレオン目当ての子だったな」


「木の間からこっち見てたじゃん」


「1人ぐらい俺のこと見てくれたらいいのになー」


授業のことではないのか。

アカデミーの野外授業では令嬢に見られることが多いので、もはや気にするだけ無駄だと悟り、魔法なり剣術なりに集中して思考から排除出来るようになっていた。


なので、何人居たとか、誰を見てたかなんて全く知らない。


「……1人と言わず、何人でも」


「うわー!むかつくわ」


「レオンと同じ学年だと全くモテない!」


俺に言われても……。

好きでこうなっている訳ではない。


「校舎の3階からも見てる子達がいたな~」


「羨ましい!俺もモテたい!!」


「どうやったらモテるんだよー!」


「俺はもう…モテたくない……」


どうやったらモテなくなるのか教えて欲しい。

モテるだけでこうやって逆恨みされるのは辛い。


何故顔が整っているだけでモテるのだ?モテるって何なんだ?モテるという意味がよく分からなくなってきた。


「まぁ、レオンに恋人や婚約者でも出来ない限り、無理だろうな」


「殿下……」


恋人も婚約者も欲しいと思わない。アカデミーを卒業したら、騎士団に入って給料と報奨金を好きに使って生きていきたいから、一生独身で良いなって思ってるんだが。


「おい!さっさと恋人作れ!」


「そうだぞ!俺たちの薔薇色の青春時代がかかっているんだ!」


「モテないと残りの2年間も寂しい学園生活になっちまう!いや、2年じゃない!もうあと1年半しかない!」


俺のせいにしないでくれ!

ほっといてくれー!


「俺達貴族は今遊ばないと、卒業したら家のための結婚が待っているんだぞ!可愛い子と遊びたいんだ!」


「10代の男の性欲をぶつけられる相手が欲しいんだ!」


「抱きたいー!抱かせろー!」



「お前達……素直だが最低だな……」


呆れたように殿下が呟いた。


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