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魔法の星の恋物語  作者: 知香
第3部
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5.星空

「今晩は雪も降らず、とても天気が良いので星が綺麗に見えますよ!とんがり屋根の屋根裏の窓から一緒に見ませんか!」


昔から大好きだった秘密の屋根裏にレオン様を誘ってみたら、今日も美しい笑顔を浮かべて快く提案に乗ってくださった。


2階からとんがり屋根に続く螺旋階段を登って行く。少しひんやりするけれど、お気に入りのサフランイエロー色のショールの前をしっかり重ね合わせる。


螺旋階段を登り終わり、屋根裏の窓に近付けば、窓の外には星で埋め尽くされた夜空が見えた。


「これは……凄いなぁ……」


レオン様の感嘆の声を聞いて嬉しくなる。


「今日は空気が澄んでいて月も出ていないから、6等星までバッチリ見えますよ!」


「星雲も綺麗だな。ここまで見えるとどれが何座か分からないくらいだ」


隣をチラリと見ると、星空を眺めるレオン様の横顔が、星に勝るとも劣らない美しさでドキドキしてしまう。


朝の稽古の時、「フレイヤの騎士になる」と言ったマシューに、「それは必要ない。俺がいるから」と言ってくれたレオン様にもドキドキしてしまった。


(それは……つまり……レオン様が私の騎士になってくださるって、こと?)


恋する令嬢が憧れるような恋愛小説みたいな話だ。こんな格好良い方を自分専属の騎士に勝手にして喜んでいる。


(都合の良い解釈だわ……。ただ、婚約者として側にいるからってだけなのに。レオン様は騎士団に入団するのを希望しているのだから、レオン様が守るのはこの星や王家)


それでも小さなマシューに対抗心を表して、皆の前で頬にキスされたのも、恥ずかしかったけれど嬉しかった。


「どうした?」


こっそりとチラ見してたのに、視線に気付かれてしまった。


「いえ……一緒に星空を見られて良かったなって、思って……」


貴方に見惚れていましたとは言えない。恥ずかしい。


レオン様に抱き寄せられて、おでこにキスをされる。


「昨晩はマシューに邪魔されたから、今晩はフレイヤを独占出来て嬉しい」


タンカーヴィル伯爵一家は、今日の昼前に帰って行った。マシューは機嫌が悪いのか、素っ気なく魔法の扉を通って行ってしまった。


「マシューは子どもですよ?」


「でもあれは本気だ。挑んでくるなら迎え撃つ」


「……9歳ですよ?」


「年齢は関係ない。油断してフレイヤを奪われたら堪らない」


本気……なんだろうか。

思わず苦笑い。

マシューも身近にたまたまいた女の私に懐いているだけなのではと思うんだけどな。


レオン様はおでことおでこをコツンと合わせた。

辺りは暗いから、レオン様の綺麗なアンバーの瞳も深い色で吸い込まれそう。


「絶対に離さない。俺はアナベル様の直系だから」


私の視界には、レオン様の綺麗で真剣な目しか入らない。息のかかる距離で言われて、心臓の音まで伝わってしまっていそう。


レオン様がルイーズに肩を叩かれたり、腕を取られたり、剣術の手合わせをしたりしているのを、ちょっと羨ましく、そして妬ましく思って見ていたなんて、レオン様は気付いていないんだろうな。


「……私も……ルーク様の子孫ですよ?お父様だって、アナベル様の家系だし、おじい様達だって、アナベル様の家系なんです。だから、私にもアナベル様の血が入っているんです。私だって……離れたくない」


レオン様は一瞬フッと微笑んで、直ぐに唇が重なり合う。ちょっと濃厚で、熱く、舌を絡ませ合うキス。


何だか食べられてしまいそう。

口から発せられる音に恥ずかしさで顔が熱くなり、心臓がきゅっとして、力が入らなくなる。

レオン様は、私が凭れかかってしまうのを微動だにせず受け止めて、キスを続ける。


でも、唇から離れて、頬にキスを落とし、耳の下にもキスをされて、体がゾクリとした。


「んっ……」


思わず声が漏れてしまったのに、レオン様は構わず首にもキスをする。


「……ここに、痕をつけてもいいだろうか?」


ドキッとする。



つい先月、ベルック公爵邸でレオン様に付けられた胸元のキスマークを思い出す。

邸に戻ってから当たり前だが侍女に見つけられ、それからお母様に直ぐに伝わってしまい、笑顔のお母様に事情聴取をされた。

レオン様がマデリン様に氷の水槽の中に落とされたことまで話した時の、お母様のあのニコニコの笑顔の裏の感情が、私には読めなかった。


「お父様に見つかると、またお酒を飲みながら泣いちゃうかもしれないから、見つからないようにね」


とだけ言われ、怒られはしなかった。



「か……髪の毛で、隠れるところなら……」


私の返答を聞いて間髪いれずに痛みを与えてくる。


「んんっ……」


痕がついただろう。

以前の胸元のキスマークはもう消えている。また、新しい痕。


「フレイヤは俺の婚約者だからね」


欲を滲ませた目で言われて、一瞬呼吸が止まる。


レオン様の見せてきた独占欲に、嬉しいと思ってしまう自分がいる。


周囲から誤解を受けてしまうようなキスマークを許してしまうあたり、私も欲深いのだろうな。



旅行最後の夜。

レオン様に凭れかかって抱き締められ、私と全然違う硬い体に包まれる安心感。レオン様の鼓動を聞きながら、このまま離れたくないと思ってしまう。



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