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魔法の星の恋物語  作者: 知香
第3部
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1.爽やかな朝

第3部が思いの外長くなってしまいましたので、2部に分けることにしました。そして、基本的に昼と夜の1日2話更新で進める予定です。

少し長いのですが、最後まで(約1ヶ月)お付き合い頂けたら嬉しく思います。

「おはよう、フレイヤ」


「おはようございます、レオン様」


朝起きて館の食堂に行く。少し経つと愛しい人も食堂に現れ、朝の挨拶を交わす。


窓の外は日の光によってキラキラと輝く雪が積もっている。雪に反射した光が窓に当たり、室内は明るい。館の各部屋には暖炉があり温かいが、朝のひんやりとした空気もどこからか流れ込んでくる。

そのひんやりとした空気で体を冷やさない為にか、肩にサフランイエロー色の生地に花の刺繍が品よく施されたショールを羽織って少し恥ずかしげに微笑む姿に、胸の奥からくすぐったいような何かが沸き起こってくる。外で会う時では決して見ることは出来ない、一緒に暮らしている近しい人でないと見られない姿だ。


(可愛い……)


今すぐにでも手を取って引き寄せ、この腕に閉じ込めてずっと離れず、彼女の頬も耳も首も全てが赤く染まる程の甘い愛の言葉を沢山捧げ、彼女の体力を奪う程のキスをして俺に凭れかからせたいと思ってしまう。


出来ないけど。


したいけど。



何故こんな新婚夫婦の様な初々しい爽やかな朝を迎えているのかと言うと、決して夢では無く、俺の願望からくる妄想でも無く、現実であることは確か。

そして、婚約から晴れて結婚をして一緒に暮らす様になったという訳でも無い。残念ながら。何しろまだお互いに王立アカデミーの学生だ。婚約してから半年しか経っていない。



そもそもの話は冬の休暇に入る直前に遡る───



始まりの魔女の隠れ家でフレイヤと2人、学生らしく魔法書を読み勉強をしていた。多少のイチャイチャはあったけれども、それは男として全く我慢するというのは中々に辛い為、多少の触れ合いはあったけれども。フレイヤが火傷を負ったのに自身の力で助けてあげられなかったことで、俺は本気で治癒魔法を習得しようと真剣に学んでいた。


そんな勉強の時間を終えて、隠れ家とリーズ公爵邸を繋ぐ青い扉を押し開け帰ろうとしていたところ、ちょうどリーズ公爵夫妻が帰宅され、挨拶よりも何よりも、お誘いの言葉を掛けられたのだ。


「レオン!年が明けた冬の休暇の後半、リーズ公爵領に一緒に行かないか!?」


待っていましたとばかりに嬉々とした声音。どちらが帰宅し、どちらが迎える側なのか分からないくらいだ。


「特に用事もないので行けますが」


「本当か!いやぁ、新年の挨拶で親族が毎年集まっていてね、折角だから婚約のお披露目をしても良いかなぁと思って」


なるほど。まだご挨拶をしていなかったな。

いずれ婿に入るのだ。礼儀としてご親族に丁寧に挨拶をして受け入れて貰えるよう努めなければ。


「お披露目ですか。偉大なる歴代リーズ公爵家の魔女達にお会いできるのですね。是非とも伺わせて頂きたいです」


「本当か!皆レオンに会える機会を楽しみに待っていてね~。お披露目をせっつかれていたんだよ~。怖いくらいに」


怖いくらいに?

突っ込んでいいのだろうか。


「お披露目って、どんなことをするのですか?」


「親族しか集まらないから、基本的には毎年の集まりと一緒よ。皆でお食事をしてゆったりと過ごすのだと思うわ。だからそんなに気負う必要はないからね」


「そうそう!ちょっとした旅行だとでも思って楽しんで」


(旅行……)


思わずフレイヤと2人で目を合わせる。

一緒に旅行。朝から晩まで一緒。こうやって日が暮れたら家に帰って離れる必要もなく、ずっと一緒にいられる……


(最高じゃないか!!!)



…………


とまぁ、そんなことで、リーズ公爵領への5日間の旅行へ来ているのだ。


リーズ公爵領はベルック公爵領よりも広く、ベルック公爵領の北側にある。あの隠れ家はリーズ公爵領の南部の森の中にあり、領主館は対極の北部の山岳地帯の麓から少し高い位置にある。その為領主館の辺りはこの冬の時期には雪深くなり、とても寒い。王都もベルック公爵領も年に数回しか雪が降らないので、背丈近くまで積もった雪を見たことがなかった。


昨日の午後この領主館に到着した、と言っても、そこは先祖がソフィア様なだけあり、大変便利なことに隠れ家同様王都の邸と扉1つで繋がっている。


そして、領主館で暮らしている先代公爵のカミーユおばあ様と、領主館の離れでゆったりと暮らしている先々代公爵夫妻とお会いし、挨拶をした。100歳近いと思われるのに、とてもそうは見えない若々しさで40代くらいに思えてしまう。それだけ魔力が高いのだろう。

明日のお披露目会では領地内の別の場所に館を構えている更に前の代の公爵も出席されるそうだ。その館とも魔法の扉で繋がっているらしい。

魔法の扉を作れるのはソフィア様だけで、その後の子孫では作れなかったそうなのだが、余りに広い領地なので、ソフィア様が領地を賜った際に東西南北にそれぞれ拠点となる館を置き、いつでも行けるように繋げ、その館に代々の子孫がそれぞれ住んでいるのだと教えてもらった。



───そして冒頭に戻る。


領主館での初めての朝を迎えたのだが、2人っきりという状況ではない為、そう気軽に触れ合いも出来ない。


したいけど。


この旅行に際して母親とカリナからも「節度を守って」と散々言われたし。



「おはようございます、レオン様」


「おはようございます」


「よく眠れたかしら?」


「はい。気持ち良く朝を迎えました」


「朝でも関係なく本当に綺麗な顔立ちなのね」


カミーユおばあ様に繁々と顔を覗き込まれた。


「お褒めくださりありがとうございます」


フレイヤはカミーユおばあ様に似ている。だから未来のフレイヤを見ているような気分になる。そんなおばあ様に覗き込まれると、少し照れてしまう。


フレイヤ以外にも続々と集まって来たので、現公爵夫妻とおばあ様と一緒に朝食を頂く。


「今日は特に何も無いから自由に過ごしてくれて良いから。フレイヤ、レオンにこの辺りを案内してあげなさい」


「はい!天気も良いですし、麓の町まで下りて見て回りましょう!」


張り切っているのか、ウキウキと楽しそうにしている彼女が微笑ましく、そして可愛らしい。


「ありがとう」


微笑み返せば、少し頬を赤くする。

そんな反応をする彼女を見て、皆でクスクスと笑ってしまう。


ああ、この旅行は本当に最高だ。



※夜は23時更新です


第1部、第2部と未熟な作品にもかかわらず読んでくださった方、それにブックマークや評価をしてくださった方、本当にありがとうございます。とても励みになります。この場で感謝を申し上げます。


知香

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