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魔法の星の恋物語  作者: 知香
第2部
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33.熱くて

フレイヤの傷や火傷等の外傷は治癒魔法で殆ど治ったのだが、煙を吸い込んだことによる気管の腫れは治せず、暫く痛みが続いたので、アカデミーを1週間休んだ。

その休んでいる間、俺はアカデミーが終わると毎日リーズ公爵家まで会いに行った。


喉の痛みがあるので、会話は殆ど出来なくても、一緒に同じ空間にいられるだけで十分だった。

フレイヤにお願いして、毎日隠れ家で魔法書を読ませて貰っていた。

隠れ家のリビングには、俺が贈ったオレンジと黄色のガーベラが生けられていた。エミリー様と約束した通り、ガーベラの花束はフレイヤの元にちゃんと届けられた。


治癒魔法でフレイヤを治してやれなかったことが、俺は悔しかった。魔法科じゃないからと、授業でやらないからと、基礎以上のことを学んでこなかったことを悔やんだ。

だから治癒魔法を使えるようになりたいと思い、隠れ家の魔法書で勉強をさせて貰っていた。


治癒魔法は学べば学ぶ程、奥深さに驚く。怪我をしないと試せないかと思っていたが、治癒は細胞の再生を促すものなので、人だけでなく動物も、植物も、姿形あるもの殆どに使えることが分かった。ガーベラの花びらを1枚はがしてそれを再生させることが出来たし、隠れ家の木の柱のちょっとした傷でも再生させることが出来た。

でも切り株を再生させるのは無理だった。相当の魔力が必要になるのもあるが、もともと寿命がきていた木を切り倒したものだから、そこから立派な木に戻すのは木自体の生命力が足りないようだ。脇芽の新芽をぴょこんと生やすのが精一杯だった。


「可愛いですね、この新芽」


フレイヤが俺が生やした切り株の新芽の葉をつんつんつついている。そのフレイヤに寄り添うように、ウサギやリスが一緒になってクンクンしている。青い鳥も肩に乗っている。

こんなにも動物に好かれていることに初めは驚いたが、動物も心優しい彼女と友達になりたいのだろうなと思った。


「もう、すっかり声が戻ったね」


気管の腫れで声は掠れていたが、普段の声に戻ったようだった。発声しても痛みも無いのか、普通に会話が出来ていた。


「はい!来週からアカデミーにも行けます。今年は休んでばかりです。ちゃんと勉強して遅れを取り戻さないと。来月には前期試験もあるので」


そう言う彼女のふわりと浮かべた笑顔に誘われるように、手が延びてしまった。彼女の頬に触れる直前に、ああ、またやってしまったと手を止め、彼女の頭を撫でた。


どうしても彼女に触れたくなってしまう。

抱き締めたくなってしまう。

キスをしてしまいたくなってしまう。


ずっと我慢してきたのに。

嫌われてしまうのが怖くて、気持ちを押し付けるようなことをしないように、必要以上に触れないようにしてきたのに。


隠れ家に飾られたオレンジ色のガーベラを見る度に、花言葉の≪我慢強さ≫を思い出して、俺自身に戒めとして言い聞かせている。


彼女が直ぐ隣で笑っていてくれるだけで嬉しい筈なのに。


彼女に触れたら、この気持ちが爆発してしまうかもしれない。



◇◇◇



今日もレオン様は延ばした手を止め、躊躇うような表情をして、頭を撫でる。大きな手で撫でられるのは嬉しいけれど、少し悲しい気持ちになる。


これまでスキンシップが多くて今落ち着いただけだなんて思ったけれど、そう思って納得しようとしたけれど、期待してしまう自分がいるのだ。


逃げてばかりいる私。

向き合って話し合うことが怖かった。醜い私を見せるのが怖かった。

でも、あの寒く狭い部屋で縛られていた時、ちゃんと謝って聞きたいことを聞こうって決めたのだ。


「レオン様……」


私の頭を撫でた後、立ち上がって私に背を向けて、寄ってきた鳥を指に止まらせて眺めているレオン様に声を掛ける。


「私、間抜けで、プブル卿の言うことに惑わされて、レオン様を信じきれなくて……ごめんなさい」


振り向いたレオン様は戸惑った表情をしている。


「こんな、間抜けな私……もう嫌いになりましたか?」


「何を言って……」


「もう、好きじゃないですか?もう、抱き締めてはくださらないのですか?もう、キスをしてはくださらないのですか?もう、婚約者ではいられないですか──」


言い切らない内にレオン様に抱き締められていた。

レオン様の指に止まっていた鳥がバサバサと羽を鳴らして寒空へ向かって飛んで行くのが、レオン様の肩越しに見えた。


なんでそんなに素早いのだろう。見えなかった。

いつもは優しく抱き締めてくれるのに、今日は少し強く抱き締められた。


「嫌いになる訳無い」


私の耳元で優しい声で伝えてくれる。


「こんなに好きなのに。いつだって君を抱き締めて離したくないんだ。ずっと触れていたいんだ。そんな俺の気持ちが重すぎて、フレイヤに嫌われるのが怖くて……」


そんなことを、考えていたのですか?

そんなこと、有り得ないのに。


「嫌いになど、なりません。私は……私も、レオン様が好きなんです」


抱き締めている手を少し緩めて、顔を離したレオン様の綺麗な琥珀色の瞳と目が合う。

そのまま唇を強く押し付けられた。強いキスで苦しいのに、必死に両腕を延ばしてレオン様の首にしがみついて、私も唇をさらに押し付ける。レオン様の私を抱き締める腕の力がギュッと強くなる。


離れたくなくて、胸もお腹も全身がぴったりくっついていた。お互いの速い鼓動が重なっていた。

息苦しくて唇を離しても、直ぐまたキスをする。


もう秋も終わり、冬がやってきていた。冬の森の夕方は薄暗く寒い筈なのに、熱くて熱くて仕方がなかった。


側にいた筈の動物達はいつの間にかいなくなっていた。気を利かせて姿を消したのだろうか。


2人っきりの森の中は、キスをする度に好きが溢れてきて、離れられなくなってしまった。レオン様に求められるままにキスを受け入れて、もっととねだるようにしがみついて瞳を見つめる。

前まであんなに恥ずかしかったのに、抱き寄せられるだけで恥ずかしかったのに、自分から求めてしまう。


心を通い合わせるとはこういうことなのだろうか。


そして息が整う暇もなく、飽きずにずっと唇が腫れるまで何度も何度もキスを繰り返した。


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