表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔法の星の恋物語  作者: 知香
第2部
55/159

26.現状把握

頭がズキズキする。

そして寒い。


私のふかふかで暖かい寝台とは違う、硬い物の上で寝ている。


それから寝返りが上手く打てない。

体が動かない。

呼吸もしづらい。


徐々に意識が覚醒していく。


でも瞼が重たくて、起きられない。


今日は……何日だっけ?

今日はアカデミーのある日だっけ?


眠たいけれど、起きてアカデミーに行かないと。

魔法の勉強をしっかりやって、家の名に恥じない実力をつけないと。


私のミドルネームはソフィアだ。

名前を名乗るときに、躊躇わずに胸を張って言いたい。


でも、アカデミーに行ったらレオン様に会ってしまう。何を話したらいい?


ごめんなさいって、信じきれなくてごめんなさいって、最低な人の言うことの方を真に受けてごめんなさいって、間抜けな私でごめんなさいって、言わないと……


いつまでも逃げていないで、ちゃんと向き合って、謝って、聞きたいこと聞かないと……


アリーチェ王女殿下の婚約者騒動の時みたいに逃げてばかりいたら駄目だ。


だから、起きないと。

瞼を開けないと。



ゆっくりと目を開ける。ぼやける視界に違和感を感じ、瞬きを数回する。


(ここ……どこ?)


私の部屋じゃない。仮の部屋でもない。隠れ家でもない。


もっと粗末な、狭くて、寒くて、簡素な部屋。

室内は薄暗い。小さな卓上照明が1つ点いているだけ。唯一のドアの下の隙間から明かりが漏れている。格子の付いたあまり大きくない窓の外は暗い。今はまだ夜?


寝かされている寝台に寝具は無く、マットが1枚敷かれているだけ。

暖房は何もない。今はもう秋も終わりの頃。夜は寒い。


体が動かないと思ったら両手を後ろにロープで縛られていた。

呼吸がしづらいと思ったら口をテープで塞がれていた。


体が痛い。

寝台と言えるのか分からない様な硬い台の上に転がされて、両手を縛られていたら寝返りも打てず、体も痛くなるだろう。


何故私はここにこんな状態でいるのだろう。

何でだっけ。

起きたばかりで頭が働かない。

もしかして、まだ起きてない?夢なの?


でも、このズキズキする頭の痛みは夢では無いような現実的な感覚。


現実なら、夢でないなら、何故私はここにいるの?

ここにはどうやって来たの?何をしに来たの?


思い出せない。覚えていないから?


覚えていることは……


今が夜ということは、夜会があったのは昨夜だろうか。そこでいろいろあった。

それで今日の昼間、アカデミーを休んだ。

そして誰か来た。

確か、ドルバック伯爵だ。

謝罪に来て、お詫びにって、王宮魔導室に連れて行ってくれるって言って……行ったんだっけ?行って見学をした記憶がない。

行っていない?でも馬車には乗った。その後の記憶がない。何があったんだろう。ドルバック伯爵はどこに行ったんだろう。ここは王宮?でも王宮がこんな簡素な部屋な訳ない。それとも、魔導室にはこんな部屋もあるの?

そうだとしても、私がこんな格好なのは何故?


とりあえず立ち上がって、窓の外を確認してみようか。何故あの窓には格子が付いているのだろう。脱走防止だろうか。

立ち上がれるかな。手が後ろで縛られているから、体を起こしにくい。足を縛られていないからまだマシかもしれない。足を寝台から下ろして、反動を使って上半身を起こした。


ああ……頭の痛みが増すようだ。頭にあった血がサーッと下に流れていく感覚に、頭のズキズキとした痛みが酷くなる。寝ていた方が良かっただろうか。激しい痛みが治まるまで少し動きを止め、深呼吸を繰り返す。


ゆっくり立ち上がるが、足がガクガクする。体が固まっているせいだろうか。それとも恐怖を感じているからだろうか。


冷静に考えれば、この状況は誘拐されたのではと思い至る。


窓に近付き、窓の外を見る。


(どこだか全く分からないわ……)


月に雲がかかっており、外の暗闇を照らす程の力がない。なんとなくぼんやりと木々が見える。辺りに暖かな光を灯す家は1軒も見えない。田舎のような雰囲気だとしか分からない。


自身の置かれている状況が徐々に理解出来てくると、不安と恐怖が沸き起こり心臓がドクドクし出す。


魔法を使って逃げ出そうにも、口を塞がれていて呪文を唱えられない。

口に貼られたテープを剥がしたくても、手が縛られていて剥がせない。


(落ち着け、私!)


心臓のドクドクいう音を静めようと、大きく鼻で息をする。


手を縛っているロープが切れれば、口に貼られたテープを剥がして転移して逃げられるだろう。


(何かロープを切れるような物は無いだろうか)


薄暗い部屋の中をキョロキョロと見渡す。暗い部屋にもだんだんと目が慣れてきたので、室内の様子が見えるが、余計なものが何もない部屋だった。寝台と、テーブルと、卓上照明と、椅子だけ。


(テーブルの角で、ロープが切れるかしら……)


他に何もない。何もやらずにただ怖がっているより、試しにやった方が良い。


思い立ったら即行動!


……まあ、それで即行動して王宮魔導室に行くって決めて、こんなことになっちゃったんだけど……。


あれこれ考えても不安が募るだけだし、テーブルに背を向けて手を角に近付けロープを当てる。やりづらいし見えない姿勢だけど、ズリズリとロープを削り出す。時々力加減に失敗して、手をテーブルにぶつけてしまう。ロープを削る為にロープを張る必要もあり、手首にロープが食い込む。それでかなり手が痛くなる。

でもこのままで良い筈は無いので、痛みを我慢して続ける。


(削れてるのかな……)


見えないのでどんな感じなのか感覚だけで察するしかない。ひたすらズリズリと削り続けた。



その時、突然ガチャリとドアが開いた。ドアの向こうの明かりに照らされ、眩しくて目を閉じる。


「ああ、もう起きたのですか?さすがですね。魔力が高いからでしょうか。睡眠魔法を解かれてしまいましたね」


この声……ドルバック伯爵?


逆光に負けまいと、少しずつ瞬きをしながらドアから現れた人を見る。


「微かに音が聞こえたのですが、ロープを切って逃げようとしていたのですか。それは困りますね」


タラリと汗が首筋を伝っていく。

寒い部屋でもロープを切ろうと必死に腕を動かして削り続けたので、体が暑くなってしまっただけではない。


ああ、私は失敗をしたみたいだ。バレてしまった。音が漏れ伝わってしまったようだ。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ