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魔法の星の恋物語  作者: 知香
第2部
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25.甘い香り

アカデミーの授業後、リーズ公爵邸に向かっている途中、花屋の前を通った。店先には色とりどりのガーベラが並べられていた。惹かれるように花屋に立ち寄った。


オレンジ色のガーベラは、栗色の髪のフレイヤに似合うだろうなと思った。年配の女店主にお願いして花束にして貰うことにした。「恋人にあげるの?」と聞かれたので「そうです」と答えたら、「お兄さんの琥珀色の瞳に似た黄色のリボンで縛ろうか」と言われた。照れ臭さもあったけれど、「お願いします」と伝えた。


ついでに花言葉も聞いた。


「ガーベラは≪希望≫だね。オレンジ色は≪我慢強さ≫かな」


≪我慢強さ≫……贈るのにあまり相応しくないだろうかと少し心配になって黙り込んでしまった。

どちらかというと俺が我慢しなければならない。好きな気持ちを彼女へ押し付けないように、キスしたり抱き締めたりするのを我慢しなければ。


「黄色のガーベラを混ぜて花束にしようか?黄色は≪究極の愛≫だよ。お兄さんの瞳の色だし、良いんじゃないかな?」


女店主の提案に乗ることにした。フレイヤはあまり花言葉に詳しく無いようだけど、花言葉を知ると照れた表情を見せてお礼を伝えてくれる。あの赤くなった顔を見たいのだ。


今日、会って貰えるのか不安もあった。会って貰えなくても花束を渡して、黄色の花とリボンを見て俺を思い浮かべて貰えるだろうか。それとも、愛が重いと思われてしまうだろうか。


会いたい気持ちと、嫌われる不安を抱きながらリーズ公爵邸を訪れた。しかし、全く別の答えが返ってきた。


「ドルバック伯爵と、出掛けた?」


「は、はい。申し訳ございません」


執事の方から話を聞いて、何故だか胸騒ぎがした。


「何故、急にドルバック伯爵が?」


「昨日の謝罪に来たと申しておりました。それで、王宮魔導室の見学に一緒に行かれました」


「王宮魔導室……」


何故そんなところに?確かにフレイヤなら行きたがるかもしれないが……。


しかし、どうしたら良い?

このまま帰ってくるのをここで待たせてもらうか。

花束だけ渡して今日はもう帰るか。

さすがに王宮魔導室まで押し掛けるのは不味いだろうな。事前に許可が必要であろうし。



その時、馬車の音が聞こえてきた。

フレイヤが帰ってきたのだろうか。

2台の馬車が敷地内に入ってくる。


しかし馬車から降りてきたのは、リーズ公爵夫妻と、俺の両親だった。


「あら、レオンじゃないの。フレイヤちゃんに会いに来たの?」


「お二人こそ、何故こちらに?」


「フレイヤちゃんにプブル侯爵の件の報告に来たのよ」


「フレイヤは……居ないそうです」


「フレイヤが居ない!?何処へ!?」


ヒューゴ様が驚いている。


「ドルバック伯爵と王宮魔導室へ行ったらしいのです。リーズ公爵ご夫妻は王宮魔導室でフレイヤ嬢とお会いにならなかったのですか?」


「「………」」


リーズ公爵夫妻は顔を見合わせて言葉を失っているようだ。


「……拐われたかもしれないわね」


「拐われた!?」


母の言葉に驚く。


拐われた……?どうして?

胸騒ぎが大きくなる。不安が拡がっていく。


「……王宮魔導室に転移して、フレイヤが居ないか確認してきます」


「ああ……頼む」


そうエミリー様は言って、すぐに転移してしまった。


「レオン。今日私達は王宮に行って前国王陛下にお会いしてきたの。それで前国王陛下に許可を頂き、プブル侯爵家に行って話を聞き出してきたわ。プブル侯爵がドルバック伯爵に計画を持ち掛けられ、息子のプブル卿に指示したと吐いたわ」


「ドルバック伯爵が……」


「プブル卿がアリーチェ王女殿下の婚約者になれなかったのは、レオンのせいだと教えられたそうよ。レオンに対する仕返しもあったのでしょうけど、あわよくばフレイヤちゃんと結婚してリーズ公爵家と縁を繋げるとも思ったそうよ」


なんだそれは。アリーチェ王女殿下がプブル卿を選ばなかったのは、嘘の愛だと母が見抜いたからで、俺は関係ない筈。俺はアナベル様の家系の美形を集めたお見合いパーティーを開いただけだ。


それに、あわよくばフレイヤと結婚だと?ふざけるな!


怒りが込み上げてきて、両手で抱えていた花束を強く握り締めそうになり、潰してはいけないと感情を抑えた。


「ドルバック伯爵の目的まではプブル侯爵も分からないらしいわ。今日フレイヤちゃんを連れ出したのも、何か目的があるのでしょうけど……」


母から今日のことを聞いていると、辺りが光り出しエミリー様が転移して戻ってきた。


「どうだった?」


ヒューゴ様がエミリー様に確認するが、エミリー様は左右に首を振る。


「王宮魔導室には来ていないそうよ」


「そうか……一体何処へ……」


「フレイヤのところに転移出来るかやってみるわ」


エミリー様は暫く目を閉じ集中しているようだ。だが、転移することはなく、閉じていた目を開く。


「……フレイヤの居場所が掴めないわ。恐らく……意識が無い状態……」


意識が無い?


「それは……」


「眠っているか……もしくは……」


え?


それは、最悪の状態を意味しているのか?


ばかな。


頭が真っ白になる。


「うっ………!」


「大丈夫か!?」


エミリー様が倒れそうになるのを、ヒューゴ様が寸でで受け止める。


「無理をするな。連続で転移をしたんだ。さっきも散々魔力を使ったしな。少し休め」


ヒューゴ様に支えられ、邸の中に入り、ソファに項垂れるように座り込む。

俺達も邸内に案内されたが、これからどうしたらいいのか。渡せなかった花束を暫く見詰め、執事に預けた。


フレイヤの居場所の手掛かりは、ドルバック伯爵だけ。邸に乗り込むか……。しかし、憶測でしかなく、証拠もない。目的もよく分からない。


あまり得意ではないが、またフレイヤの魔力探知をしてみるか。エミリー様は掴めなかったと言っていたが、方角だけでも分からないか……。


大きく息を吐く。


「どうしたの、レオン?」


「……あまり得意ではありませんが、フレイヤの魔力探知をしてみます」


目を閉じ、彼女の魔力を辿る。

邸を出て、王宮の方に向かって……その後……方向を変えている?

魔力が霞んでいる。辿りづらい。何か探知出来ないように細工でもされているようだ。


額に汗が浮かぶ。魔力をかなり消費しているようだ。


「レオン。魔力探知は魔力の匂いも思い出して。フレイヤちゃんの香りを思い出すのよ。深呼吸をして、感覚を研ぎ澄ましなさい」


母の言葉を聞きながら、フレイヤの甘い香りを思い出す。抱き締めた時、ダンスをした時、キスをした時、彼女に近付いた時に香る、甘く優しく心地の良い香り。体全身で彼女を求めてしまうあの香りを。


「……ここから、南西の方角。40キロくらい。何かで邪魔されているのでこれ以上は分かりません」


「ここから南西なら、フーシェ侯爵領だな」


俺の探知結果を聞いて父が確信したように言う。


「フーシェ侯爵邸に行きましょう!フーシェ侯爵が何か知っているかもしれないから話を聞き出して、侯爵領地への立ち入りの許可も取りましょう」


「侯爵は話すでしょうか?」


「あら?私を誰だと思ってるの。任せなさい」


母のニコリとした笑顔。昨日の夜にここで見せたのと同じ怖さを感じる笑顔だった。


「私と妻とレオンで行ってきますので、リーズ公爵は夫人の側に。そして、警備隊と王宮、あとベルック邸に遣いをお願いしたい」


「いや!侯爵領に行くのなら馬車では間に合わないでしょう。私が車を出します」


「あの、車ですか?」


婚約の時にこの邸を訪れて、俺と父が見せてもらった車だろうか。確か鑑賞用だと言っていた気がするが。


「ええ。馬車よりスピードが出せます。王都で乗るなと言われていますが、陛下には後で怒られますので、今はフレイヤを優先します。エミリー、1人にしてしまうが、宜しく頼むよ」


「ええ。お気をつけください。魔力の消費のし過ぎにも気をつけて」


話が纏まると、ヒューゴ様は車の準備に向かった。俺も邸を出ようとしたところで、エミリー様に声を掛けられた。


「レオン様。花束、フレイヤにちゃんと渡してくださいね」


「もちろんです」


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