23.謝罪
結局、アカデミーを休んでしまった。
私、魔法科に進学してから休んでばかりいないかな?いや、レオン様に出会ってからかもしれない。それまでは風邪も引かず、全く休むことなんて無かったのに。
ああ、またレオン様のことを考えている。考えないようにしたいのに、重症だ。
お父様もお母様も仕事に行ったので、1人だ。勉強でもしようとアカデミーのテキストを開くけれど、文字を追うだけで何も頭に入らない。何も残らない。何も覚えられていない。
覚えていて思い出すのは、レオン様のことばかり。
何度目かも分からない溜め息をつく。
部屋の扉がコンコンコンと叩かれた。
「はい」
「お嬢様。お客様です」
「お客様?誰かしら?」
もしレオン様が来るとしても、まだアカデミーが終わる時間ではない。
「ドルバック伯爵様です」
「ドルバック伯爵!?」
お母様から昨夜の話を聞いた。レオン様が令嬢と2人っきりでいたのは、兄であるドルバック伯爵の助言を聞いた令嬢が嘘を言って誘い込んだからだと。
私は情けないことに、その令嬢の狙い通りに見事に勘違いをした訳で、レオン様を少しでも疑った私は……どんな顔をして会えば良いのか、本当に分からない。
「ドルバック伯爵のご用件は伺ってる?」
「謝罪にいらしたそうです。事前のお知らせもなく訪問して申し訳ないと仰っておりました」
「そう……」
謝罪……。昨夜の謝罪と言うことなのだろう。
「分かったわ」
応接室に入って直ぐ、ドルバック伯爵は慌てたように謝ってきた。
「昨夜は申し訳ありませんでした!妹に想いを告げる機会を作ってやりたくて、2人っきりにさせてしまいました!そのせいでフレイヤ嬢には大変な心労を与えてしまったと妹から聞いて……」
「いえ……頭をお上げください。話は聞いておりますから」
「私は色恋沙汰に疎くて、女性の繊細な気持ちがよく分からなくて……本当に申し訳ありませんでした」
魔法がとにかく好きな人だと、お父様から聞いたことがある。恋愛はしてこなかったのかもしれない。
「妹さん想いなのですね」
「向こうは私のことを好いてはいないのですが、私にとっては可愛い妹です」
「そうですか。私には兄妹がいないので羨ましいですわ」
「あの……お詫びに、宜しければ王宮魔導室の見学にきませんか!?」
「王宮…魔導…室……ですか?」
「ええ!私には魔法くらいしか誇れるものがなく、フレイヤ嬢は魔法がお好きですよね?アカデミーを卒業したらリーズ公爵夫妻の様に王宮魔導士になりたいと、昔仰っていたではありませんか」
そういえば、ドルバック伯爵が王宮魔導士になりたての頃、お父様が我が邸にドルバック伯爵を連れてきて、そんな話をした記憶がある。
「そうですね。今の私ではなれそうもありませんが……」
魔法の技術が未熟な今の私では、試験を受けてもとても受かりそうもない。
「まだ試験まで1年はありますし、王宮魔導室の見学をすることで、もっと頑張ろうと思えるかもしれませんよ!それに、リーズ公爵夫妻が働いているところも見られますよ」
確かに興味はあるので見てみたい。お父様とお母様がお仕事している姿もどんな感じなんだろう。
「せっかくのお話ですし、行ってみようかしら」
「本当ですか!では早速行きましょう!」
「えっ!今からですか!?」
「ええ。今日なら見学出来ますよ。日によっては取り組む業務により見学出来ないこともあるので、出来る今日に行きましょう!」
な、なるほど!
まあ、私は、思い立ったら即行動!がモットーだし、うん、行こうではないか!
「はい!行きます!」
勢いで王宮魔導室に見学に行く事になった。
邸の者に伝えて、馬車に乗り込む。
ちょっとドキドキする。どんなところなんだろう。お父様やお母様から話は聞くけれど、行ったことは一度も無かった。
馬車の窓から外を見ながら、ワクワクする気持ちを抑えられなかった。
でも、窓の外の景色が流れる様を見ていると、眠たくなってしまった。夜会でいろいろあったし、昨日もなかなか寝られなかったのだ。瞼が落ちそうになるのを、首を振って堪える。
「お疲れですか?寝てもいいですよ。着いたら起こします」
「……いえ、大丈夫です」
さすがに親族でもない男性の前で寝られない。レオン様にだって寝顔を見られたくないのだから。まあ、見られちゃったけれど。
「安心して寝てください」
なんだろう。
寝たくないのに、凄く眠たい。
「寝てしまいましょう」
ドルバック伯爵の声が、心地好い……
寝て……いいの……
ねむ……たい……
…………
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