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魔法の星の恋物語  作者: 知香
第2部
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22.可愛い妹

窓の外から話す声が聞こえる。


レオン様とベルック公爵夫妻が我が邸に来ていた。


両親と何の話をしたかは分からない。

プブル卿にキスを迫られ、レオン様と令嬢が2人っきりの部屋に転移してしまい、連続して二度目の転移魔法を使ったのもあり、心身ともにグッタリ疲れていた。だからお母様に「部屋で休んでいなさい」と言われ、その通りに部屋に居た。

不法侵入された元の部屋ではなく、仮の部屋。戻る気になれず、あの日からずっとここを使っていた。


私はレオン様を信じきれずに逃げた。


お母様に抱きついて、子どもみたいに泣いた。お陰で目の回りがヒリヒリする。鼻もかみすぎて赤くなった。また、酷い顔になってしまった。


カーテンを少し捲って、外を見る。馬車に向かって歩いているベルック公爵夫妻の少し後ろを歩く、レオン様の背中が見える。もう帰るところなのだろう。夜の闇に溶けてしまいそうな黒色の髪と紺色の衣装。庭の灯りのお陰で溶けずにほんのりと浮かび上がり、姿を確認出来た。



貴方は浮気をする人ですか?

急にキスもハグもしてくれなくなったのは何故ですか?

私のことはもう好きではありませんか?

そもそも、好きと言ってくれたのは嘘だったのですか?



その時、レオン様が振り向いた。

咄嗟にカーテンを捲っていた手を離し、窓の下にしゃがみこんだ。


(今……目が、合った?)


外は暗いし、距離も離れている。ハッキリと顔が分かるわけない。


心臓がドクドクと早鐘を打つ。


私が見ていたこと、気付かれただろうか。

どうして振り返ったのだろうか。

私の問い掛けが届いてしまったかの様だった。


実際にそう言って問い詰めたらどうなるのだろう。でも、問い詰めるような嫉妬深い女になりたくないし、嫌われたくもない。


明日から、どんな顔をして話せば良い?何事も無かった様に、作り物の笑顔で魔法の話をすれば良い?


心臓の音が収まらない。


暫くして馬車が動き出す音がした。

溜め息を吐き、目を瞑る。


会いたいのに、会いたくない。

会いたくないのに……会いたい。



◇◇◇



翌日、アカデミーの食堂の個室で殿下と話をした。


「そうか、そんなことがあったのか」


殿下は顎に手を置き何事か考えている。


「今日、フレイヤは?」


「休んでいるようです」


「授業後会いに行くのか?」


「そのつもりです」


昨夜は会えなかった。エミリー様は俺の話をフレイヤに伝え誤解を解いてくれると仰ったが、ちゃんと話をすべきだと思う。他人任せで良い筈がない。


帰り際に以前訪れたフレイヤの仮の部屋の窓を振り返った。まだその部屋を使用しているかどうか分からなかったし、2階の部屋は照明が点いておらず全ての部屋が暗かったので、フレイヤが休んでいるのが何処の部屋か分からなかった。


でも、視線を感じたのだ。振り返っても真っ暗な色の窓しか見えなかったけれど。もしかしたら、彼女に会いたいと思う俺の気持ちが生んだ思い違いだったのかもしれない。


今日、邸を訪れても、彼女は俺に会ってくれるだろうか。


「プブル卿は父である侯爵の差し金なのだろうか?」


「全く分かりません。でも、リーズ公爵夫妻も私の親もかなり怒っていたので、多分……直ぐに判明すると思います。今日、揃って王宮に行っている筈なので」


「ほお。最強タッグだな」


「ええ……魔女2人が……」


昨夜の2人の笑顔は怖かった。静かに怒るとは、こう言うことなのだろうなと思った。


「あの、殿下。ドルバック伯爵の母親についてご存知ですか?」


「母親?何かあったのか?」


「フーシェ侯爵令嬢が、兄であるドルバック伯爵に対して『魔力の無い女の子ども』と言ってあの男と呼んでいたんです。とても仲の良い兄妹とは思えませんでした。なのに、何故ドルバック伯爵はフーシェ侯爵令嬢に協力をしたのかが気になりまして……」


「それはとても仲が良い様には思えないな。ドルバック伯爵の母はとても優秀なラッセル伯爵家の令嬢だった。ラッセル伯爵は知っているか?」


「……確か、裁判所長官だったかと」


「そうだ。お前も貴族のことを覚えてきたな。ラッセル伯爵家の一族は元が地球の人間だったこともあり、魔力が少ないのだが、それを上回るほどの秀才で有名な家で、多くの優秀な文官を輩出している。得に法曹界では無くてはならない、この星の司法を支えている家とも言えるな。そしてドルバック伯爵の母は魔力が少ない一族の中でも、全く魔力が無い令嬢だった。その為にこの王立アカデミーには入学出来なかったらしい。しかし、家庭でしっかり教育されていたので、優秀な文官として王宮に勤めていたんだ」


「フーシェ侯爵とは政略結婚だったのでしょうか?」


「詳しくは知らないが、そうだろうな。ラッセル伯爵家と縁を結びたがる家は多いからな。法曹界での力以外にも、優秀な遺伝子を欲しがるらしい。実際にドルバック伯爵は魔力が高い上に頭も優秀だ。生まれ持った素質以外にも、本人の努力もあったとは思うがな」


「優秀だが魔力の無い母と、愛人で魔力のある母……ですか」


「どんなにフーシェ侯爵令嬢が優秀で侯爵に愛されていたのだとしても、愛人という立場の母に対して蔑まれることはあったかもしれないな。ドルバック伯爵に対してコンプレックスを持っていても不思議はない」


「ドルバック伯爵はどう思っているのでしょうね?」


「どうだろうな。魔法好きという印象しかないが……あまり頓着していない可能性はある。まあ、妹に協力するくらいだから、意外にも可愛く思っているかもしれないぞ。妹が喜ぶことをしたかったとか」


妹の喜ぶこと……ねえ。

俺の気にしすぎか?ドルバック伯爵への勝手なヤキモチのせいで、気にしすぎてしまっているだけだろうか。


「そう言えば、殿下」


「なんだ?」


「俺の妹ですが、昨日の件で気落ちしているのです。自分がフレイヤから離れたせいだと責任を感じてしまっていまして。慰めてやってください」


「は?」


「可愛い妹の喜ぶことをしようかと」


はぁと大きな溜め息をつく殿下。いくら可愛い妹の為とは言え、王子にこんなお願いは不味かっただろうか?


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