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魔法の星の恋物語  作者: 知香
第2部
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21.魔女2人

「お前が知っていること、全部話せ」


俺は氷の剣をフーシェ侯爵令嬢に突き付けた。


「な……なんで……」


カタカタ震えるだけで、何も話さない。


フレイヤは何処かで震える程の怖い思いをして、俺のところに転移をしてきたのだ。それにこの女が無関係だとは思えない。


さっきは「しらない」と言っていたが、フレイヤが何処かに行っているのを知っているから、俺をここに誘導することが出来た筈だ。


剣の腹を再び頬につける。


「このままだと凍傷になるかもな。それとも、血を見たいか?」


「つっ……つめっ……!」


「どうしてここに俺を連れてきた?」


「……」


「言う気はないと言うことか?……君はこの間、切り傷に良く効く薬を持っていたな」


頬に当てていた剣の腹をクルッと90度回転させ、刃を頬に立てた。


「ひっ……!やっ……やめっ……」


「最後だ。言わないなら血が流れるぞ。誰かに言われたのか?」


「……あっ……兄に、フレイヤ様が、倒れたと言って、レオン様を、こっ…この部屋に、連れて来たら、ふ…2人っきりに、なれるって……」


「ドルバック伯爵が助言したと?」


「私が…フレイヤ様に、嫌がらせの言葉を言っているのを、知られて……レオン様のことが好きなら協力してやるって……」


妹の為に、妹の恋に協力したっていうことか?

婚約者がいるのに?


兄なら諦めろと言うと思うが……


ドルバック伯爵は何を考えているんだ?


フレイヤのことが好きなのか?

俺との婚約を無しにすることが目的だったのか?


それとも、ただ家の為に公爵家と婚姻を結ばせる為か?


「……他に知っていることは?フレイヤは何処に行っていたんだ?」


「しっ、知りません!それは、本当に、知りません!」


「では、何故フレイヤが転移魔法で現れた時、嘘をついた?」


「あっ……まさか…来るとは、思わなくて……でも、フレイヤ様が誤解してくれたら、婚約も無かったことになるかと……」


「俺の婚約者はフレイヤしかいない。婚約を無かったことになど、するわけがない。2度と彼女を傷付ける様なことはするな」


「…………」


この女からもうこれ以上は情報は得られないだろう。


氷の長剣の魔法を解いて消した。


フーシェ侯爵令嬢は頬から氷の長剣が無くなり、力無く項垂れた。


フレイヤが何処に転移したのかが気になったので、探す為部屋を出ようとした。


「……結局、あの男の言う通りになんて、したから、こうなったのね……」


ポツリと漏らす声が聞こえた。


「あの男?」


ドルバック伯爵のことか?

兄に対して、あの男?


「……あんな、魔力の無い女の、子ども……」




◇◇◇



「今日はもう休ませているの。ごめんなさいね」


プブル侯爵家の夜会から、父と母と共にリーズ公爵家へと来ていた。


「いえ。こちらに戻っているなら、良かったです」


何処に転移してしまったのか分からず不安だったが、邸に戻っていたようで安心した。連続で転移して、魔力不足で何処かに飛ばされでもしていたらと思うと、心配だったのだ。


「私達が付いていながら申し訳ありませんでした」


父と母が頭を下げてくれている。


フーシェ侯爵令嬢から話を聞き出した後、ホールに戻り父と母に手短に説明すると、急いでリーズ公爵邸へと一緒に向かった。


「いえっ!頭を上げてください!フレイヤは無事だったわけですから!ベルック公爵家の皆さんが悪いわけではないですし」


ヒューゴ様が慌てている。


「レオン様。私達はフレイヤからしか話を聞いていないのです。何があったのか詳しく教えてくださいますか?」


フレイヤからどう話を聞いているのだろうか。

心なしかエミリー様の笑顔が怖く感じる。大事な娘が傷付いて帰ってきたのだから、怒っていて当然なのだろうけれど。


俺もフレイヤに何があったのか知らない。震える程の怖い目にあっていたのだろうということしか分からない。


カリナとはぐれたこと、探している途中でフーシェ侯爵令嬢に騙され別室に連れていかれたこと、そしてそこにフレイヤが転移して来たが、また転移して居なくなってしまったこと、それからフーシェ侯爵令嬢から聞き出したことを話した。


「……そうですか」


そうしてエミリー様は、フレイヤから聞いた話を教えてくれた。


聞きながら怒りが込み上げ、膝の上の拳を強く握りしめていた。


(キスを……迫っただと……)


プブル卿に対する怒りは抑えられそうもない。次に顔を見たら斬り倒してしまうだろう。


「プブル卿からレオン様が浮気をしていると言われ、転移したら令嬢と2人で居たのですから、信じきれずに動揺したのでしょう」


余計なことを言ってくれたものだ。


しかし、彼女を1人にしてしまった自分が悪い。

フーシェ侯爵令嬢に騙された自分が悪い。


そして、彼女に、信じて貰えない自分が……悪いのだ。


彼女に誠実で無かったのかもしれない。

浮気をするような男に見えていたのかもしれない。

当たり前だ。

告白もせず衝動でキスをするような男なんだから。想いを伝えあってからも、己の欲望のままに彼女を抱き締めて、キスを散々してきた。軽い男に思われても仕様がない。


「すみません……私がもっと、慎重に行動していれば……」


「いやぁ、それは仕方がなかったかと。フレイヤに悪意のある言葉を言っていた犯人は分かった訳だから、それは良かったと思ってる。レオン、ありがとう。しかし、私は……プブル卿が許せない。目的もよく分からないし、未遂で終わったとは言え、もし話を広められでもしたらフレイヤを傷付けることになる」


プブル卿はカリナではなく、フレイヤを手に入れることが目的だったのか?何故フレイヤだったのだろう?


「エミリー様。私、ご相談があるのですが」


母がニコリと笑顔を浮かべている。これは、怒りを隠しているときの笑顔だ。


「何かしら。実は私もマデリンに相談したいなと思っていたのよ。奇遇ね」


エミリー様もニコリと笑顔を浮かべている。

魔女2人の笑顔に、少しゾクリとした。



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