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魔法の星の恋物語  作者: 知香
第2部
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19.涙

ドルバック伯爵の妹に案内されるまま、何処かの部屋に通された。


「こちらです!どうぞ」


部屋の中に入り辺りを見渡すが、フレイヤはいない。


「本当にここなのか?」


振り返りドルバック伯爵の妹に確認すると、何故か彼女はニッコリと笑顔を返してきた。


「レオン様はお優しいのですね。不本意な婚約にもかかわらず、婚約者の方を心配して大切にされるのですね」


慌てていた様子が、急に変わった。落ち着いた様子になり、作り物の様な令嬢スマイルだ。


「……どういうことだ?」


「ここにはいませんよ」


いない?

いないと分かっていてここに案内したのか。気味が悪い。


「それならここに用はない。退いてくれ」


彼女は扉の前に立って、退く気配がない。


「退きません。レオン様もご存じですよね?男女が2人っきりで密室にいたことが世間にバレたら、どうなるか」


なるほど。俺は彼女に嵌められたのか。フレイヤを使って……。ということは、彼女はフレイヤの居場所を知っている可能性が高い。でなければ、フレイヤがいなくなったことに気付くわけがない。


「……フレイヤは何処にいる?」


「知りませんわ」


かなりイライラしていた。

フレイヤが心配だったし、この何を考えているのか分からない気味の悪い令嬢にも苛立っていた。

手荒な真似になるのは分かっているが、イライラが抑えられなかった。


魔法で氷の長剣を作り出し、彼女の首もとに剣先を向けた。


「ひっ……!」


「フレイヤは何処にいる?」


自分でも驚く程の冷たい声が出た。


「や……やめ……」


俺がこんなことをするとは思わなかったのだろう。人に剣を向けられたこともなかったのだろう。

驚きと困惑と恐怖が入り交じった表情をして、後退って扉にぶつかる。


「お前は不本意な婚約と言ったが、俺が強く望んだ婚約だ。フレイヤの為なら、外道にでもなれる」


剣先の腹をピタリと頬に付けた。


「冷たっ……!」


彼女は恐怖でかガタガタ震えて、扉に背を付けて、ズルズルと地面に座り込んだ。腰を抜かしたようだ。


「言え。何処にいる?」


「わ……わた、し……しらな……」



その時だった。

突然目の前が光り、目を開けていられなくなり目を閉じる。そして懐に重みを感じて、後退り尻餅をついた。


「わっ……!いっつ……」


この感覚は……

眩しさが無くなり目を開けると、探していた女性が俺の上にいた。


「フレイヤ!」


思わず抱き締める。

良かった。俺のところに転移してきてくれたんだ。


俺の腕の中で、カタカタ震えている。必死に俺の服を掴み、強く握っている。


「こ……こわかっ…た……」


怖い思いをしていたのか。声も震えている。

強く、ぎゅっと抱き締める。


「もう、大丈夫だ」


ほんの少し目を離したその隙に、こんなことになるとは。良かった。見つかって本当に良かった。


「どうした?何があっ───」

「キャ─────!!!」


俺の言葉を遮るように、ドルバック伯爵の妹が叫びだした。フレイヤがハッとして、叫び声の方に振り向く。


「違うんです!私…私、急にレオン様に襲われて……」


彼女は床にへたりこんだまま、上半身を抱き締め震えている。


襲われた?


「君は何を言っているんだ?」


自分がしたことを誤魔化そうとでもしているのか。


フレイヤは状況を確認するかのように周囲を見渡し、俺を再び見たかと思うと、ズルズルと俺から降りて離れていこうとする。


どうして、俺から、離れていくんだ……?


抱き締めていた筈なのに。


俺を見る顔が、混乱している。

何を思っている?

小さく左右に首を振りながら、綺麗な青色の瞳が見開かれている。


「ど……して……」


呟きながら、その瞳から、一粒の涙が流れた。


俺は、フレイヤの涙に体が固まってしまった。

何の涙なんだ?

俺が、フレイヤを泣かしたのか?


体が動かなくなってしまった隙に、一瞬にしてフレイヤは詠唱すると魔方陣が浮かび、光り出した。


(……行ってしまう!)


眩しい光に負けまいと、薄目を開けて手を伸ばしたけれど、手は空を切ってしまう。


もう、いない。


転移してしまった。


どこに……どこに行ってしまったんだ?


せっかく俺のところに転移してきてくれたのに、手を離してしまった。



「レ……レオン様?やっと……分かったのではないですか?自分はレオン様の婚約者でいるべきでないって。やっと自覚なさったのですよ。レオン様の目の前から去ったのです。レオン様も目をお覚ましください。ソフィア様の直系なのに、あんな魔法技術が未熟な者を相手になんかされないでください。私を……!私は侯爵家の娘で、アカデミーでの成績も良いです!容姿だって私の方が良いです!あんな者より私の方が貴方にふさわしい筈です!」


ああ……

どこまでこの女は俺をイライラさせれば気が済むんだ。


フレイヤが現れたことで手から離していた氷の長剣を再び握り、立ち上がった。


俺の動きにビクッと反応する。


この女は、剣を向けられたにもかかわらず、まだ俺のことを好きだと言うのか?こんなに怖がっているのに?


貴方にふさわしい?


俺にふさわしいのはこの女じゃない。



「お前が知っていること、全部話せ」


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