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魔法の星の恋物語  作者: 知香
第2部
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17.並み

今日はプブル侯爵家の夜会に招待され、ベルック公爵家と参加することになっていた。


「母さんの話では、プブル前侯爵が宰相をしていた家で、その息子である現プブル侯爵は野心家だから気をつけろって。息子が王宮で文官として仕えていて、アリーチェ王女殿下の婚約者にしようとしていたらしいが、知っての通り失敗したから、今回の夜会では高位貴族ばかりを招待した嫁探しの目的があるんじゃないかって」


アリーチェ王女殿下の婚約は、先日正式に発表された。年末に行われる王宮舞踏会でお披露目される予定らしい。


あの、アナベル様の家系の美形の方。私は会ったことはないのだが、アリーチェ王女殿下を心から愛しているらしい。


「カリナ様が招待されるのは分かるのですが、何故私もなんでしょうね?」


「リーズ公爵家が社交場に出てくるのは珍しいことだから、この間のアカデミーの新歓パーティーに参加したことを聞きつけて、公爵家とのパイプを持とうとしているんじゃないかって言っていたけど。でも他の思惑があるかもしれないから、気をつけろって話なんじゃないかな」


「貴族社会は……大変ですね」


「俺もそう思う」


2人でふふっと笑い合った。


今日のレオン様も、とても美しい。いつも通り、優しくエスコートしてくださる。


でも、この間の湖畔での一件以来、ちょっと何か違う。


突然抱き締めたり、キスしたり、そういうスキンシップが無くなった。


そう。全く無くなったのだ。


……私、あの時、そんな変な声を出してしまったのだろうか。ちょっと……卑猥な、声、だった。幻滅された?


それとも、キスをストップしたから、それを守ってるだけ?でも、アカデミー以外でも、馬車の中や2人っきりの時でもしてこなくなったのだ。


それにハグだって。前までは、抱き寄せてくれたり、後ろから抱き締めてくれたりしてたのに。


私のこと、嫌いになったのだろうか。


でも、変わらず優しい。魔法レッスンもちゃんと指導してくれている。今日も邸まで迎えに来てくれて、「綺麗だね」って言って、エスコートしてくれて、笑顔を向けてくれて……


これまでがちょっとスキンシップが多すぎただけかもしれない。落ち着いたってこと……かな。


考え事をしていたらあっという間に侯爵邸に着いた。



プブル侯爵は特徴的な髭をしていた。ちょんと跳ね上がるような髭で、その髭を撫でるように触るのが癖のようだった。どうやらその髭は前侯爵にもあったらしい。トレードマークになっているようだ。でも、息子であるプブル卿にはまだ無かった。爵位を継いだら生やすのかしら……。


プブル侯爵夫妻とプブル卿に歓迎され、当たり障りのない挨拶をしてホールに入ると、ベルック公爵家の皆様が既に来ていたので、近寄る。


「カリナ、大丈夫だったか?」


「何にも無かったわ。今のところは」


カリナ様はプブル卿の嫁候補ではないかと、様々な貴族からも噂されていた。公爵家令嬢の高魔力保持者であり、婚約者もまだいない。そして誰もが羨む美貌。


16歳になり、本格的に社交場に出るようになったカリナ様を、狙っている男性は多いだろう。


しかし、カリナ様はベルック公爵夫妻と、エミリオ様ががっちりガードしている。そうそう手出しは出来ないだろうな、と思う。


様々な貴族が挨拶にやってくるが、適当にあしらっている。ベルック公爵家は慣れているのだろう。見て勉強しなければ……!


ダンスも2回目ということもあり、前回程緊張せずに済んだ。レオン様のリードは踊りやすくて、優しい微笑みを向けてくれる。前みたいに、私を動揺させる様な台詞も無く、無事に踊り終えた。


レオン様が飲み物を差し出してくれて、受け取ってホッとひと息ついていたら、すぐ近くで話す紳士の会話が聞こえてきた。


「偉大な天才には並みの子どもが生まれるとは良く言ったものだな。結局侯爵は宰相になれなかった。あの息子は優秀だが、宰相になれるかねぇ。次期国王となる王女殿下からの評価は厳しいらしいからな」


こうやって噂をされるのか、と思った。

自分も何処かで誰かに批評されているのだろうな。


『偉大な天才には並みの子どもが生まれる』


ズシリと重くのし掛かってくるような言葉だった。

まるで、私の事ではないか。


最近、魔力暴走は起こさなくなった。レオン様のレッスンのお陰だ。でも、まだまだ。やっと平均的な実力になったところだろう。そう、“平均”なのだ。つまり、“並み”なのだ。



「大丈夫か?疲れたか?」


レオン様に声を掛けられハッとする。


「はい。大丈夫です」


にこりと令嬢スマイルを返す。

気持ちに引っ張られて暗い顔をしていたかもしれない。気を抜いてはダメだ。


「フレイヤ様。一緒に化粧室に行きましょう」


「はい」


カリナ様に誘われ、2人でホールを出た。カリナ様は途中、男性何人かに声を掛けられるが、やんわり断っていた。上手だった。勉強しなくては……。


カリナ様の話が面白くて、笑いながら化粧室に入った、その時だった。


「1人じゃ何も出来ないの?いつまでレオン様の婚約者でいるつもり!?」


まただ。同じ人?声が似ている。


「誰!?」


カリナ様が反応して辺りを見渡す。誰もいないので、出入口に戻る。


「あっ!いた!!」


そう言うとカリナ様はドレスをつまみ上げ、走り出した。


「えっ!カ、カリナ様!?」


慌てて私も出入口まで戻る。でも化粧室を出たところで、誰かとぶつかってしまった。


「きゃ!ご、ごめんなさい!」

「わっ!」


ぶつかった方が持っていたと思われる万年筆のインクがドレスに零れた。


「ああ!すみません!ドレスが汚れてしまいましたね」


「い、いえ……」


顔を上げて見ると、プブル卿だった。


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