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魔法の星の恋物語  作者: 知香
第2部
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12.乙女心

「何も盗られなかったのよね?」


「はい……」


「どんな人だったかとか、何か分かる?」


「とにかく黒かったです。体格は、男性……なのかな。お父様ぐらいだったかと思います」


「犯人に心当たりはあるの?」


お母様の問い掛けに一つずつ答えていく。


「心当たり……」


私の机にはそんな貴重なものなんて無い。机の隣のタンスに仕舞ってあるアクセサリーだって、レオン様から頂いたネックレスぐらいではないだろうか。


もし宝石類が目当てなら、私の部屋なんかより、お母様の部屋の方が高価なものがある。

お母様は魔力が高いし、お父様が一緒だったから侵入出来なかったのだろうか。それで私の部屋?でも、煌びやかに高価なものを着飾って夜会に出るような家族じゃない。そもそもあまり出ない。


それなら、別の目的?

私の部屋に入る目的?


「……」


「何か、最近変わったことがあったとか。何か、誰かにされたとか」


「誰かに…された……」


悪意を向けられたけれど、それと関係あるの?


「何かされたの?」


「何!誰に何をされたんだ!?」


少し呟いただけなのに、お母様に拾われてしまい、お父様が大きく反応する。


「何かって程じゃないけど……ちょっと、悪意のある言葉を言われたくらいで……」


「誰に?いつ?何を言われたんだ?」


ううう……お父様の追求が凄い。


「誰かは分からなくて、アカデミーのトイレに行った時とか、この間のパーティーで化粧室に行った時に、『ソフィア様の直系だからレオン様と婚約出来た』とか、『魔法の技術が劣ってるのに自惚れて』とか、『ダンスも下手で相手をさせられるレオン様が気の毒だ』とか……そういう、ご令嬢からのやっかみ?みたいなこと」


「……そうか」


「そうだったのね。まあ、レオン様と婚約したら、ご令嬢に妬まれることは予想できたけれどね。よくある貴族の嫌みとも言えるから、それが今回のことに関係するかは判断がつかないわね」


「そうだな……」


「……レオン様から頂いたネックレスを羨ましく思って奪おうとした、とかかしら?」


「私、レオン様から頂いたって誰にも言った記憶がないわ。お父様とお母様、それにベルック公爵家の方しか知らないんじゃないかしら」


「じゃあ、違うかしらね」


他に何かあるかしら?

高価なものじゃなくて、価値のあるもの?

価値があると言えば……ソフィア様の物?


「……ソフィア様の、魔法書?」


「魔法書?」


「あの魔法書って、高度魔法が書かれていて、レオン様も知らない魔法だって言っていました。貴重な、価値のある魔法書じゃないのですか?」


「そうねぇ。魔法を研究しているような人なら興味は持つし、欲しいと思うかもしれないけど、それがフレイヤの部屋にあると思ったのはどうしてかしら?基本的に隠れ家に保管されてるわよね」


「長期休暇に入る前、教室で転移魔法を使ったことがあります。それで、私の部屋に魔法書があると思ったとか?」


「一理あるな。断定は出来ないが。しかし、転移魔法は魔力の消費が激しい高度魔法だ。あまり多用しないようにな。危険な場所に転移してしまうこともある」


「……はい。すみません」


お父様は立ち上がると、私の頭を撫でた。


「警備隊と話をしてくる。フレイヤは休みなさい」


そう言ってリビングから出て行った。


「今日のアカデミーは休むといいわ」


「……はい。魔法、まだまだ、沢山勉強しないとなのに……」


「今日は仕方ないわ。寝不足では魔法も集中出来ないし、危ないわ」


「私が……魔法で、犯人を捕まえられれば良かったのに……ごめんなさい。体が、動かなくて……」


「フレイヤは女の子なのよ?怖くて当たり前よ」


ぎゅっとお母様が抱き締めてくれる。

甘えてばかりだ。


暫くすると、扉をコンコンコンとノックする音がして、またお父様が入ってきた。


「どうされました?」


「ベルック公爵家から使者が来てな、今日アカデミーが終わったらレオンが来てくれるそうだよ」


「え……」


「そう。良かったわね。じゃあ、しっかり休んで、その目の下のクマをどうにかしないと」


「えっ……ク、クマ、あるの?」


やだー!こんな姿見せられない!午後までにどうにかしないと。


「ね、ねます……」


「そうね」


くすりとお母様に笑われてしまった。



◇◇◇



全く集中出来なかったアカデミーの授業が終わり、リーズ公爵家を訪れた。のだが……


「やあ、レオン。せっかく来てくれて、すごく嬉しいんだけど……」


何故かヒューゴ様の歯切れが悪い?


「あの……もしかして、ご迷惑でしたか?」


「そうじゃないのよ。フレイヤったら、結局一睡も出来なくて、クマがね……」


「クマ?」


「目の下にクマが出来ちゃって、お化粧で隠してあげたんだけれど、レオン様に恥ずかしくて見せられないって言って、閉じ籠っているのよ」


「私は全く気にしませんけど……?」


フレイヤなら、どんな姿でも良いのに。俺はどんな姿も見たいと思うのに。


「そうよね。でも、乙女心ってそう言うものなのよ。分かってあげてくれる?」


「……今日は、会わない方が、良いですか?」


「んー……。ちょっと、待ってね」


エミリー様はニコリと笑ってどこかに行った。フレイヤのところに確認に行ってくれたのかもしれない。



「レオン。今回の件、まだ犯人の目的も誰なのかも何も分からないのだけど、可能性の一つとして、君と婚約したフレイヤに対する妬みも考えられる」


「……そう、ですか」


「君との関係を妬んだ令嬢から、悪意のある言葉を言われていたようなんだ。私も妻も今日まで知らなかったし、誰にも言わなかったみたいだけどね」


「……」


「君を責めているわけではないことは分かって欲しい。同じ男として、何も知らないでいるより、知っていたいと思うかなって」


「分かっています。知らせてくださって、ありがとうございます」


「ああー!またフレイヤに嫌われるかな~!何で教えるのよーって」


「フレイヤ嬢には知られないようにします」


「助かるよ~」


本当に、フレイヤは愛されているのだな。


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