3.男性陣
婚約の挨拶も終わり、女性陣が女だけの話があると言うので、男だけでの交流をすることに。
応接間を追い出されてしまい、フレイヤのお父様に連れられ別室へ。
「リーズ公爵は王宮魔導士の中のどの分野にお勤めですか?」
「私は地球の現代文化を調査する部署におります」
「地球の、ですか?」
リーズ公爵の言葉に、父と共に驚く。そんな部署があることを全然知らなかった。
「ええ。妻も同じ部署なのですが、実はあまり知られていない部署なのです。地球の文化、文明がどのように進化していっているのか調査をし、この星にも取り入れるようにしています」
「どのように調査をするのですか?」
「妻のように魔力が高い者が地球まで転移し、調査してきます。または透視魔法が得意な者もいますので、それで観察をします」
「ご夫人は転移魔法が出来るのですか!?」
「フレイヤ嬢が転移魔法をするのを見たことがありますが、地球まで行けるとは凄いですね!」
「えっ!?フレイヤは転移魔法が出来るようになったのですか!」
知らなかったのか。
しかし、地球まで転移出来るとは。現代で転移魔法が使える人自体が何人いるかなのに、さすが王宮魔導士でありソフィア様の直系だ。
「ええ。数回ですが、目の前で見ました」
「そうか……。まあ、さすがというか。しかしまだコントロールが不安定でしょう。あまり遠くへは転移しないよう注意しておかなければ……」
「コントロールが未熟なまま遠くへ転移するとどうかなるのですか?ただ転移出来ないだけでは済まないということですか?」
「ええ。知らないところへ飛んでしまうことがあり、また魔力が回復するまでそこから動けなくなる可能性もあります。知らないところでも危険の無い所なら良いのですが、例えば地球へ転移するつもりが宇宙に放り出される可能性があります。宇宙では呼吸が出来ませんから、そのまま命を落としかねません」
確かに危ない。
「地球の文化や文明とは、この星にも数十年前に開発された汽車とかもですか?」
「そうです!この星では魔道具で汽車を動かしていますが、地球では蒸気で汽車を動かしているんです」
「蒸気ですか!人間は魔法が使えなくとも、それをカバー出来る頭脳と探求心があるのでしょうな」
「そうだ!車を見ませんか!?」
「くるま?」
そして屋外へ移動して見せてもらったのが、馬車とは違う、箱形の車輪のような物がついた乗り物だった。
「これが、車…ですか!」
「馬車の様に馬で引いて動かすのではなく、地球では電気で動かす車が発明されたんです。でも当初はあまりスピードも出ず、一般市民が使うことはなかったそうですが、次第に研究開発が進み、今ではガソリン燃料を燃焼させて動かす車が出来たんです。まあ、これはこの星で乗る様に私が改良したので、魔力を込めた魔道具を使って、乗る人が自分で動かすことが出来ます」
「御者も馬もいらないのですね」
「そうなんです。とても便利な乗り物です。でもこの星ではまだ車を持っている人は全然いませんので、規制等も無く危ない為、王都では乗るなと言われています。これはほぼ鑑賞用ですね。領地では乗れるので、そちらの邸にある車なら動かせます。ベルック公爵もレオン様も、今度領地にいらしたら是非乗ってみませんか?」
「それは楽しみですな」
「乗ってみたいです」
新しい楽しみが出来た。
「あの、リーズ公爵。私のことはレオンで構いません」
「あっ、そうだよねぇ!いやぁ、なんか、アナベル様の家系だった私からしたら、ベルック公爵家はかなり縁遠い本家であるし、お会いして会話するなんて考えられないくらい高貴で華やかなイメージで。有り難いことに縁を結ぶことが出来たので、慣れないとですよねぇ」
この方は驕りとかない人なのだろうな。
リーズ公爵家だからと言った、権力とか名声とかそう言うものに惹かれてこの家の婿に来たのではないのだろう。
アナベル様の家系だ。純粋に、ただエミリー様に恋をして、たまたま公爵という地位に立ってしまったという感じだ。
話をしていると、高圧的な雰囲気は全く感じない。こんな方だから、フレイヤも自然体な柔らかさの雰囲気を持った女性に育ったのだろう。
いつだったか、フレイヤが「両親は優しくて楽しい人」だと話していた。公爵もエミリー様も優しい人なのは納得だ。楽しい人かどうかは、これから発見していくことが出来るだろう。
「えっと……、レオン。私のこともヒューゴで構わないから。それと、君は騎士科だよね?公爵家の当主になるからと言って、変わらず騎士は目指して問題ないからね。私もこの様に王宮魔導士を続けているし、領地は優秀な管財人に任せているしね。なにより、リーズ公爵家は寿命が長いから、まだ存命している魔女が領地のあちこちで目を光らせている。またその方達も紹介しないとね」
フレイヤと同じで魔法が好きで、王宮魔導士の仕事を続けている公爵。ベルック公爵家も比較的自由に選択させて貰っているが、この家も個人の意思を尊重して縛りつけたりはしない。
魔女が領地のあちこちに住んでいるのも、うちと同じだ。どのような方達なのだろう。フレイヤやエミリー様の様な方なのだろうか。
「ありがとうございます。ご親族方にお会いできるのも楽しみにしています」
フレイヤが育った家は、何だか居心地が良い。彼女を様々なところで感じることが出来る。




