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魔法の星の恋物語  作者: 知香
第1部
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3.仮装トーナメント大会①

どうしても、どうしても仮装で目立ちたい!


そう思って気合いをいれて馬になった。

でも魔法が上手くいかなくてケンタウロスみたいに上半身が人間になってしまい、さらには顔は馬という、ヘンテコな仮装になってしまった。

それでも馬にもケンタウロスにもなれなかった中途半端な仮装は目を引いた。



……のに、あそこにいる猪さんが気になる!

完全に負けた!!


皆が神話の神とか、歌劇や小説の登場人物とかに魔法で仮装して、さらにバトルしやすい姿をチョイスしている中、その人は猪を選択したセンスもさることながら、毛並みや獣らしい鋭い瞳、ひくひくする鼻、反り上がった牙といったパーツのクオリティーも素晴らしい!本物の猪が服を着て二足歩行している様にしか見えない!なんなら獣の臭いまでしてきそうな仕上がり!


……臭いするかな?近づいてみようかな。


見た目が怪しいからか、だれも猪さんに近づかない。木陰で佇む様子は、群れから仲間外れにされているよう。


でも私はお近づきになりたい!


ということで、好奇心のまま猪さんに向かってカッポカッポと歩きだした。


猪さんが近づく私に気付いてビクッてしているけど、気にしない。

馬でもケンタウロスにもなれなかった姿が怖いのか、誰も近づかないのに怖がることなく近づいてきたことに、吃驚したのか何なのかは分からないけど、うん、気にしない。


「あの…!その猪の仮装のクオリティー、素晴らしいですね!」


猪さんのすぐそばまで行って、私の方が大きいせいか猪さんに影を落として上から覗き込むように話しかける。明らかに猪さんは後退りして引いているが、うん、気にしない。


「そ…そう、ですか。ありがとう、ございます」


あら、男の人の声だわ。


「質問させていただいても良いですか?」


「……何でしょう?」


警戒してますね。ですよね。怖がってますもんね。こんな馬にもケンタウロスにもなれなかった姿で、誰も近づかない猪さんの姿の人に対して、避けるどころかグイグイ来られたら驚くし怖いですよね。


「何故猪さんなのですか?それにとっても変身がお上手ですね!どうしてそんなに上手に出来るのですか?」


さらに猪さんに覆い被さるように、馬の顔を近づけて問いかける。馬の鼻が猪さんの鼻にムニュ……はい、当たってますね。慣れない馬の長い顔のせいで、距離感が分かりません。


「ちょ…ちょっと、離れてくれませんか!?」


「あっ!すみません!」


とりあえず覆い被さっていた上半身を起こすと、猪さんは1歩下がった。ほっとしている様子。


「……猪になったのは、顔を隠したかったのと、人に話し掛けられたくなかったから…です」


「はっ!そうとは知らず話し掛けてしまい、すみません!」


「いえ……他の人からは話し掛けられていないので、まあ、作戦通りかと思っています」


「顔を隠したいって、誰だか知られたくないってことですか?」


「ええ、まぁ……」


顔を逸らしながら肯定していて、何だか誤魔化したい雰囲気なのかなと感じた。


「では、お名前はお聞きしません!でも、その変身技術について教えて欲しいです!」


猪さんは再び私に視線を戻し、じっと私の姿を頭から足、そして尾まで見遣る。


「それは、ケンタウロスですか?」

「馬のつもりでしたが、上半身の体だけ人間の姿が残ってしまいました」

「……」

「呆れてます?」


ゴホン!と誤魔化すように咳をする猪さん。突っ込まないあたり、お優しい人なのでしょうか。良いんですよ、下手な変身だって言ってくださっても。


「変身は想像力が一番大事だと思っています。馬であれば家の馬や、アカデミーにも何頭かいるので直接見て観察しながらイメージを固めて、それから変身してみてはどうでしょう?パッと見て、細部の再現度が甘い気がします。イラスト的な馬感が強いので。馬の特徴的な顔や下半身だけが変身してしまったのも、単純に思える首部分のイメージが足りなかったのでは無いかと……。大きい馬に変身出来る魔力はあるようなので、訓練すれば大丈夫だと思いますが」


偏見ではあるが、一見間抜けそうで野性的な姿の猪さんとは正反対の、真面目なアドバイスに違和感を抱いてしまうが、その的確さに感動してしまった。


「想像力ですか!その為に観察が必要なんですね!」


「そうですね、俺もアカデミーに入学する前、家庭教師から動物の観察を散々させられましたから。イメージをする為に動物の絵を沢山描きましたし」


「は~、なるほど」


アカデミー入学前にしっかりと基礎を家庭教師から学んでいるとは、きっと高位貴族なのだろうな。


「あの…もしかして貴女はこの間、魔法レッスン場の防御魔法を解いてしまった方じゃないですか?」


「えっ!そのことを知っているということは……その時に魔力を壁に流すとアドバイスしてくださった方ですか!?」


野性的なのに意外にもつぶらな瞳で、コクンと猪さんが頷く。


まさか同じ人から再びアドバイスしてもらえるとは!嬉しい!もっと沢山教えて欲しいが……さっき「名前は聞きません」って言っちゃったから、この方がどなたか分からないし、聞けない。だから次いつ会えるかも分からない。名前も顔も分からなかったら、たとえすれ違っても気付かないだろう。


失敗した……。


「その時、魔力が高い魔法一家だって言ってましたよね?」


「はい!そうですね」


「魔力が高いということは、高位貴族ですよね?アカデミー入学前に家庭教師から基礎を学んでないんですか?」


上半身の体が人間なので、両手が生えており、右手の人差し指で馬の頬らしきところをポリポリと掻く。


「私、小さい頃は魔力暴走が本当に酷くて、無意識に攻撃して傷つけてしまうこともあって、家族以外の人は怖がって近づいて来ませんでした。なので、家庭教師がついたことがないんです」


えへへと、馬だから表情が分かりづらいかもしれないが、笑いながら答えた。

でも猪さんははっとして、少し慌てているようだ。


「あ…あの、ごめんなさい!苦労されたんですね」


踏み込みすぎたとか、触れてはいけないことに触れちゃったとか、思っているのかもしれない。


「いえいえ、お気になさらないでください。まあ、そんなこともあって、ずっと家の回りに両親が結界を張っていて、アカデミーに入るまでその中から出たことが殆ど無かったので、普通が分からないんです。だから苦労してたのかどうかもよく分かりません」


「そうですか……」


「ほんとにお気になさらないでくださいね!両親はとても優しく楽しい人なので、家に引きこもっていたけど楽しかったんですよ!両親は任務で家を空けることもありましたが、おばあ様が居てくださったので寂しいと思ったことはないですし」


とりあえずニコニコと笑顔を浮かべる。馬だから表情が分かりづらいかもしれないが。


「それより!猪さんは確か騎士科の方でしたよね!ということは剣術戦に出場されるんですか?」


「そうです。貴女は魔法戦ですか?」


「はい!」


そう。何故皆が仮装をしているのかというと、今日はアカデミーの、魔法で仮装をした姿で戦う【仮装トーナメント大会】なのだ。剣術戦と魔法戦の好きな方に出場し、仮装を保ちながら戦わなければならない。仮装が解けてしまったら負け。また、戦闘不能やリタイヤ、競技場から落ちてしまったり等、審判である先生の判断によっても勝敗が決まるのだ。


「お互いに頑張りましょうね!」


「そうですね」


何だか猪さんが笑った気がした。



もっと沢山話を聞きたかったけれど、直ぐに私の出番が回ってきてしまった。


気合い十分で競技場に立った。


基本的には魔法科コースの人は魔法戦に出場し、文官コースの人は好きな方に出場する。基礎科はまだ出場出来ないが、学年は関係無く戦う。


先ずは人数が多いので、競技場に全員が立ち、潰し合いをするのだ。そして制限時間内まで残った人がトーナメント戦に出場出来る。


なのでまずは生き残らないといけないのだ!



───が、はい、無理でした。


いや、簡単にいうと自滅しました。


一気に競技場外に吹き飛ばしてしまえと思って竜巻を起こしたら、気合いが入りすぎたのか思ったより大きな竜巻が生まれてしまい、私自身が風に足を取られて踏ん張ることが出来ずに、場外に飛んでしまったのだ。馬の姿の4本足でも踏ん張れなかったので、人間の姿をした、特に格好つけてマントを着けている人なんて簡単に吹き飛ばされていた。


一気に出場者を吹き飛ばすのには成功したけどね。吹き飛ばされた人はもれなく目を回していましたよ。


残ったのは危機回避能力が高い人や、防御魔法が上手い人。それも、私の魔力量にも耐えられる人ということで、10人も残らなかったらしい。


らしい、というのも、私も目を回して気絶してしまい、その後の戦いを殆ど観ていないのだ。先生から「やりすぎだ」と注意を受けたりもして、医務室から出たらもう決勝戦だったのだ。


はぁ。トーナメント戦を観て勉強したかったな。


ちなみにあの猪さん、剣術戦で優勝していた。

一体何者!?



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