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魔法の星の恋物語  作者: 知香
第1部
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2.声だけの出会い

「レオン様、好きです」


「ごめんなさい」


「どなたか想われている方がいらっしゃるのですか」


「特にいません」


もう、何度目かも何人目かも分からないこのやり取り。


自分の容姿が優れているのは分かっている。父も母も祖父も祖母も兄妹も、そして何故か番犬でさえも、一族皆容姿が優れている。


「格好いい」

「素敵」

「麗しい」

「物語の王子様みたい」


様々な言われ方をされてきた。俺は王子じゃないんだけど。


どうせ、好きなのは"顔"なのだ。

だって会話したこともない令嬢から告白されるのだから。

"顔"に恋して夢を持たれても困る。

近寄ってくる令嬢は表の部分しか見ていない人ばかり。そんな令嬢の中から想い人など出来る筈がない。



◇◇◇



「レオン、また告白断ったらしいな。別にいいじゃないか。せっかく寄ってきたんだから可愛いなら食えば?」


兄はこういうタイプ。本気で付き合った女性は居ないらしい。いずれ貴族位の公爵を賜っている家の跡を継ぐ身。近寄ってくる令嬢……に限らず女性は俺なんかより遥かに多いだろう。


家の為の政略結婚もありえる。


兄曰く、恋愛は理性でするものだと。家の為にならない女性は好きにならないし、遊びの相手だとしても弁えられる女性としか関係を持たないと言う。相手に未亡人が多いのはそのせいか……


「エミリオお兄様は最低です!」


妹のカリナは夢見る少女タイプ。好きになった人と一生を添い遂げたいらしい。


「そうねぇ。男の子なんだし、もう少し女性の扱いに慣れていた方が結婚後につまらない男と思われずに済むかもしれないわよ?エミリオは遊びすぎだけれどね」


「私はつまらない男だったのかい?」


「そんなこと無いわよ?でも、お顔の割に紡がれる愛の台詞のレパートリーは少ないなぁと思ったかしらね」


「君は美しいから、多くの男から多くの愛の言葉を囁かれたのだろう?囁かれたい言葉があるならいくらでも言うから教えて欲しい」


「まぁ、嬉しい」


「お父様、お母様。家族皆での朝食の席です。続きは夜にお2人でお願いします」


俺と兄は、親のやり取りをまた始まったかと思いながらも見ないフリをするが、妹はちゃんと突っ込みを入れている。


今日もいつも通りの朝だ。



◇◇◇



「レオン様、お慕いしております」


「ごめんなさい」


これもいつも通り……

綺麗な湖のそば。告白をお断りして、1人湖畔で寝そべり空を見上げる。


綺麗な青い空を小鳥達が追い駆けっこをして飛び回っている。湖の水面が陽の光を反射してキラキラと眩しくて目を細めると、木漏れ日が気持ち良くてそのまま目をつむって眠りたくなってしまう。

風が吹くと花の香りがしてさらに睡眠欲を刺激し、もう寝てしまうことに決めた。


今日はどうせ、午後の授業はない。


俺は現在王立アカデミーの騎士科に通っている。王立アカデミーは13~15歳までは学問と魔法の基礎を学び、16~18歳までは騎士科コース、魔法科コース、文官科コースと別れる。


兄は跡取りなので文官科コースに進み、法律や経済等を専攻していたらしい。昨年無事に卒業し、今は継承の為、父の領地経営の手伝いと社交に積極的に参加をしている。

俺は今17歳。卒業まであと2年。卒業したら騎士団に入る予定だ。来年入団試験を受ける予定でいる。騎士になれば一代限りの爵位を賜れる。貴族領や議会への出席権等は無いが、報奨金が貰えるし、功績によっては報償金も貰える。


(俺、1人でもいいな…)


兄のように跡継ぎの問題もないし、給料と報奨金を自分で好きに遣って、自由気ままに暮らすのも良いなと思う。


もともと勝負する気のない陽気に堂々と負けて、うとうととしていたら、突然爆発音がした。


ドッカ─────ン!!!


「えっ!何?」


音に驚いて慌てて体を起こすと、今度は女性の声が聞こえてきた。


『キャ─────!髪が燃えてる───!』


「………」


おそらく魔法に失敗したのだろう。可哀想に。しかし何故声が……?


今居る湖のほとりには学生用の魔法レッスン場が建てられている。レッスン場の一番端にある部屋からの爆発音。つまり、俺が寝そべっている直ぐ裏手だ。


レッスン場は通常魔法に失敗しても大丈夫なように防音防炎で、魔法を消し去ってしまう特殊な防御魔法で加工がされた壁で出来ている。割れたら大変なので窓もない。なので、音が聞こえてくる筈がないのだが……


『なんで?なんでこうなったのかしら?解除魔法が効いてないんだけど!』


(大丈夫かな、この子……)


『もう一回やってみようかしら!』


(えっ!このまま!それはまずい!)


おそらくだが、何かしらの解除魔法を試みて間違えて部屋の防御魔法を解いてしまったのだろう。でなければ声が聞こえてくる筈がない。

とすれば、部屋の防御魔法を解いてしまった状態で爆発が起きてしまったらこの部屋は燃えるだろう……そして近くに居る俺にも被害があるだろう……


コンコンコンコンコンコンコンコン!


かなり強めに壁を叩く。


『きゃあ!ビックリした!何の音?』


「あの!ちょっと魔法を使うのを待ってください!」


『え?え?どこから声が?』


「外です」


『なんで外から?音が聞こえているんですか!?』


「丸聞こえです。あなた、おそらく部屋の防御魔法を解いてしまっていますよ」


『え───!そういうことか!だから檻の解除が出来てなかったんだ!えっ、でもなんで檻じゃなくて部屋の解除をしてしまったのかしら……ぶつぶつ』


1人で考え込んでいるようだ。


「……でも、凄いですね。普通部屋の防御魔法は学生の魔法では解けない筈ですけど」


『あっ!ごめんなさい!せっかく教えてくださったのに無視して1人の世界に浸ってしまっていました!』


(はっきり無視って言ってるよ……失礼なのか正直なのか……)


『私、魔法の技術はダメなんですけど、魔力は高いのです。魔法一家の娘なので』


(あぁ、魔力が暴走しやすいのか)


「俺も基礎科の頃は暴走してしまうことがあったから、魔法を使う前にレッスン場の壁に魔力を流して吸収させて、魔力が安定した状態になってから練習をしていましたよ」


『壁に流すのですか!知らなかったです!』


「俺も兄から教えて貰いました。兄も魔力が高かったので」


『ああ…私にも兄や姉が居れば……もしくは先輩の知り合いでも居れば良かったのに……。失礼ですが、魔法科の方ですか?』


「いや、俺は騎士科です」


『魔力が高いのに魔法科には進まなかったのですか?』


この手の質問は同級生からもよくされた。

騎士に憧れているとか、鍛練で体を動かす方が好きだとか適当な事を言っているが、本音は違う。


「…国に仕える魔導士の制服がダサいから…騎士の服の方が格好いいじゃないですか」


顔を見られていないし声だけだから別に本音でも良いかな……と思って言ってしまった。


『分かります!ダサいですよね!いかにもなフード付きの黒のダボダボなローブ!私もあんなの着たくないです!もっと動きやすそうでシャープでスタイリッシュな感じのに変更して欲しいです!』


「同意してくれる人がいるとは……」


ちょっと嬉しい。


『私はもっとトレンチコート風なのが良いんですよね!男性はストレートで腰ベルトを閉めてシュッとしていて、女性は腰ベルトからフレアで広がるタイプで可愛い感じの』


「いいかも!それなら魔導士がぞろぞろ歩いていても気味悪がられないかもね」


制服話に花を咲かせていたら、ゴーンゴーンと午後の授業の予鈴が鳴った。


『ああ!いけない!午後の授業が始まっちゃう!夢中になってたくさんお話してしまって、ごめんなさい!』


「いや、俺は午後授業が無いから」


『そうなんですね!私は急ぎます!』


「あっ!ちゃんとそこの部屋の防御魔法を解いてしまったことを先生に報告して、魔法をかけ直してもらってね!」


『ああ!そうですねっ!ありがとうございました!』


バタバタと音がした後、湖畔の穏やかな静けさに戻った。長閑な陽気であんなに眠かったのに、すっかり目が覚めてしまった。


賑やかで面白い子だったなと思った。会話を思い出して、ふっと笑った。


名前も顔も年齢も知らない魔法科の子。


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