1.始まりの魔女─星の始まり─
これは、この魔法の星の、始まりの話。
「もうさぁ、疲れたよね~」
「ほんと、やっと人心地つけるよ~」
「ああ……寝たい」
3人の魔女は新しく作った隠れ家のリビングに入ると、それぞれソファに倒れこんでいた。
1人掛けのソファに誰にも気にすることなく股を開いてどっかりと座った魔女が言う。
「なんかさぁ、あんなにも人間たちにムカついていたのに、もうここに来たらどうでも良いって思えてきたわ」
「魔女狩りのことかしら?」
2人掛けのソファに座ったまま上半身を横に倒して、肘置きに頭を乗せ、ぐったりとした状態のまま、もう1人の魔女が答える。
「そう。人間たちは愚かな生き物よね。結局は私たちを恐れていただけなのよ、きっと」
「そうね、そうやって弱い自分を守ってるんじゃないかしら。そう考えると、何だか可哀想に思うわ」
「………」
「ソフィア、無言になってるけど大丈夫?」
何も反応が無いので、もう1つの2人掛けソファに仰向けになって目を閉じている、もう1人の魔女に問い掛ける。
「ん……眠くて……」
「仕方ないわよ。一番魔力が高いソフィアにかなり頑張って貰っちゃったからね。ゆっくり休んでよ」
「この星を創るって言ったのも、実現させるために研究してくれたのも、ソフィアだものね。ほんと、すごいわ」
「ありがと……」
「私からしたらエマも凄いわよ。計画を練って私たちを引っ張ってってくれて、期を見極める能力っていうのかしら、判断力も行動力もあって、尊敬してるもの」
「ベタ褒めじゃない~!ありがと!アナベルは……美人よねぇ……女の私も見惚れるくらい。そしてにこにこしてて明るくて自由人で優しい。貴女が居てくれたから心が暗くならずに済んだのかもしれないわ」
「ふふっ!ありがと!」
「さて、これからどうしましょうねぇ」
「地球から逃げてきたのは良いけれど、3人しか居ないのもつまらないわよね。私は恋がしたいわ」
「アナベルは相変わらずの恋愛依存症ね」
「地球から良い男を連れてこようかしら」
「まあ、人口を増やして国を創るのも良いかもね」
「ほんと?じゃあちょっと地球に行って旦那様を見つけて連れてくるわ!」
さっきまでソファにぐったりとしていたのに、すくっと背筋を伸ばして立ち上がり、魔法をかけて服を着替え、鏡の前で髪型を入念に整えている。
「準備、早いわねぇ……」
「じゃ、行ってきます!」
呪文を唱え、転移の魔法陣を発動させ、光を纏ったかと思ったらスッと消えてしまった。
「アナベルの方が行動力あるんじゃないかしら……」
魔法陣が消えたところを見つめながら、ポツリと呟いた。
「……魔力が残ってて羨ましい……」
「ソフィアはとにかく寝て、魔力と体力を回復しなさい」
「ありがと……」
これが始まりの魔女。
この魔法の星を作った魔女。
地球で迫害に遇い、逃げ場として地球にそっくりな星を作った。魔力量の問題で地球の10分の1くらいの大きさだけれど、気候風土はそっくり。生えている植物も同じ。
宇宙にひっそりと存在している。
太陽を挟んで地球の反対側、星には魔法をかけて地球の人間には見つからないようにして。でも太陽の暖かい光は届くし、星の周りを回る月も作った。
迫害はされたけれど、優しい人間もいた。
地球は緑に溢れ、海は綺麗で、昼間の青空も夜の星空も美しい。地球に住みたかった。
でも、このままでは他の仲間のように殺されてしまう。なら、地球に似た星を創って、迫害するような人がいない星で暮らしていこう。
それが、この星の始まり。




