表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔法の星の恋物語  作者: 知香
第1部
24/159

24.躍起

かなり苛立っている自覚はある。

いや、焦っているのかもしれない。


アカデミーの校舎の廊下を、カツカツと靴の音を力強く鳴らしながら、そして足早に歩いていた。



先週、2日連続でフレイヤ嬢が魔法レッスンに来なかった。待ちぼうけをくらった。

それもそうだろう。突然キスされ、何も言わなかった相手と会いたくないと思っても仕方がない。

嫌われたのなら顔も見たくないと思うだろう。

俺の責任だ。


どうにか挽回の機会をと思っていたところに、休日の昨日、突然彼女から手紙が来たのだ。

思いがけず来た手紙に、嬉しいような期待と、何が書かれているのかの不安がぐるぐると巡っている中、ドキドキを抑えて封を開き、手紙を読んだ。


しかし俺には受け入れがたい内容で、ショックを隠しきれなかった。


手紙には、魔法レッスンを終わりにしたいということと、これまでの指導のお礼、そしてアリーチェ王女殿下との婚約を祝う内容が書かれていた。


魔法レッスンを終わりにしてしまったら、彼女との繋がりが無くなってしまう。


そしてアリーチェ王女殿下との婚約話を何故知っているのか。しかも断った話だ。


彼女と話がしたい。


そう思い、アカデミーでどうにか会えないかと、魔法科の校舎の中を歩いているのだ。

座学であれば1年生の教室にいるはず。

押し掛けるなんて迷惑かもしれない。嫌がられるかもしれない。


それでも、彼女と話をして、きちんと伝えたい。



騎士科の俺がいるのが物珍しいのか、周囲にやたらと見られているが、そんなことは気にせず真っ直ぐに1年生の教室に向かった。


教室に入ると、皆が驚いた表情を浮かべて俺を見てくる。その中から彼女を見つけた。何日ぶりかに見る彼女もまた驚いて目を見開いていた。


朝の時間。授業が始まる前。皆が教室に入って授業の準備をしている中、カツカツと彼女の前まで行った。

皆が何事かとざわざわしながら俺を見ている。騒いでいるご令嬢もいるが、気にせず彼女だけを真っ直ぐに見る。


「話をさせて欲しい」


「……話すことは、何も……」


「俺がある」


彼女は困惑した表情を浮かべ、青色の瞳が揺れている。


「……ご、ごめんなさい!」


そう言って一瞬にして呪文を唱えると魔方陣を出現させて、教室中を照らす強い光を纏って消えてしまった。


「しまった……!転移か」


逃げられてしまった。いつの間にか転移魔法を使いこなしていた。


ああ、隠れ家で魔法書を見せてもらったときに、呪文を覚えておけば良かった。そうすれば追いかけられたのに。


いや、彼女の腕を捕まえておけば良かった。そうしたら一緒に転移出来たかもしれない。


後悔しても遅い。



◇◇◇



昼の時間、殿下から話があると言われ、また個室で食事を摂りながら話をすることになった。


「朝、どこに行っていたんだ?」


「フレイヤ嬢のところへ。しかし転移魔法で逃げられてしまいました」


「そう言えば、彼女は転移魔法が使えたんだったな」


「ええ。前は魔法書を見ながらだったのですが、もう使いこなしていました」


「そうか、すごいな」


今この星で転移魔法を使える人は少ないだろう。そのぐらい高度な魔法であるのだが、呪文が載っている魔法書自体が無いのだ。


彼女の家と繋がっている隠れ家にある、ソフィア様が書き記した魔法書の他は、王家の書物庫くらいでは無いだろうか。少なくとも俺は隠れ家で見せて貰うまで見たことが無かった。


「しかし逃げられたとは、お前、彼女に避けられてるのか?」


「………」


つい、喋ってしまった。キスしたことは絶対に殿下に言うまいと思っていたのだ。このままではなし崩しにバレてしまう。


「……話とは何ですか?」


「話題を変えようとするな。まあ、いい。先週末、フレイヤは魔法レッスンに来なかっただろう?」


ドキリとした。それは誰にも言っていなかった筈。カリナにも他の家族にも話していなかった。


「……何故ご存知なのです?」


「王宮で偶然会ったからだ」


「王宮に?」


彼女が王宮に何の用事があったのだろう。

彼女も公爵家ではあるが、俺と同じでそんなに社交をしている様子では無かった。

エドワード殿下と先週お会いした時も、「お久し振りです」と言っていたので、王族と頻繁に会っている訳ではないのだなと思ったのだ。

社交を積極的にしている兄ですらも、彼女のことを知らない様だったし。


「姉上にお茶会に呼ばれたと」


「それで……婚約話を知っていたのか」


婚約話は王家とうちの家族しか知らない筈の話。それを彼女が知っているのはおかしいと思っていた。


「フレイヤは婚約の件を聞いたようだな」


「ええ。昨日彼女から手紙が来たんです。魔法レッスンをやめたいと、そしてアリーチェ王女殿下との婚約を祝う内容でした」


「身を引いた訳か。姉上が相手ではな。分からなくもない」


殿下が溜め息をつく。彼女へ同情する気持ちがあるのだろうか。


「俺は断ったはずですが」


「姉上は諦めていないようだ。お前が一番最良だと言っていたからな」


「何故俺なんです?」


「さあな」


殿下も知らないのか。そしたらもう、ご本人に確認するしかない。


「……殿下、お願いがあります。アリーチェ王女殿下とお話をする機会を作って頂けませんか?」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ