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魔法の星の恋物語  作者: 知香
第1部
25/159

25.本音

「早速乗り込んでくるとは、さすがね」


にこりと笑って俺を見る。

この腹に何かを隠した笑顔は、エドワード殿下にそっくりだ。


「お時間を頂きありがとうございます」


アリーチェ王女殿下は2年前にアカデミーを卒業した成人王族、しかも次期国王だ。任される執務は多く、俺なんかと会っていただける時間を作って貰えるか不安だったが、あっさりと面会を許可された。


「婚約候補者なのですから、当たり前ですわ」


それでか……。


「その事ですが、私は両親を通じてお断りした筈ですが?」


「そうね、断られたわ。でも私、貴方がいいの」


「何故です?」


「貴方が一番好条件で相応しいと思うからよ」


「そんなことはないと思います。私の他にもいる筈です」


「高魔力者が何よりの第一条件。だから始まりの魔女の家系が良いの。でも、ソフィア様の家系は魔力が高すぎるせいか、女性、つまり魔女ばかりが生まれる。そして少産だから、適齢男性は1人もいないの。だからアナベル様の家系であり、特に高魔力のレオン、貴方が良いの」


彼女の家はそんな事情があったのか。全然知らなかった。彼女には兄姉がいないということは魔法レッスン場を爆発させ、初めて会話をした時に聞いてはいたが。


「私は政治にはあまり向かない性格だと自分では思っているのですが」


「政治のことは私に任せてくれたらいいわ」


「姉上?先日、王宮魔導士の方のことを政治には向かないという理由で排除していませんでした?」


「……あら、覚えてたの?彼には王宮魔導士筆頭になることを期待しているの」


エドワード殿下が、アリーチェ王女殿下の顔をじーっと見る。何か探っているのだろうか。


「私には兄がおります。嫡子ではありますが、うちは跡継ぎにそこまで拘る家ではありませんので、兄でも良いのでは?むしろ兄の方が文官科でしたし、性格的にも向いているかと──」


「エミリオは嫌!あんなのが夫になるなんて、王宮に勤める侍女全員をナンパして落としかねないわ!」


かなり食い気味に否定された。

あの兄だ、あり得る……。


「しかもエミリオは一つ違いなのもあって嫌でもアカデミーで何度か顔を合わせたし、女ったらしの噂を聞かされたわ!私の友人の高位貴族令嬢の中にも泣かされた子がいたのよ!それに仮装トーナメント大会でも、エミリオがいた2年、3年のときは魔法戦で負けてしまって、あの時の嫌みな笑顔が本当にムカつくのよ!落ち着き払ってじわじわと追い詰めて……ねちっこいあの戦い方、ほんと嫌い!勝敗がついたあとに負けた私の手の甲にキスなんてしてくるのよ!気持ち悪いと思って手を洗いすぎてしまい、真っ赤に手荒れしてしまったんだから!」


俺が騎士科に入る前の話か……。


俺は地雷を踏んだのか?こんなにも饒舌に心情を暴露する王女殿下を初めて見る。兄はそうとう嫌われているようだ。

大丈夫なのか……?殿下が王位継承し、兄が公爵位を継いだら、うちと王家の関係は大丈夫なのだろうか?不安になるな……。


「昔から王族として、さらには王位継承者としての立場を教え込まれてきたわ。だから政略結婚は覚悟していたの。でも、平気で浮気するような男だけは絶対嫌!たとえ愛が無くとも信頼し合える関係でいたいの」


「……本当は愛も欲しいのでは?」


「そりゃあ私も女ですもの、愛されたいという気持ちはあります」


徐々にアリーチェ王女殿下の本心が見えてきた気がする。エドワード殿下の問いにも肯定している。


「姉上、王族から降下した家は駄目なのですか?王族の血筋なら魔力も高いでしょう」


「アナベル様の家系と平均寿命を比べてみると、魔力は低めだわ」


「降下した家全てが低い訳では無い筈です。平均を上回る家もありますよね?」


「……適齢の歳の好条件の方は少ないわ」


「でもいるのでしょう?その方々では駄目な理由は?」


エドワード殿下の尋問するかのような問いが続く。


エドワード殿下は人前では必ず、アリーチェ王女殿下との姉弟仲が良好であり、恭順の意を表す様な態度をとる。臣下や貴族の中から、王位継承にエドワード殿下を押す者が出ないようにとの配慮なのか、そう教育されてきたのかは分からないが。


だから立場が逆転しているこのお二人を見るのはとても珍しい。


「政略結婚を覚悟していた姉上ですよ?他にも候補者がいるのにもかかわらず、レオンに拘る理由が知りたいのです」


そこだ。俺も気になっているのは。


「………」


「姉上」


はぁと、アリーチェ王女殿下が溜め息をつく。


「美形だからよ」


「は?」

「ん?」


「旦那様になる人よ?ずっと一緒にいるのよ?それこそ寿命が長いから100年は一緒でしょ?それなら格好良い人が良いじゃない」


「……本気で言ってます?姉上」


「何よ!散々追及してきて、本音を言ったら信じないの!」


キッとエドワード殿下を睨み付けるアリーチェ王女殿下。心なしか、頬が赤い気がする。


「や、だって、姉上のことだから、何か、深い理由があるのかと……」


「私にとってはとっても深い理由よ」


「つまり……姉上の本心は、美形に愛されたいってことですか」


「はっきり言わないでくれる!ほんと嫌みな弟ね!」


「そうか。王宮魔導士の方の外見は冴えないタイプだったな。納得」


姉に忠誠を示す弟に見せて、実は好き勝手言い合える程仲が良く、性格がよく似た(特に腹黒なところ)姉弟でわいのわいのと言い合っている中、「そんな理由かよ」と心の中で突っ込みながら、自分が婚約者候補から抜け出る為の方法を考えた。


拘っている理由は俺が美形だからで、特に慕われている訳では無い様だ。


「アリーチェ王女殿下。私から提案をさせて頂きたいのですが──」



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